[PG44] 先延ばし理由の領域別調査
外国語先延ばし尺度作成に向けた予備的研究
キーワード:学業先延ばし, PASS
問題と目的
先延ばしの定義は研究者により異なるが,「意図したことの実行を避ける」「しなければならない行動が不必要に遅らされる」など,意図と行動結果にずれが生じる現象を述べることが多い。大学生の学業先延ばしは,海外を中心に研究が積み重ねられてきたテーマであるが,学業先延ばし一般について,パーソナリティや動機づけ,方略使用と結び付けた研究が多かった。一方最近ではGropel & Steel(2008)が,先延ばしと自己効力感・課題嫌悪・衝動性等の相関を明らかにするなど,より包括的な研究が行われるようになってきた。
一方領域別の先延ばしを調査した研究として,Solomon & Rothblum(1984)によるPASS(課題内容や領域により異なる先延ばしを測る質問票)を用いた研究などがあるが,数は多くはなかった。先延ばしは領域別に異なることを示唆した研究考察も複数あることから,大学生の学業先延ばしの要因を詳細に探るためには,領域を絞った研究が必要であると思われる。本研究ではPASSの「遅延シナリオ」でレポート課題先延ばし理由を尋ねる部分を和訳し,文脈を外国語学習に限定するため「外国語のプレゼン準備を先延ばしする理由」と変更した。また先延ばしには認知と情意の相互作用の影響があるという先行研究に倣い,外国語科目の好き嫌い・得意苦手意識を尋ねる項目を追加し,先延ばし理由との関連を検討した。
方 法
調査対象:首都圏にある私立大学で外国語科目を履修中の大学生61名(男性33名,女性28名)を対象とした。
調査内容:個人の先延ばし要因傾向を探るためPASSの「遅延シナリオ」における26項目13因子の先延ばし理由の和訳を用いた。評定は5件法である。また,回答者の自覚する外国語学習への情意と認知を尋ねるため履修中の外国語に対する感覚を「1.嫌いで苦手」「2.嫌いだが得意」「3.好きだが苦手」「4.好きで得意」の4件法で尋ねた。
結 果
先延ばし理由の因子ごとの合計得点を算出し,相関係数を算出した。結果「自信のなさ」と「課題嫌悪・不快感への低い耐性」に中程度の正の相関(r =.698,**p <.01)がみられた。また「評価不安」は「完全主義(r =.604, **p <.01)」,「決断困難(r =.503,**p <.01)」,「支配抵抗(r =.505,**p <.01)」,「成功恐怖(r =.562,**p <.01)」の中程度の正の相関があった。さらに外国語学習への感覚が「3.好きだが苦手」群においても中程度の正の相関が得られた (Table 1)。以上のことから先延ばし理由の関連性が明らかになった。よって,今後は外国語先延ばしのプロセスにおいてどのような要因があるのか,詳細に検討したい。
引用文献
Gropel & Steel (2008). A Mega-Trial In vestigation of Goal Setting, Interest Enhancement, and Energy on Procrastination. Personality and Individual Differences, 45, 406-411.
Solomon and Rothblum (1984). Academic Pro crastination: Frequency and Cognitive - Behavioral Correlates. Journal of Counseling Psychology, 31, 503-509.
先延ばしの定義は研究者により異なるが,「意図したことの実行を避ける」「しなければならない行動が不必要に遅らされる」など,意図と行動結果にずれが生じる現象を述べることが多い。大学生の学業先延ばしは,海外を中心に研究が積み重ねられてきたテーマであるが,学業先延ばし一般について,パーソナリティや動機づけ,方略使用と結び付けた研究が多かった。一方最近ではGropel & Steel(2008)が,先延ばしと自己効力感・課題嫌悪・衝動性等の相関を明らかにするなど,より包括的な研究が行われるようになってきた。
一方領域別の先延ばしを調査した研究として,Solomon & Rothblum(1984)によるPASS(課題内容や領域により異なる先延ばしを測る質問票)を用いた研究などがあるが,数は多くはなかった。先延ばしは領域別に異なることを示唆した研究考察も複数あることから,大学生の学業先延ばしの要因を詳細に探るためには,領域を絞った研究が必要であると思われる。本研究ではPASSの「遅延シナリオ」でレポート課題先延ばし理由を尋ねる部分を和訳し,文脈を外国語学習に限定するため「外国語のプレゼン準備を先延ばしする理由」と変更した。また先延ばしには認知と情意の相互作用の影響があるという先行研究に倣い,外国語科目の好き嫌い・得意苦手意識を尋ねる項目を追加し,先延ばし理由との関連を検討した。
方 法
調査対象:首都圏にある私立大学で外国語科目を履修中の大学生61名(男性33名,女性28名)を対象とした。
調査内容:個人の先延ばし要因傾向を探るためPASSの「遅延シナリオ」における26項目13因子の先延ばし理由の和訳を用いた。評定は5件法である。また,回答者の自覚する外国語学習への情意と認知を尋ねるため履修中の外国語に対する感覚を「1.嫌いで苦手」「2.嫌いだが得意」「3.好きだが苦手」「4.好きで得意」の4件法で尋ねた。
結 果
先延ばし理由の因子ごとの合計得点を算出し,相関係数を算出した。結果「自信のなさ」と「課題嫌悪・不快感への低い耐性」に中程度の正の相関(r =.698,**p <.01)がみられた。また「評価不安」は「完全主義(r =.604, **p <.01)」,「決断困難(r =.503,**p <.01)」,「支配抵抗(r =.505,**p <.01)」,「成功恐怖(r =.562,**p <.01)」の中程度の正の相関があった。さらに外国語学習への感覚が「3.好きだが苦手」群においても中程度の正の相関が得られた (Table 1)。以上のことから先延ばし理由の関連性が明らかになった。よって,今後は外国語先延ばしのプロセスにおいてどのような要因があるのか,詳細に検討したい。
引用文献
Gropel & Steel (2008). A Mega-Trial In vestigation of Goal Setting, Interest Enhancement, and Energy on Procrastination. Personality and Individual Differences, 45, 406-411.
Solomon and Rothblum (1984). Academic Pro crastination: Frequency and Cognitive - Behavioral Correlates. Journal of Counseling Psychology, 31, 503-509.