[PG35] 教職課程の学生における現場体験を通した学び
理科教育法の実践事例
キーワード:現場体験, 教職課程, 教師の資質
目 的
近年,学校教育の担う役割がますます多様化・拡大する中で,教職課程の学生を人材として活用しようと試みる活動が増えている。これらの活動は,通常ボランティア活動として有志を募り行われることが多いが,大学としても教師を志す学生に現場を経験させる機会が増えるという教育的効果が期待され,更に大学の地域貢献にもつながる可能性もある。本発表では,このような活動を教職課程の授業に取り入れた事例とその効果について紹介する。具体的には,教職課程「理科教育法」と高等学校「化学」の授業を連携させ,「化学」の授業に,学習支援(前期「理科教育法Ⅰ」)やミニ授業の展開と実験の補助(後期「理科教育法Ⅱ」)を教職課程の学生に体験させた。この体験が学生にどのような影響を与えたのかに着目し,報告する。
方 法
対象 愛知県内の私立大学の教職課程に所属し,「理科教育法Ⅰ」「理科教育法Ⅱ」を受講生している3年次の学生20名
実施時期 「理科教育法Ⅰ」「理科教育法Ⅱ」において連携授業を各3回の合計6回実施した。調査は前期の初回の連携授業終了後,後期の最後の連携授業終了後の2回実施し,最後の調査では,1年間の連携授業の感想を自由に記述させた。
質問紙の構成 ①どのような意識で臨んだか,②また参加したいか,③緊張したか,④辛いと感じたか,⑤役に立ったか,⑥生徒の発言をしっかりと受け止めることができたか,⑦生徒からの質問や相談に適切に対応することができたか,⑧今後の自分の学習の方向性を見出すことができたか,⑨生徒に対するイメージは変わったか,⑩実習先の先生とコミュニケーションをとったかの全10項目4件法で構成された。項目①,③,④,⑤,⑧,⑨については自由記述欄も設定した。
結 果
全ての質問項目に対して対応のあるt検定を実施した。③緊張については有意に低減し (t(18)=3.13, p=.006),⑦適切な対応については有意に増加した (t(18)=2.19, p=.042)。また,⑩先生とのコミュニケーションについても有意に増加した (t(17)=4.65,p=.000)。④辛さについては,有意な差は確認できなかった(t(18)=1.44, p=.167)が,1回目の調査では「上手く教えられない」など自由記述が多く見られたのに対し,2回目の調査では全く見られなかった。更に重回帰分析(ステップワイズ法)の結果,④辛さは1回目の調査では⑨生徒のイメージの変化でのみ説明される(β=.788, R2=.60, p=.000)のに対し,2回目の調査では決定係数は小さいものの,⑥生徒の発言を受け止められたかでのみ説明された(β=-.498, R2=.20, p=.030)。また,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて1年間の感想を整理すると,主に生徒一人ひとりの違いに気づき,丁寧に説明するよりも生徒に合わせる大切さや難しさを学んでおり,それを支える過程として,事前準備などによる勉強不足の克服や,生徒や先生とのコミュニケーションを通して,自分が教える生徒のことをよく知る大切さへの気づきが確認された。
考 察
本事例では学生は概して,実際の高校生と向き合うことで,想定とのギャップに戸惑いながらも,教師に求められる資質としての「生徒を構う」ことについて,学校現場で実践的に模索していた。経験を通して初めて実感できたギャップを埋めるために,学生が誠意をもって主体的に努力や工夫を重ねる様子からは,教職課程の授業として現場体験を提供することで,より多くの学生に教師としての資質を効果的に育み始めるきっかけをつくることにつながると考えられる。
近年,学校教育の担う役割がますます多様化・拡大する中で,教職課程の学生を人材として活用しようと試みる活動が増えている。これらの活動は,通常ボランティア活動として有志を募り行われることが多いが,大学としても教師を志す学生に現場を経験させる機会が増えるという教育的効果が期待され,更に大学の地域貢献にもつながる可能性もある。本発表では,このような活動を教職課程の授業に取り入れた事例とその効果について紹介する。具体的には,教職課程「理科教育法」と高等学校「化学」の授業を連携させ,「化学」の授業に,学習支援(前期「理科教育法Ⅰ」)やミニ授業の展開と実験の補助(後期「理科教育法Ⅱ」)を教職課程の学生に体験させた。この体験が学生にどのような影響を与えたのかに着目し,報告する。
方 法
対象 愛知県内の私立大学の教職課程に所属し,「理科教育法Ⅰ」「理科教育法Ⅱ」を受講生している3年次の学生20名
実施時期 「理科教育法Ⅰ」「理科教育法Ⅱ」において連携授業を各3回の合計6回実施した。調査は前期の初回の連携授業終了後,後期の最後の連携授業終了後の2回実施し,最後の調査では,1年間の連携授業の感想を自由に記述させた。
質問紙の構成 ①どのような意識で臨んだか,②また参加したいか,③緊張したか,④辛いと感じたか,⑤役に立ったか,⑥生徒の発言をしっかりと受け止めることができたか,⑦生徒からの質問や相談に適切に対応することができたか,⑧今後の自分の学習の方向性を見出すことができたか,⑨生徒に対するイメージは変わったか,⑩実習先の先生とコミュニケーションをとったかの全10項目4件法で構成された。項目①,③,④,⑤,⑧,⑨については自由記述欄も設定した。
結 果
全ての質問項目に対して対応のあるt検定を実施した。③緊張については有意に低減し (t(18)=3.13, p=.006),⑦適切な対応については有意に増加した (t(18)=2.19, p=.042)。また,⑩先生とのコミュニケーションについても有意に増加した (t(17)=4.65,p=.000)。④辛さについては,有意な差は確認できなかった(t(18)=1.44, p=.167)が,1回目の調査では「上手く教えられない」など自由記述が多く見られたのに対し,2回目の調査では全く見られなかった。更に重回帰分析(ステップワイズ法)の結果,④辛さは1回目の調査では⑨生徒のイメージの変化でのみ説明される(β=.788, R2=.60, p=.000)のに対し,2回目の調査では決定係数は小さいものの,⑥生徒の発言を受け止められたかでのみ説明された(β=-.498, R2=.20, p=.030)。また,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて1年間の感想を整理すると,主に生徒一人ひとりの違いに気づき,丁寧に説明するよりも生徒に合わせる大切さや難しさを学んでおり,それを支える過程として,事前準備などによる勉強不足の克服や,生徒や先生とのコミュニケーションを通して,自分が教える生徒のことをよく知る大切さへの気づきが確認された。
考 察
本事例では学生は概して,実際の高校生と向き合うことで,想定とのギャップに戸惑いながらも,教師に求められる資質としての「生徒を構う」ことについて,学校現場で実践的に模索していた。経験を通して初めて実感できたギャップを埋めるために,学生が誠意をもって主体的に努力や工夫を重ねる様子からは,教職課程の授業として現場体験を提供することで,より多くの学生に教師としての資質を効果的に育み始めるきっかけをつくることにつながると考えられる。