[PG37] 理科に対する好感度の学年進行による変化の検討
Keywords:理科教育, 自然体験
問題と目的
理科に対する関心の低さに焦点を当てた研究では,学年進行により理科への好感度が減少すること(国立教育政策研究所,2015)物理・化学・生物・地学という理科の分野によって好感度に差がみられること(川村・多田,2006)などが示唆された。
一方で,好感度の学年進行による減少は,全てに当てはまるわけではなく,実際は理科の好感度の変化はもっと多様であり,理科の分野で違いがあると推察される。例えば,糸井・青木・大久保・岡村・野々宮(1998)は,高等学校時点で理科に対する好感度が高い場合は,小学校以来一貫して好感度が高い傾向にあることを示した。本研究では,理科に対する好感度の学年進行による変化を,理科の分野別に検討し,さらに自然・科学体験との関わりについて検討する。
方 法
調査方法 質問紙調査を実施(回収率96.86%)。
調査対象 首都圏の国公私立大学計11大学の大学生1,211名。分析対象は,1,004名。
調査時期 2015年4〜5月および10月。
調査項目 理科に対する好感度の項目は,小学生・中学生・高等学校当時の様子について回答を得た。いずれの項目も5件法。自然・科学体験:山田・小林(2014)と荒井・永益・小林(2008)を参考に9項目。理科に対する好感度:小学校は理科のみ,中学校と高等学校は物理・化学・生物・地学の分野別に回答を得た(計9項目)。
結果と考察
「自然・科学体験」について因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った結果,因子負荷量.35以上を基準とし,2因子で9項目を採用した。第1因子(6項目)は,栽培や飼育,植物を使った遊びが含まれるため「自然体験」因子と命名した。第2因子(3項目)は,科学技術や生命メカニズムについて学ぶ活動が含まれることから「科学体験」因子と命名した。
次に,好感度の学年進行による変化を調べるため,理科の物理・化学・生物・地学の各分野別にクラスター分析を行った。小学校の好感度は,いずれの分野も理科の項目を使用した。物理・生物・地学はWard 法,平方ユークリッド距離で測定し,化学はComplete Linkage法,平方ユークリッド距離で測定した。
分析の結果,物理・化学・生物は4クラスター解,地学は5クラスター解を採用した。いずれの分野でも,小学校から一貫して好感度が低い「好感度低」クラスターと,一貫して好感度が高い「好感度高」クラスターが存在した。この両者の「自然体験」「科学体験」の標準化得点を比較した(Table 1)。その結果,「好感度低」は自然体験と科学体験の双方とも標準化得点が低かった。また,「好感度高」は生物・地学は自然体験の標準化得点が高かったが,物理・化学は低かった。
本研究では,必ずしも学年進行によって好感度が減少するのではないこと,そして自然体験は生物・地学と比較して物理・化学の好感度を高めることに寄与しにくい可能性が示唆された。
理科に対する関心の低さに焦点を当てた研究では,学年進行により理科への好感度が減少すること(国立教育政策研究所,2015)物理・化学・生物・地学という理科の分野によって好感度に差がみられること(川村・多田,2006)などが示唆された。
一方で,好感度の学年進行による減少は,全てに当てはまるわけではなく,実際は理科の好感度の変化はもっと多様であり,理科の分野で違いがあると推察される。例えば,糸井・青木・大久保・岡村・野々宮(1998)は,高等学校時点で理科に対する好感度が高い場合は,小学校以来一貫して好感度が高い傾向にあることを示した。本研究では,理科に対する好感度の学年進行による変化を,理科の分野別に検討し,さらに自然・科学体験との関わりについて検討する。
方 法
調査方法 質問紙調査を実施(回収率96.86%)。
調査対象 首都圏の国公私立大学計11大学の大学生1,211名。分析対象は,1,004名。
調査時期 2015年4〜5月および10月。
調査項目 理科に対する好感度の項目は,小学生・中学生・高等学校当時の様子について回答を得た。いずれの項目も5件法。自然・科学体験:山田・小林(2014)と荒井・永益・小林(2008)を参考に9項目。理科に対する好感度:小学校は理科のみ,中学校と高等学校は物理・化学・生物・地学の分野別に回答を得た(計9項目)。
結果と考察
「自然・科学体験」について因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った結果,因子負荷量.35以上を基準とし,2因子で9項目を採用した。第1因子(6項目)は,栽培や飼育,植物を使った遊びが含まれるため「自然体験」因子と命名した。第2因子(3項目)は,科学技術や生命メカニズムについて学ぶ活動が含まれることから「科学体験」因子と命名した。
次に,好感度の学年進行による変化を調べるため,理科の物理・化学・生物・地学の各分野別にクラスター分析を行った。小学校の好感度は,いずれの分野も理科の項目を使用した。物理・生物・地学はWard 法,平方ユークリッド距離で測定し,化学はComplete Linkage法,平方ユークリッド距離で測定した。
分析の結果,物理・化学・生物は4クラスター解,地学は5クラスター解を採用した。いずれの分野でも,小学校から一貫して好感度が低い「好感度低」クラスターと,一貫して好感度が高い「好感度高」クラスターが存在した。この両者の「自然体験」「科学体験」の標準化得点を比較した(Table 1)。その結果,「好感度低」は自然体験と科学体験の双方とも標準化得点が低かった。また,「好感度高」は生物・地学は自然体験の標準化得点が高かったが,物理・化学は低かった。
本研究では,必ずしも学年進行によって好感度が減少するのではないこと,そして自然体験は生物・地学と比較して物理・化学の好感度を高めることに寄与しにくい可能性が示唆された。