[PG22] 批判的思考態度と学校適応感との関連
協働学習・アクティブ・ラーニングを授業に取り入れた中等教育段階の学校への調査から
Keywords:協働学習, 批判的思考態度, 学校適応感
問題と目的
批判的思考は長年欧米で注目されてきた思考であり,近年多くの分野で批判的思考の重要性が主張されるようになっている(田中・楠見,2007)。道田(2000)は,批判的思考の概念図を作成し,批判的思考を構成する3要素として,「知識」,「技術」,「態度」に分け,最も大切なものは「態度」であるとして,使おうとする傾向(態度)がなければ始まらない(道田,2000)と報告した。一方,子どもたちが積極的にお互いの考えを出し合い,吟味・検討し主体的に学び合う,協働学習を取り入れた授業が熱心に行われるようになっていて(松尾・丸野,2007),中等教育の生徒が協働学習を取り組む利点の一つに,他者との協働の中で多様な考え方に触れ,考えることが出来ることが挙げられる(石橋ら,2014)。石橋(2015)は,協働学習を取り入れた学校の中学生・高校生を調査し,協働学習の有効性の認識と学校適応感との間に正の相関があり,協働学習の互恵懸念の認識と適応感との間に負の相関があることを示した。また,石橋(2016)は,批判的思考態度の「証拠の重視」以外の3つの下位尺度と協働学習の認識に関連があることを報告した。本研究の目的は,協働学習を取り入れた授業場面で,生徒が認識する学校への適応感と批判的思考態度との関連を検討することである。
方 法
質問紙の構成 (1)批判的思考態度尺度(平山・楠見,2004)を用いる。この尺度は,「論理的思考への自覚」,「探究心」,「客観性」,「証拠の重視」の4因子からなる。回答形式は,「あてはまらない」(1点)~「あてはまる」(5点)までの5件法である。(2)学校への適応感尺度:学校への適応感尺度(大久保,2005)を用いた。「居心地の良さの感覚」,「課題・目的の存在」,「被信頼・受容感」,「劣等感の無さ」の4因子30項目からなる尺度であり,中学生,高校生,大学生を調査対象として,開発されているものである。回答形式は,「全くあてはまらない」(1点)~「非常によくあてはまる」(5点)までの5件法である。大久保(2005)にならい,各因子に含まれる項目の得点を合計し,それぞれ「居心地の良さの感覚」得点,「課題・目的の存在」得点,「被信頼・受容感」得点,「劣等感の無さ」得点とした。調査対象者 都内中学生314名(男子152名,女子162名),都内高校生320名(男子158名,女子162名)
結 果
批判的思考態度と学校への適応感との相関係数を算出した。その結果,批判的思考態度の4因子のうち,探究心,論理的思考への自覚,客観性の3因子と,学校への適応感4因子との間に有意な正の相関がみられた。証拠の重視は,学校への適応感のうち課題・目的の存在のみ有意な正の相関であった。
次に,協働学習を取り入れた授業場面で,学校への適応感が批判的思考態度の各側面にどのように影響しているかを検討するため,学校への適応感が批判的思考態度の各下位尺度得点を目的変数,学校への適応感の4下位尺度得点を説明変数として強制投入法による重回帰分析を行った。結果をTable 1に示す。
考 察
批判的思考態度と学校への適応感に有意な相関関係があることが分かった。また重回帰分析の結果,学校への適応感のうち課題・目的の存在は批判的思考態度すべての下位尺度に有意な正の影響を及ぼすことが分かった。今後は,一斉授業との比較,また他の学校を含めて批判的思考態度にどのような促進要因が考えられるか検討が必要である。
批判的思考は長年欧米で注目されてきた思考であり,近年多くの分野で批判的思考の重要性が主張されるようになっている(田中・楠見,2007)。道田(2000)は,批判的思考の概念図を作成し,批判的思考を構成する3要素として,「知識」,「技術」,「態度」に分け,最も大切なものは「態度」であるとして,使おうとする傾向(態度)がなければ始まらない(道田,2000)と報告した。一方,子どもたちが積極的にお互いの考えを出し合い,吟味・検討し主体的に学び合う,協働学習を取り入れた授業が熱心に行われるようになっていて(松尾・丸野,2007),中等教育の生徒が協働学習を取り組む利点の一つに,他者との協働の中で多様な考え方に触れ,考えることが出来ることが挙げられる(石橋ら,2014)。石橋(2015)は,協働学習を取り入れた学校の中学生・高校生を調査し,協働学習の有効性の認識と学校適応感との間に正の相関があり,協働学習の互恵懸念の認識と適応感との間に負の相関があることを示した。また,石橋(2016)は,批判的思考態度の「証拠の重視」以外の3つの下位尺度と協働学習の認識に関連があることを報告した。本研究の目的は,協働学習を取り入れた授業場面で,生徒が認識する学校への適応感と批判的思考態度との関連を検討することである。
方 法
質問紙の構成 (1)批判的思考態度尺度(平山・楠見,2004)を用いる。この尺度は,「論理的思考への自覚」,「探究心」,「客観性」,「証拠の重視」の4因子からなる。回答形式は,「あてはまらない」(1点)~「あてはまる」(5点)までの5件法である。(2)学校への適応感尺度:学校への適応感尺度(大久保,2005)を用いた。「居心地の良さの感覚」,「課題・目的の存在」,「被信頼・受容感」,「劣等感の無さ」の4因子30項目からなる尺度であり,中学生,高校生,大学生を調査対象として,開発されているものである。回答形式は,「全くあてはまらない」(1点)~「非常によくあてはまる」(5点)までの5件法である。大久保(2005)にならい,各因子に含まれる項目の得点を合計し,それぞれ「居心地の良さの感覚」得点,「課題・目的の存在」得点,「被信頼・受容感」得点,「劣等感の無さ」得点とした。調査対象者 都内中学生314名(男子152名,女子162名),都内高校生320名(男子158名,女子162名)
結 果
批判的思考態度と学校への適応感との相関係数を算出した。その結果,批判的思考態度の4因子のうち,探究心,論理的思考への自覚,客観性の3因子と,学校への適応感4因子との間に有意な正の相関がみられた。証拠の重視は,学校への適応感のうち課題・目的の存在のみ有意な正の相関であった。
次に,協働学習を取り入れた授業場面で,学校への適応感が批判的思考態度の各側面にどのように影響しているかを検討するため,学校への適応感が批判的思考態度の各下位尺度得点を目的変数,学校への適応感の4下位尺度得点を説明変数として強制投入法による重回帰分析を行った。結果をTable 1に示す。
考 察
批判的思考態度と学校への適応感に有意な相関関係があることが分かった。また重回帰分析の結果,学校への適応感のうち課題・目的の存在は批判的思考態度すべての下位尺度に有意な正の影響を及ぼすことが分かった。今後は,一斉授業との比較,また他の学校を含めて批判的思考態度にどのような促進要因が考えられるか検討が必要である。