[PG24] プロセスフィードバックが動機づけに与える影響
制御焦点によって調整されるか?
キーワード:制御焦点, フィードバック
問題と目的
制御焦点理論(Higgins,1997)では,目標追求の志向性において,希望や進歩の欲求を重視し,目標を理想として捉える促進焦点と,安全や責任の欲求を重視し,目標を義務として捉える防止焦点を区別することが提唱されている。また,目標追求プロセスの中で,他者からのフィードバック(以下FBと略す) が個人の次の活動への動機づけに影響を与えるとされている。Van-Dijk & Kluger (2004) は,促進焦点状況で成功FBを与え,防止焦点状況で失敗FBを与えると動機づけを高められることを示している。しかし,FBのタイプには,パフォーマンスの高低にかかわる成功・失敗FBのほか,課題遂行過程(例えば,方略の使用)に関するプロセスFBもある。本研究では,ポジティブ(Posi)・ネガティブ(Nega)なプロセスFBが動機づけに与える影響が,制御焦点によって調整されるのかについて検討する。
方 法
実験参加者 大学生・大学院生64名(男性29名,女性35名)。
実験計画 制御焦点(促進,防止),FB (Posi,Nega) の2要因を独立変数とする実験参加者間計画。
制御焦点の操作 自由記述の質問紙によるプライミングを実施した(6分間)。促進焦点条件(n=33)では「自分の理想」について, 防止焦点条件 (n=31)では「自分の義務」について,実験参加者に回答してもらった。
実験課題 実験課題は点つなぎ課題(数字の順番に点をつないでいき,テーマの図形を完成させる)を4題使用した。1題ごとの制限時間は30秒であり,4題終了後,「速さと正確さのどちらの方略を重視したか」について尋ねた。
フィードバックの操作 実験参加者の重視した方略に沿ってFBを与えた。PosiFB条件(n=30)では,「正確さ(速さ)を重視したのがよかったようです」,NegaFB条件(n=34)では,「正確さ(速さ)の重視が欠けていたようです」とそれぞれフィードバックした。
動機づけの測定 1.興味:Linnenbrink-Garcia et al.(2010)を参考に,「この課題が好きだ」などの8項目を作成し,7件法で回答を求めた。2.次の課題への努力:Van-Dijk & Kluger(2004)に従い,「前回の課題の努力に比べ,次はどの程度努力したいと思いますか」について,「-5.前回より努力したくない」~「5.前回より努力したい」の11件法で回答を求めた。
結果と考察
まず,制御焦点(促進,防止)とFB(Posi,Nega)を独立変数,FB後の興味を従属変数,FB前の興味を共変量とする2要因共分散分析を行った。その結果,交互作用(F(1, 59)=7.25, p=.01, η2p=.11)が有意となった。単純主効果検定の結果,PosiFB条件では,促進焦点条件のほうが防止焦点条件よりもFB後の興味得点が高く(F(1, 59)=4.71, p=.03, ηp2=.07),NegaFB条件では,防止焦点条件のほうが促進焦点条件よりも興味得点が高かった(F(1, 59)=2.77, p=.10, ηp2=.05)。また,促進焦点条件では,PosiFB条件のほうがNegaFB条件よりも興味得点が高かった(F(1, 59)=6.91, p=.01, ηp2=.11)。防止焦点条件では,有意差が見られなかったものの,小さな効果量が得られた(NegaFB条件>PosiFB条件,ηp2=.03)。
また,次の課題への努力を従属変数とする2要因分散分析を行った。その結果(Figure 1),交互作用(F(1, 60)=5.20, p=.03, η2p=.08)が有意となった。単純主効果検定の結果,PosiFB条件では,促進焦点条件のほうが防止焦点条件よりも次の課題への努力得点が高かった(F(1, 60)=3.45, p=.07, ηp2=.05)。NegaFB条件では,有意差が見られなかったものの,小さな効果量が得られた(防止焦点条件>促進焦点条件,ηp2=.03)。また,防止焦点条件では,NegaFB条件のほうがPosiFB条件よりも次の課題への努力得点が高かった(F(1, 60)=4.21, p=.05, ηp2=.07)。促進焦点条件では,有意差が見られなかったものの,小さな効果量が見られた(PosiFB条件>NegaFB条件,ηp2=.02)。
以上の結果より,プロセスFBに関して,促進焦点はPosiFBの場合,防止焦点はNegaFBの場合,動機づけが高まることが示された。
制御焦点理論(Higgins,1997)では,目標追求の志向性において,希望や進歩の欲求を重視し,目標を理想として捉える促進焦点と,安全や責任の欲求を重視し,目標を義務として捉える防止焦点を区別することが提唱されている。また,目標追求プロセスの中で,他者からのフィードバック(以下FBと略す) が個人の次の活動への動機づけに影響を与えるとされている。Van-Dijk & Kluger (2004) は,促進焦点状況で成功FBを与え,防止焦点状況で失敗FBを与えると動機づけを高められることを示している。しかし,FBのタイプには,パフォーマンスの高低にかかわる成功・失敗FBのほか,課題遂行過程(例えば,方略の使用)に関するプロセスFBもある。本研究では,ポジティブ(Posi)・ネガティブ(Nega)なプロセスFBが動機づけに与える影響が,制御焦点によって調整されるのかについて検討する。
方 法
実験参加者 大学生・大学院生64名(男性29名,女性35名)。
実験計画 制御焦点(促進,防止),FB (Posi,Nega) の2要因を独立変数とする実験参加者間計画。
制御焦点の操作 自由記述の質問紙によるプライミングを実施した(6分間)。促進焦点条件(n=33)では「自分の理想」について, 防止焦点条件 (n=31)では「自分の義務」について,実験参加者に回答してもらった。
実験課題 実験課題は点つなぎ課題(数字の順番に点をつないでいき,テーマの図形を完成させる)を4題使用した。1題ごとの制限時間は30秒であり,4題終了後,「速さと正確さのどちらの方略を重視したか」について尋ねた。
フィードバックの操作 実験参加者の重視した方略に沿ってFBを与えた。PosiFB条件(n=30)では,「正確さ(速さ)を重視したのがよかったようです」,NegaFB条件(n=34)では,「正確さ(速さ)の重視が欠けていたようです」とそれぞれフィードバックした。
動機づけの測定 1.興味:Linnenbrink-Garcia et al.(2010)を参考に,「この課題が好きだ」などの8項目を作成し,7件法で回答を求めた。2.次の課題への努力:Van-Dijk & Kluger(2004)に従い,「前回の課題の努力に比べ,次はどの程度努力したいと思いますか」について,「-5.前回より努力したくない」~「5.前回より努力したい」の11件法で回答を求めた。
結果と考察
まず,制御焦点(促進,防止)とFB(Posi,Nega)を独立変数,FB後の興味を従属変数,FB前の興味を共変量とする2要因共分散分析を行った。その結果,交互作用(F(1, 59)=7.25, p=.01, η2p=.11)が有意となった。単純主効果検定の結果,PosiFB条件では,促進焦点条件のほうが防止焦点条件よりもFB後の興味得点が高く(F(1, 59)=4.71, p=.03, ηp2=.07),NegaFB条件では,防止焦点条件のほうが促進焦点条件よりも興味得点が高かった(F(1, 59)=2.77, p=.10, ηp2=.05)。また,促進焦点条件では,PosiFB条件のほうがNegaFB条件よりも興味得点が高かった(F(1, 59)=6.91, p=.01, ηp2=.11)。防止焦点条件では,有意差が見られなかったものの,小さな効果量が得られた(NegaFB条件>PosiFB条件,ηp2=.03)。
また,次の課題への努力を従属変数とする2要因分散分析を行った。その結果(Figure 1),交互作用(F(1, 60)=5.20, p=.03, η2p=.08)が有意となった。単純主効果検定の結果,PosiFB条件では,促進焦点条件のほうが防止焦点条件よりも次の課題への努力得点が高かった(F(1, 60)=3.45, p=.07, ηp2=.05)。NegaFB条件では,有意差が見られなかったものの,小さな効果量が得られた(防止焦点条件>促進焦点条件,ηp2=.03)。また,防止焦点条件では,NegaFB条件のほうがPosiFB条件よりも次の課題への努力得点が高かった(F(1, 60)=4.21, p=.05, ηp2=.07)。促進焦点条件では,有意差が見られなかったものの,小さな効果量が見られた(PosiFB条件>NegaFB条件,ηp2=.02)。
以上の結果より,プロセスFBに関して,促進焦点はPosiFBの場合,防止焦点はNegaFBの場合,動機づけが高まることが示された。