[PG38] 先延ばし後の意識と特性的楽観-悲観性との関連
Keywords:先延ばし, 楽観性, 自己認知
ある課題にたいして,やらなければならないと思いながら,その着手を後回しにしてしまう行動は先延ばし(procrastination)と呼ばれる。これまでの研究の多くは,先延ばしをしがちな程度を仮定し(以下先延ばし特性),先延ばし特性と関連する要因を検討してきた(e.g.Steel,2007)。しかし近年の研究では,遅延した後に動機づけの向上がもたらされる場合と,否定的な意識を生起する場合があることが指摘されており,その違いを考慮することが重要である。小浜(2010)は先延ばしを行う前に,どのような意図を持っていたかが,その違いを生じさせる原因であると指摘した。ただし,個人の内的な特性との関係は十分に検討されているとは言い難い。
そこで本研究では,先延ばし後に生起する意識との関連が予想される内的な特性として,楽観性および悲観性に注目する。先延ばし後の状況においては,課題の進捗や達成に対する予期が生じると考えられる。このことから,楽観性を持つことで先延ばし後に肯定的な意識を生じやすく,他方悲観性が強いことで否定的な意識が生じやすいと想定される。黒住(2016)が大学生に実施した調査では,上記の仮説を支持する相関がみられたが,調査協力者の学年に偏りが生じていた。本研究はその追跡調査として,検討が不十分であった第一学年の大学生における検討を行う。
方 法
調査協力者 黒住(2016)の調査と同様の都内の私立大学に通う大学生147名。うち,有効回答を得られた121名(男性35名,女性86名)の学部1年生を分析の対象とした。
尺度 1.先延ばし後の意識;小浜(2010)の先延ばし意識特性尺度より“先延ばし後の意識”に関する項目を使用。先延ばしの定義を教示した上で自身の体験の想起を求め,その時に生じた意識に関する質問項目に回答を求めた。“後悔・自己嫌悪(7項目)”と“気分の切り替え(5項目)”の2因子から構成され,5件法によって回答を求めた。2.楽観性および悲観性;外山(2013)の作成した楽観-悲観性尺度を使用。独立の2次元と捉えた楽観性(10項目)と悲観性(10項目)の2因子から構成され,5件法によって回答を求めた。
手続き 上記の尺度から構成された質問紙を配布し,集団方式による即時回答を求めた。なお回答に先立ち,回答が任意であること,および調査終了後のデータの取り扱いに関する教示を紙面ならびに口頭で行った。
結果と考察
各尺度の記述統計量および信頼性係数をTable 1に示す。信頼性を検討し,十分な値を得たため,項目の算術平均を尺度得点とした。
続けて,楽観性および悲観性と先延ばし後の2つの意識との関係を検討するため,相関係数を算出した(Table 2)。その結果,全ての変数間に有意な相関が確認され,第一学年においても,黒住(2016)と同様の結果が支持された。今後の展望として,回顧による横断的な調査であった点を踏まえ,個人の内的な特性と先延ばし後の意識に関する,因果モデルを考慮した検討の必要性が示された。
そこで本研究では,先延ばし後に生起する意識との関連が予想される内的な特性として,楽観性および悲観性に注目する。先延ばし後の状況においては,課題の進捗や達成に対する予期が生じると考えられる。このことから,楽観性を持つことで先延ばし後に肯定的な意識を生じやすく,他方悲観性が強いことで否定的な意識が生じやすいと想定される。黒住(2016)が大学生に実施した調査では,上記の仮説を支持する相関がみられたが,調査協力者の学年に偏りが生じていた。本研究はその追跡調査として,検討が不十分であった第一学年の大学生における検討を行う。
方 法
調査協力者 黒住(2016)の調査と同様の都内の私立大学に通う大学生147名。うち,有効回答を得られた121名(男性35名,女性86名)の学部1年生を分析の対象とした。
尺度 1.先延ばし後の意識;小浜(2010)の先延ばし意識特性尺度より“先延ばし後の意識”に関する項目を使用。先延ばしの定義を教示した上で自身の体験の想起を求め,その時に生じた意識に関する質問項目に回答を求めた。“後悔・自己嫌悪(7項目)”と“気分の切り替え(5項目)”の2因子から構成され,5件法によって回答を求めた。2.楽観性および悲観性;外山(2013)の作成した楽観-悲観性尺度を使用。独立の2次元と捉えた楽観性(10項目)と悲観性(10項目)の2因子から構成され,5件法によって回答を求めた。
手続き 上記の尺度から構成された質問紙を配布し,集団方式による即時回答を求めた。なお回答に先立ち,回答が任意であること,および調査終了後のデータの取り扱いに関する教示を紙面ならびに口頭で行った。
結果と考察
各尺度の記述統計量および信頼性係数をTable 1に示す。信頼性を検討し,十分な値を得たため,項目の算術平均を尺度得点とした。
続けて,楽観性および悲観性と先延ばし後の2つの意識との関係を検討するため,相関係数を算出した(Table 2)。その結果,全ての変数間に有意な相関が確認され,第一学年においても,黒住(2016)と同様の結果が支持された。今後の展望として,回顧による横断的な調査であった点を踏まえ,個人の内的な特性と先延ばし後の意識に関する,因果モデルを考慮した検討の必要性が示された。