[PG07] 第二反抗期と自我同一性の関連の検討
Keywords:第二反抗期, 自我同一性
問題と目的
第二反抗期について,発達の過程としてとらえる立場とそうでない立場がある。白井(1997)は,第二反抗期の捉え方を「分離モデル」と「組み換えモデル」の2つに分類し,その比較と考察を行っている。「分離モデル」とは,親子のコンフリクトは青年の分離と自立を示すものであり,第二次性徴の発現や自我の目覚めに伴う必然的な過程であるとするものである。「組み替えモデル」とは,親子のコンフリクトは必ずしも必然なものではなく,青年の自律の欲求の芽生えに家族システムが対応できない場合に生じる過程であるとするものである。
第二反抗期について,自我同一性の確立や自立などのテーマと関連させて論じられることが多いが,実証的に検討された研究はほとんどない。
本研究の目的は,自我同一性との関連をみることによって,第二反抗期の発達の過程としての意義を検討することである。予備調査により反抗意識尺度を作成し,本調査にて自我同一性との関連を検討した。
方 法
調査対象 大阪府内の4年制大学の大学生・大学院生198名(男性93名,女性105名)であり,平均年齢は19.86歳,標準偏差は1.39であった。
質問紙の構成
1)フェイスシート:性別・学年・年齢・学部について回答を求めた。
2)反抗意識尺度:予備調査により作成。2因子から成る。反抗期の有無と,反抗的態度の高まった時期について尋ね,その時期のことについて回想する形で質問項目へ回答することを求めた。得点が高いほど,反抗的な意識が高かったことを示す。養育者への気持ちと教職員への気持ちについて,同じ内容でそれぞれ13項目,計26項目について4件法で回答を求めた。
3)多次元自我同一性尺度(谷,2001):4つの下位尺度から成り,それぞれ5項目,計20項目について7件法で回答を求めた。
調査の実施:2014年10月に講義の時間を利用して集団配布・回収を行った。単位や成績とは無関係であること等を示した上で,同意を得られた回答について分析の対象とした。
結 果
反抗意識尺度について因子分析を行った結果,第1因子を「回避的反抗」,第2因子を「攻撃的反抗」と命名した。多次元自我同一性尺度について因子分析を行った結果,因子構造が大きく変わることはなかったため,谷(2001)と同じく「自己斉一性・連続性」,「対自的同一性」,「対他的同一性」,「心理社会的同一性」の4つの下位尺度を設定した。
男女による差がみられるかどうか検討するため,反抗意識尺度得点・多次元自我同一性尺度得点およびそれぞれの下位尺度得点においてt検定を行った。「攻撃的反抗」(t(196)=3.30,p<.01)において男性より女性の方が有意に高い得点を示した。その他に有意な差はみられなかった。
反抗意識尺度と多次元自我同一性尺度の相関について分析した。男女別で分析した結果,男性において有意な相関はみられなかった。女性において弱い負の相関がみられた(Table 1)。
考 察
多次元自我同一性尺度の得点について有意な男女差がなかったのに対し,反抗意識尺度の得点では「攻撃的反抗」に有意な男女差があった。性別により,第二反抗期と自我同一性の関連は異なることが示唆された。自我同一性の確立について,性別による差異を視野に検討した研究もある。第二反抗期のあり方もその差異を説明する現象のひとつである可能性がある。
女性における相関分析の結果,第二反抗期の反抗的意識が高かった者ほど,現在の自我同一性が低いということが示された。第二反抗期を経験することにより自我同一性の確立が促されるという説明は誤りである可能性がある。
男女により差がみられること,回避的か攻撃的かという反抗のあり方にも差がみられることから,今後はより詳細に第二反抗期の内容について検討していくことが必要であると考えられる。
第二反抗期について,発達の過程としてとらえる立場とそうでない立場がある。白井(1997)は,第二反抗期の捉え方を「分離モデル」と「組み換えモデル」の2つに分類し,その比較と考察を行っている。「分離モデル」とは,親子のコンフリクトは青年の分離と自立を示すものであり,第二次性徴の発現や自我の目覚めに伴う必然的な過程であるとするものである。「組み替えモデル」とは,親子のコンフリクトは必ずしも必然なものではなく,青年の自律の欲求の芽生えに家族システムが対応できない場合に生じる過程であるとするものである。
第二反抗期について,自我同一性の確立や自立などのテーマと関連させて論じられることが多いが,実証的に検討された研究はほとんどない。
本研究の目的は,自我同一性との関連をみることによって,第二反抗期の発達の過程としての意義を検討することである。予備調査により反抗意識尺度を作成し,本調査にて自我同一性との関連を検討した。
方 法
調査対象 大阪府内の4年制大学の大学生・大学院生198名(男性93名,女性105名)であり,平均年齢は19.86歳,標準偏差は1.39であった。
質問紙の構成
1)フェイスシート:性別・学年・年齢・学部について回答を求めた。
2)反抗意識尺度:予備調査により作成。2因子から成る。反抗期の有無と,反抗的態度の高まった時期について尋ね,その時期のことについて回想する形で質問項目へ回答することを求めた。得点が高いほど,反抗的な意識が高かったことを示す。養育者への気持ちと教職員への気持ちについて,同じ内容でそれぞれ13項目,計26項目について4件法で回答を求めた。
3)多次元自我同一性尺度(谷,2001):4つの下位尺度から成り,それぞれ5項目,計20項目について7件法で回答を求めた。
調査の実施:2014年10月に講義の時間を利用して集団配布・回収を行った。単位や成績とは無関係であること等を示した上で,同意を得られた回答について分析の対象とした。
結 果
反抗意識尺度について因子分析を行った結果,第1因子を「回避的反抗」,第2因子を「攻撃的反抗」と命名した。多次元自我同一性尺度について因子分析を行った結果,因子構造が大きく変わることはなかったため,谷(2001)と同じく「自己斉一性・連続性」,「対自的同一性」,「対他的同一性」,「心理社会的同一性」の4つの下位尺度を設定した。
男女による差がみられるかどうか検討するため,反抗意識尺度得点・多次元自我同一性尺度得点およびそれぞれの下位尺度得点においてt検定を行った。「攻撃的反抗」(t(196)=3.30,p<.01)において男性より女性の方が有意に高い得点を示した。その他に有意な差はみられなかった。
反抗意識尺度と多次元自我同一性尺度の相関について分析した。男女別で分析した結果,男性において有意な相関はみられなかった。女性において弱い負の相関がみられた(Table 1)。
考 察
多次元自我同一性尺度の得点について有意な男女差がなかったのに対し,反抗意識尺度の得点では「攻撃的反抗」に有意な男女差があった。性別により,第二反抗期と自我同一性の関連は異なることが示唆された。自我同一性の確立について,性別による差異を視野に検討した研究もある。第二反抗期のあり方もその差異を説明する現象のひとつである可能性がある。
女性における相関分析の結果,第二反抗期の反抗的意識が高かった者ほど,現在の自我同一性が低いということが示された。第二反抗期を経験することにより自我同一性の確立が促されるという説明は誤りである可能性がある。
男女により差がみられること,回避的か攻撃的かという反抗のあり方にも差がみられることから,今後はより詳細に第二反抗期の内容について検討していくことが必要であると考えられる。