[PG08] 親子共同調理行為の構造と機能の発達
児童後期での親子「カルピス」共同希釈・飲用体験の分析から
キーワード:親子共同行為, 共同調理活動, 児童後期
目 的
親子で希釈飲料「カルピス」を作製・飲用するという共同調理体験の分析から,親子相互行為の構造と機能の発達を検討する。幼児前期・幼児後期・児童前期・児童後期といった4つの発達段階における比較分析は三木他(2015)で報告しているが,本報告では,とりわけ児童後期における特徴について焦点化し,新たな分析を加えて報告を行う。その上で,この時期に親子で共同調理行為をすることの意義を考察する。
方 法
小学4,5年生の親子4組(男女各2組)に「カルピス」を共同で作製・飲用する体験を,自宅にて3回行ってもらい,その様子を固定したビデオカメラで撮影した。各体験後,親に質問紙への回答を依頼した。
分析1;行動評定法
方法;親子の行動や様子をみた項目について,6件法により2名で評定し,その平均値を用いて相関係数を算出し,相関関係から相互行為モデルの生成を行なった。また,全体平均と児童後期の平均の比較を符号検定にて行なった。
結果;「親子のやりとりのスムーズさ」はそれ以前の段階でみられていた子の「積極的応答」との関連はなく,子の「自己表現」とのみ関連していた。それ以前の段階ではみられなかった親が「子どもの発言・行動に感心する」が子の「賛意的主導」や「自己表現」と関連し,子の「嬉しさ・満足感」と関連していた。さらに,親の「子どもに考えさせる問いかけ・指示」は,符号検定の結果から全平均より児童後期で高いものの,子の学習過程項目とは関連せず,親の「嬉しさ・満足感」とのみ関連していた。(すべてp<.05)(Figure 1参照)
分析2;チェックリスト法
方法;相互行為をみた項目を20秒ごとにチェックし,分あたりの頻度を算出した。そのデータを用いて,符号検定にて全平均と児童後期の比較を,M-WのU検定にて児童前期との比較を行なった。
結果;子の項目では,児童後期は「要望」が少なく(p<.05),「指示・依頼」「評価期待」頻度が少ない傾向(p<.10)であった。一方「受容」は児童後期で高い傾向がみられた(p<.10)。児童前期との比較では,「応答での教示・情報提供」が児童後期で少なく(p<.05),「応答での評価・感想・感情表出」も少ない傾向(p<.10)であった。しかし,子からの働きかけカテゴリーである「提案」「質問」「教示・情報提供」「評価・感想・感情表出」は全平均との差はなかった。親では,「指示・依頼」「拒否」「応答での教示・情報提供」の頻度が低い傾向(p<.10)にあり,児童前期との比較では「親の提案」が児童後期で高かった(p<.05)。
分析3;質問紙法
方法;7件法により親に回答してもらい,符号検定で全平均と比較した。
結果;子が「乗り気だった」「よくしゃべってい た」や「親が子に働きかけた時生き生きと反応していた」といった項目は児童後期で低かった。「子は質問,アドバイスを求めてきた」「子は教えられたことだけでなく,自分の考えや意見を言っていた」「親は子にまず考えさせるような働きかけをした」「親は子から学ぶことがあった」といった項目は児童後期で高かった。(すべてp<.05)
考 察
児童後期は子どもからの欲求表明や言語,情緒的応答は少なくなり,親にとって積極的な応答反応を感じられるやりとりではなくなっている。しかし,自分の考えや意見を言うなど‘自己表現’としての子どもからの働きかけは変わらず旺盛で,自らの発信に親が感心してくれるといった相互行為が学習や嬉しさにつながっていると示唆される。
親は‘提案’という形で子に考えさせる関わりを多く行っていた。親は希釈行為を「算数問題」として提案しており(三木他,2015),本共同行為は家庭での認知的学習の場となってきている。子どもは親からの働きかけに積極的な応答はしないが‘受容’はしていることから,親は親役割が満たされ,また,子どもの自己表現に接することにより成長を感じる機会になっていると推察される。
親子で希釈飲料「カルピス」を作製・飲用するという共同調理体験の分析から,親子相互行為の構造と機能の発達を検討する。幼児前期・幼児後期・児童前期・児童後期といった4つの発達段階における比較分析は三木他(2015)で報告しているが,本報告では,とりわけ児童後期における特徴について焦点化し,新たな分析を加えて報告を行う。その上で,この時期に親子で共同調理行為をすることの意義を考察する。
方 法
小学4,5年生の親子4組(男女各2組)に「カルピス」を共同で作製・飲用する体験を,自宅にて3回行ってもらい,その様子を固定したビデオカメラで撮影した。各体験後,親に質問紙への回答を依頼した。
分析1;行動評定法
方法;親子の行動や様子をみた項目について,6件法により2名で評定し,その平均値を用いて相関係数を算出し,相関関係から相互行為モデルの生成を行なった。また,全体平均と児童後期の平均の比較を符号検定にて行なった。
結果;「親子のやりとりのスムーズさ」はそれ以前の段階でみられていた子の「積極的応答」との関連はなく,子の「自己表現」とのみ関連していた。それ以前の段階ではみられなかった親が「子どもの発言・行動に感心する」が子の「賛意的主導」や「自己表現」と関連し,子の「嬉しさ・満足感」と関連していた。さらに,親の「子どもに考えさせる問いかけ・指示」は,符号検定の結果から全平均より児童後期で高いものの,子の学習過程項目とは関連せず,親の「嬉しさ・満足感」とのみ関連していた。(すべてp<.05)(Figure 1参照)
分析2;チェックリスト法
方法;相互行為をみた項目を20秒ごとにチェックし,分あたりの頻度を算出した。そのデータを用いて,符号検定にて全平均と児童後期の比較を,M-WのU検定にて児童前期との比較を行なった。
結果;子の項目では,児童後期は「要望」が少なく(p<.05),「指示・依頼」「評価期待」頻度が少ない傾向(p<.10)であった。一方「受容」は児童後期で高い傾向がみられた(p<.10)。児童前期との比較では,「応答での教示・情報提供」が児童後期で少なく(p<.05),「応答での評価・感想・感情表出」も少ない傾向(p<.10)であった。しかし,子からの働きかけカテゴリーである「提案」「質問」「教示・情報提供」「評価・感想・感情表出」は全平均との差はなかった。親では,「指示・依頼」「拒否」「応答での教示・情報提供」の頻度が低い傾向(p<.10)にあり,児童前期との比較では「親の提案」が児童後期で高かった(p<.05)。
分析3;質問紙法
方法;7件法により親に回答してもらい,符号検定で全平均と比較した。
結果;子が「乗り気だった」「よくしゃべってい た」や「親が子に働きかけた時生き生きと反応していた」といった項目は児童後期で低かった。「子は質問,アドバイスを求めてきた」「子は教えられたことだけでなく,自分の考えや意見を言っていた」「親は子にまず考えさせるような働きかけをした」「親は子から学ぶことがあった」といった項目は児童後期で高かった。(すべてp<.05)
考 察
児童後期は子どもからの欲求表明や言語,情緒的応答は少なくなり,親にとって積極的な応答反応を感じられるやりとりではなくなっている。しかし,自分の考えや意見を言うなど‘自己表現’としての子どもからの働きかけは変わらず旺盛で,自らの発信に親が感心してくれるといった相互行為が学習や嬉しさにつながっていると示唆される。
親は‘提案’という形で子に考えさせる関わりを多く行っていた。親は希釈行為を「算数問題」として提案しており(三木他,2015),本共同行為は家庭での認知的学習の場となってきている。子どもは親からの働きかけに積極的な応答はしないが‘受容’はしていることから,親は親役割が満たされ,また,子どもの自己表現に接することにより成長を感じる機会になっていると推察される。