[PG18] 発達環境づくりとしての教育実践(1)
アクティブ・ラーニングと講義形式それぞれの指導形態が児童の学習方略に及ぼす影響の比較
キーワード:アクティブ・ラーニング, 学習方略, 教育実践
問題と目的
学校での子供の学習とは,授業場面という制度の制約下にあるものの,他者とのインタラクションを通じ,実践の中で対話的に意味を生成する場である。つまり,子供は状況的に学習方略を展開していきながら,学ぶ場を即興的に創造し,循環的に学習している。学習をこのように捉えた場合,子供の学習は,教師の目的や計画を超えた広がりとして観察される。学校での学習が,ただ単に「個人的な到達過程」(茂呂,2001),或いは「評価的な学び」(佐伯, 2010)として描き出されるならば,学校での学習の在り方は教師からの見えに限局されたものになってしまう。
学校では,学習者が能動的・主体的に共に学ぶこと(co-learning)が期待される。文部科学省(2012,2014a,2014b)はそのような学びを「アクティブ・ラーニング」と位置づけており,菅井・有元(2015,2016)は,児童同士の能動的で対話的な学びが知識理解を促進する効果があることを報告した。
本研究では,指導形態と児童の学習方略の関連を比較検討する。異なる指導形態における児童のグループ活動場面を観察することによって,初等教育におけるアクティブ・ラーニングの効果に関する萌芽的示唆が得られると考えられる。
方 法
神奈川県内の私立小学校3年生2学級における国語の授業でのグループ学習を対象とした。2015年11月,学級を単位とし講義型群と班型群の2群に分け,講義型群の学級は児童全員が机を前方の黒板へ向ける机の配置とした。班型群の学級は同じグループとなった4名が机を向かい合わせる形の机配置とし,物語文創作の課題に4名1班となりグループ学習で取り組んだ。男女比が同一となるグループを両群からそれぞれ選び,各群4名(男子2名,女子2名)合計8名を分析の対象とした。グループ学習時の児童の活動をビデオカメラを用いて撮影し,記録・分類した。なお,本実践の後,指導形式による児童への影響を考慮し,形式を入れ替えてフォーローアップ授業を実施した。また,データの取り扱いに関しては,管理職の指導のもと個人情報に留意した。
結果と考察
グループ学習開始直後の5分間の各児童の活動を比較検討したところ,「話す行為」「聴く行為」からなる「対話活動」カテゴリと「書く行為」「見る行為」からなる「非対話活動」カテゴリが得られた。各児童の5分間の活動を「対話活動」と「非対話活動」の何れかに分類し,児童それぞれ4名の各カテゴリの活動時間を,群ごとに総計した。講義型群の合計1200秒において対話活動が展開されたのは383秒であり,非対話活動が817秒であった。班型群において対話活動が展開されたのは450秒であり,非対話活動は750秒であった。指導形態別に児童の活動を比較したところ,1%水準で有意な差が見られた。講義型群は「非対話活動」が多く,班型群は「対話活動」が多くなっていた(表1)。学習の焦点が同じでも異なる指導形態によって,児童の対話活動がより活発に展開されることが示された。
本研究での児童の活動は,両群共にグループ学習を通した物語文創作課題に焦点を合わせていた。そのため,児童らは集合的・対話的に課題解決を図りながら,学習集団内で自身の学習方略を展開していた。菅井・有元(2015,2016)の報告したように,対話的な学びが学習者の知識理解をより促進するのであれば,知識理解を目的とした授業では,対話活動がより展開される学習環境を児童と教師がともにデザインしていくことが期待される。したがって,教師と児童らを含めた学習者達の対話活動を活発にする学級文化が,アクティブ・ラーニングを組織する重要な構成単位となるであろう。これらのことから,集合的・対話的学習を重ね,この学級文化を児童と教師たちがともに醸成していくことで,アクティブ・ラーニングはより効果を発揮すると考えられる。以上のことから,初等教育におけるアクティブ・ラーニングとは,児童同士,或いは児童と教師がともに学習環境をデザインしていくことができる教師の指導法としての授業形態でありながら,授業に参加する児童と教師がともに学ぶことができる学習法としての局面を持ち合わせていると言えるだろう。
学校での子供の学習とは,授業場面という制度の制約下にあるものの,他者とのインタラクションを通じ,実践の中で対話的に意味を生成する場である。つまり,子供は状況的に学習方略を展開していきながら,学ぶ場を即興的に創造し,循環的に学習している。学習をこのように捉えた場合,子供の学習は,教師の目的や計画を超えた広がりとして観察される。学校での学習が,ただ単に「個人的な到達過程」(茂呂,2001),或いは「評価的な学び」(佐伯, 2010)として描き出されるならば,学校での学習の在り方は教師からの見えに限局されたものになってしまう。
学校では,学習者が能動的・主体的に共に学ぶこと(co-learning)が期待される。文部科学省(2012,2014a,2014b)はそのような学びを「アクティブ・ラーニング」と位置づけており,菅井・有元(2015,2016)は,児童同士の能動的で対話的な学びが知識理解を促進する効果があることを報告した。
本研究では,指導形態と児童の学習方略の関連を比較検討する。異なる指導形態における児童のグループ活動場面を観察することによって,初等教育におけるアクティブ・ラーニングの効果に関する萌芽的示唆が得られると考えられる。
方 法
神奈川県内の私立小学校3年生2学級における国語の授業でのグループ学習を対象とした。2015年11月,学級を単位とし講義型群と班型群の2群に分け,講義型群の学級は児童全員が机を前方の黒板へ向ける机の配置とした。班型群の学級は同じグループとなった4名が机を向かい合わせる形の机配置とし,物語文創作の課題に4名1班となりグループ学習で取り組んだ。男女比が同一となるグループを両群からそれぞれ選び,各群4名(男子2名,女子2名)合計8名を分析の対象とした。グループ学習時の児童の活動をビデオカメラを用いて撮影し,記録・分類した。なお,本実践の後,指導形式による児童への影響を考慮し,形式を入れ替えてフォーローアップ授業を実施した。また,データの取り扱いに関しては,管理職の指導のもと個人情報に留意した。
結果と考察
グループ学習開始直後の5分間の各児童の活動を比較検討したところ,「話す行為」「聴く行為」からなる「対話活動」カテゴリと「書く行為」「見る行為」からなる「非対話活動」カテゴリが得られた。各児童の5分間の活動を「対話活動」と「非対話活動」の何れかに分類し,児童それぞれ4名の各カテゴリの活動時間を,群ごとに総計した。講義型群の合計1200秒において対話活動が展開されたのは383秒であり,非対話活動が817秒であった。班型群において対話活動が展開されたのは450秒であり,非対話活動は750秒であった。指導形態別に児童の活動を比較したところ,1%水準で有意な差が見られた。講義型群は「非対話活動」が多く,班型群は「対話活動」が多くなっていた(表1)。学習の焦点が同じでも異なる指導形態によって,児童の対話活動がより活発に展開されることが示された。
本研究での児童の活動は,両群共にグループ学習を通した物語文創作課題に焦点を合わせていた。そのため,児童らは集合的・対話的に課題解決を図りながら,学習集団内で自身の学習方略を展開していた。菅井・有元(2015,2016)の報告したように,対話的な学びが学習者の知識理解をより促進するのであれば,知識理解を目的とした授業では,対話活動がより展開される学習環境を児童と教師がともにデザインしていくことが期待される。したがって,教師と児童らを含めた学習者達の対話活動を活発にする学級文化が,アクティブ・ラーニングを組織する重要な構成単位となるであろう。これらのことから,集合的・対話的学習を重ね,この学級文化を児童と教師たちがともに醸成していくことで,アクティブ・ラーニングはより効果を発揮すると考えられる。以上のことから,初等教育におけるアクティブ・ラーニングとは,児童同士,或いは児童と教師がともに学習環境をデザインしていくことができる教師の指導法としての授業形態でありながら,授業に参加する児童と教師がともに学ぶことができる学習法としての局面を持ち合わせていると言えるだろう。