[PG41] メタ認知機能に焦点づけた自己調整学習方略への心理教育的介入
授業および自宅学習を活用した総合的介入の提案
キーワード:メタ認知, 自己調整学習方略, 心理教育的介入
自己調整学習理論では,プランニングやモニタリングなどのメタ認知過程が含まれることから,メタ認知能力は学習過程に能動的に関与するために重要な発達的要因であるといえる。本研究では,メタ認知機能への心理教育的介入が子どもの能動的な学習を促す効果を検証する。児童がPDSサイクルに基づいて継続的に学習過程を自己評価する仕組みを導入することで,動機づけや自己調整学習の習得が促されることが期待される。
方 法
1.実践対象者
岐阜県内A小学校で実験群,統制群ともに各学年2クラスを設定した(実験群:4年生63名,5年生62名,6年生67名,統制群:4年生63名,5年生60名,6年生68名)。
2.自己調整学習方略に関する測定尺度
(1)認知的側面の自己調整学習方略(伊藤,1996; 14項目6件法)。(2)動機づけ的側面の自己調整学習方略(伊藤・神藤,2003; 27項目5件法)。(3)学習方略使用尺度(広田・佐藤,1997; 32項目5件法)。
3.学習パフォーマンスに関する測定尺度
(1)学習動機づけ方略尺度[MSLQ](Pintrich & De Groot, 1990; 18項目6件法)。(2)目標志向性尺度(Elliot & Church, 1997;17項目4件法)。(3)平常の学習時の不安感(曽我,1983; 6項目5件法)。(4)学習の持続性の欠如,学習価値観の欠如,失敗回避傾向,達成志向,自己評価(下山ら, 1985; それぞれ5項目4件法)。(5)達成動機尺度の達成欲求下位尺度(Lang & Fries, 2006; 5項目4件法)。
4.実践時期および手続き
平成27年5月から7月の約3か月であり,実施者は第1著者と実施校教務主任の2名で各学年1クラスずつを担当し,自主学習では実験群クラスの担任が実施した。事前測定は前年の12月,事後測定は本年の7月中旬に実施した。
5.実践内容
「算数の文章問題解決における介入授業」では,児童が問題解決のワークシートとそれに対応したメタ認知的思考を意識させるシートにより訓練を積む実践をわり算の単元で行った。「家庭での自主学習」では,毎時間の授業の学習内容を振り返り,「授業で学んだ大切なこと」をノートに書かせ,教師が主体性を促すコメントを書いて返却した。
結果と考察
事前・事後・フォローアップの測定時期と群を独立変数,各尺度得点を従属変数とする二要因分散分析を行った。自己調整学習方略では,認知的方略の交互作用(F (2,722)=4.21,p =.018)が有意であり,実験群のみ得点が事前-事後の2時点で上昇していたが,統制群では3時点で下降していた(Figure 1)。統制群は介入前後で認知的方略を使用しなくなる傾向がみられたが,実験群は反対にそれらの使用が増加したことから,介入の有効性が確認された。
学習パフォーマンスでは,MSLQの自己効力感の交互作用(F (2,722)=3.99,p =.022)が有意であり,統制群のみ得点が3時点で低下していた(Figure 1)。実験群は,介入前後の2時点で得点がほぼ同じ(または,上昇傾向)であり,その後,フォローアップにかけて低下していた。実験群において,低下の抑制効果が認められた。
自己調整学習方略の変化量を説明変数,学習パフォーマンスの変化量を個別に基準変数とした重回帰分析を行った。主要結果として,自己効力感(β =.205, p =.018)などで,認知的方略との正の関連が示された。実験群が認知的方略を使用するのに付随して自己効力感などの学習パフォーマンスが高まったことを意味している。
方 法
1.実践対象者
岐阜県内A小学校で実験群,統制群ともに各学年2クラスを設定した(実験群:4年生63名,5年生62名,6年生67名,統制群:4年生63名,5年生60名,6年生68名)。
2.自己調整学習方略に関する測定尺度
(1)認知的側面の自己調整学習方略(伊藤,1996; 14項目6件法)。(2)動機づけ的側面の自己調整学習方略(伊藤・神藤,2003; 27項目5件法)。(3)学習方略使用尺度(広田・佐藤,1997; 32項目5件法)。
3.学習パフォーマンスに関する測定尺度
(1)学習動機づけ方略尺度[MSLQ](Pintrich & De Groot, 1990; 18項目6件法)。(2)目標志向性尺度(Elliot & Church, 1997;17項目4件法)。(3)平常の学習時の不安感(曽我,1983; 6項目5件法)。(4)学習の持続性の欠如,学習価値観の欠如,失敗回避傾向,達成志向,自己評価(下山ら, 1985; それぞれ5項目4件法)。(5)達成動機尺度の達成欲求下位尺度(Lang & Fries, 2006; 5項目4件法)。
4.実践時期および手続き
平成27年5月から7月の約3か月であり,実施者は第1著者と実施校教務主任の2名で各学年1クラスずつを担当し,自主学習では実験群クラスの担任が実施した。事前測定は前年の12月,事後測定は本年の7月中旬に実施した。
5.実践内容
「算数の文章問題解決における介入授業」では,児童が問題解決のワークシートとそれに対応したメタ認知的思考を意識させるシートにより訓練を積む実践をわり算の単元で行った。「家庭での自主学習」では,毎時間の授業の学習内容を振り返り,「授業で学んだ大切なこと」をノートに書かせ,教師が主体性を促すコメントを書いて返却した。
結果と考察
事前・事後・フォローアップの測定時期と群を独立変数,各尺度得点を従属変数とする二要因分散分析を行った。自己調整学習方略では,認知的方略の交互作用(F (2,722)=4.21,p =.018)が有意であり,実験群のみ得点が事前-事後の2時点で上昇していたが,統制群では3時点で下降していた(Figure 1)。統制群は介入前後で認知的方略を使用しなくなる傾向がみられたが,実験群は反対にそれらの使用が増加したことから,介入の有効性が確認された。
学習パフォーマンスでは,MSLQの自己効力感の交互作用(F (2,722)=3.99,p =.022)が有意であり,統制群のみ得点が3時点で低下していた(Figure 1)。実験群は,介入前後の2時点で得点がほぼ同じ(または,上昇傾向)であり,その後,フォローアップにかけて低下していた。実験群において,低下の抑制効果が認められた。
自己調整学習方略の変化量を説明変数,学習パフォーマンスの変化量を個別に基準変数とした重回帰分析を行った。主要結果として,自己効力感(β =.205, p =.018)などで,認知的方略との正の関連が示された。実験群が認知的方略を使用するのに付随して自己効力感などの学習パフォーマンスが高まったことを意味している。