The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG(01-64)

ポスター発表 PG(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PG23] 親との関わりが他者志向的動機づけに及ぼす影響の日中比較

周子康 (新潟大学)

Keywords:日中比較

問題と目的
 親子間のコミュニケーションは家族との生活において日々経験している交流のひとつであり,子どもの動機づけの形成に関わる重要な要因の1つである。その交流の中から生じた動機づけとして,伊藤(2010)は「自分を支えてくれる家族,仲間,周囲の人のために」達成行動に従事する動機づけを他者志向的動機づけと読んでいる。さらに,親子間のコミュニケーションの関わり方によって他者志向的動機づけは異なることが示されている(伊藤,2010)。
 しかし,親が所属する社会の文化や規範の影響を受けているため,親の関わり方が異なれば,他者志向的動機づけに及ぼす影響のあり方も異なると考えられる。例えば,同じ東アジアに所在し,日本と隣接している中国では,歴史や文化において多くの類似点を持っているが,異なる部分もある。例えば中国と比べて,日本では母親を中心とした子育ての傾向がある(羅,2007)。また,中国では,子どもに服従する傾向があると指摘されている(候,2002)。しかし唐澤(1995)によれば,日本をはじめとする東洋文化では,「相互協調的自己観」という,他者や周りの事柄と深く結びついていく生き方が重要と考えられると指摘した。
 同じ「相互協調的自己観」を持ち,人間関係を重視し,他者と密接に結びついている日中両国であっても,異なる文化的背景の下で親との関わりが他者志向的動機づけに及ぼす影響のあり方が異なると考えられる。本研究では親とのコミュニケーションを独自性と結合性という点から捉え,他者志向的動機づけに及ぼす影響を日中で比較することを目的とする。
方   法
協力者 日本の地方国立大学生268名(男96名,女172名)。中国の地方師範大学生271名(男158名,女113名)。
時期 日中共に2015年12月に実施した。
質問項目 親子間コミュニケーション尺度 (高橋2008);他者志向的動機づけ尺度(伊藤2010);学習動機づけ尺度(岡田・中谷2006)。
手続き 調査は講義終了後を利用して一斉に実施し,その場で回収した。
結果と考察
 それぞれの共通因子を探るため,3つの尺度に対して最尤法プロマックス回転による因子分析を行った。親子間コミュニケーション尺度(独自性,結合性),他者志向的動機づけ尺度(他者志向的動機の優先,自己志向的動機の優先,他者志向的動機の自己志向的動機への還元,自己・他者志向的動機の統合),学習動機づけ尺度(内発,同一視,取り入れ,外発)の下位尺度が得られた。
 他者志向的動機づけの下位尺度得点を従属変数とし,国籍(2)×性別(2)×学年(4)の3要因の分散分析を行った。その結果,他者志向的動機づけでは,「他者優先」における国籍の主効果が有意であり,中国のほうが高かった。「他者否定」における国籍の主効果が有意であり,日本より中国のほうが高かった。「統合」における国籍と学年の交互作用が有意であり,3年において,日本より中国のほうが高かった。また,中国において,1年より3年のほうが高かった。
 また,父親と母親の独自性と結合性得点および性別のダミー変数を説明変数,他者志向的動機づけ尺度の各下位尺度を目的変数とする日本と中国それぞれに対して重回帰分析を行った(Table 1と2)。その結果,日本において父親の独自性と結合性が高い場合に,他者志向的動機づけが獲得されやすかった。また,中国において母親の結合性が高い場合に,他者志向的動機づけが獲得されやすかった。