The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表 PG(01-64)

ポスター発表 PG(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PG20] 高校生の探究的学習スキルと批判的思考態度の育成

スーパーグローバルハイスクールにおける生徒の変容の評価

楠見孝 (京都大学)

Keywords:探究学習, 批判的思考態度, 学習スキル

目   的
 スーパーグローバルハイスクール(SGH)では,グローバル社会に関する探究型学習のための研究開発を進めている。その評価のために,生徒の思考力や表現力の変容の測定手法を開発することは重要な課題である。
 本研究が調査を実施する高校では,1年次から3つのコースにおいて探究型学習活動を通して,批判的思考力等を育成している。そこで,2時点の調査を行い,生徒の批判的思考態度と探究的学習スキルの変容を測定し,コース間の差異と変容の規定因を検討する。
方   法
 参加者 関西のSGH2年目,SSH4年目の府立進学校1年生311(男145, 女166)名。コースは普通科,学問研究につながる専門学科(文理共修と理系専修)の3つ(ns=117,122,72)に分かれる。2015年7月と翌年2月に全員を対象とした質問紙調査を実施した。
 質問項目 1. 批判的思考態度尺度(10項目)は生徒用一般的批判的思考態度尺度,学習場面の批判的思考態度尺度(楠見・村瀬・武田,2016)に基づいて,論理・証拠重視(4項目),探究心(4項目),関連づけ(2項目,例:授業で学んだことを,ふだんの生活や社会の出来事に当てはめて考えてみる)の3つの下位尺度を構成した。自分にどのくらい当てはまるかを5件法(1:あてはまらない-5:あてはまる)で評定を求めた。
 2. 探究的学習スキル尺度(10項目)は先行研究(楠見,2011,2012,教心大会)に基づいて,探究スキル(4項目,例:根拠が明確な参考資料を探す),読解スキル(3項目),表現スキル(4項目)を構成した。これらの方法を今どのくらい身につけているかを5件法(1:身につけていない-5:身につけている)で評定を求めた。
 あわせて,問いをもつ力,関連づける力を評価するための自由記述式の設問に対する解答を求めた。
結果と考察
 2時点の平均評定値比較 各尺度の平均値を,コースごとに,7月と2月の間で対応のあるt検定を行った。Table 1に示すように,批判的思考態度については,専門学科共修コースの生徒において,「論理・証拠重視」と「探究心」の平均評定値が有意に向上した。また,コース間の差を分散分析で検討したところ,2月において,「論理・客観重視」の態度は,専門学科2コースが普通科よりも,「探究心」は,専門学科共修コースが普通科よりも有意に高かった(ps<.05)。探究的学習スキルについては,「読解スキル」は3コース全てで,「探究スキル」と「表現スキル」は専門学科において有意な上昇が見られた。
 生徒の変容の規定因 Figure 1は交差遅れモデルに基づいて構造方程式モデリングを行った結果である。7月における批判的思考の「論理・証拠重視」態度と探究的学習の「探究スキル」は,2月における批判的思考態度と探究的学習スキルのそれぞれの下位尺度評定値を向上させていることがわかった。