[PG69] 学生ボランティアを活用した不登校者支援
不登校経験者受け入れ高校における参与観察から
Keywords:不登校, 学生ボランティア, フィールドワーク
問題と目的
近年,各種学校において大学生ボランティア(以下Vo)を活用した不登校者支援が導入されている。Voと生徒の良好な関係は,生徒と教師の関係を肯定的にすると言われており,Voは不登校者の日常的な人間関係を支える有力な支援者として位置づけられる。一方で,これまで大学生Voを採用する学校の文脈が扱われてこなかったために,大学生Voを活用することで何をどのように支援しているのかが不明瞭であった。そこで本研究では,大学生Voを活用して不登校者支援をおこなう学校でフィールドワークを行い,大学生Voを活用した支援の目的と方法を明らかにする。
方 法
フィールドについて 本研究では,不登校支援に特化した私立全日制単位制高校B(以下B高校)をフィールドとした。B高校の教職員は,折に触れて「誰も排除しないことを理念として教育を行っている」ことに言及していた。
大学生によるボランティア活動 B高校が活用する大学生VoはLearning Assistant(以下LA)と呼ばれ,その役割は,教員とは異なる立場として,生徒の高校生活やそこでの成長をサポートすることであった。具体的には週に1度,「生徒ホール」と呼ばれるオープンスペースに滞在して生徒と雑談をすることが主な役割であった。授業中のホール利用は保護者と教職員からの承認が必要であったが,それ以外の時間帯は全員の生徒が利用できた。月に1度はLAが活動中に気になったことをSSWに相談するミーティングが行われた。
分析 2012年7月から2013年11月の間に実施されたミーティングにおけるSSWのLAへの助言を分析対象とした。LAの相談内容を,生徒の教師や親との関係,友人との関係,授業参加や卒業,それ以外(LAとの交流等)に分け,相談内容に通底してSSWが伝えていること(共通性)と,相談内容に特有な助言(特殊性)を分析した。
結 果
SSWの発言に一貫していたのは,LAの生徒理解を促進し,生徒とLAの関わりを維持することであった。週に1度,ホールでしか生徒と関わる機会をもたないLAは,生徒の授業欠席や友人関係の相談等をネガティブな状態と見なしやすい。そこでSSWは過去と比較した生徒の成長やクラスでの状況を提示することで,LAの生徒理解のための文脈を拡張していた。相談内容ごとの助言の特徴としては,授業への出席や進路については,問題を外在化していたのに対して,生徒の対人関係については,嫌いな人とも同じ空間で過ごすこと,生徒同士で言い合えるようになるという目標が伝えられた。
さらに,SSWの助言分析から,B高校では生徒の継続的な授業参加に向けて7段階のステップを用意していることが分かった(Figure 1)。B高校では,多様な登校形態を保証した上で,登校形態を横断した共有の場として生徒ホールを設置していたのである。LAを,生徒の登校と関係形成の足場となるよう配置し,継続登校と排他しない関係の形成を目指していたことが分かった。
近年,各種学校において大学生ボランティア(以下Vo)を活用した不登校者支援が導入されている。Voと生徒の良好な関係は,生徒と教師の関係を肯定的にすると言われており,Voは不登校者の日常的な人間関係を支える有力な支援者として位置づけられる。一方で,これまで大学生Voを採用する学校の文脈が扱われてこなかったために,大学生Voを活用することで何をどのように支援しているのかが不明瞭であった。そこで本研究では,大学生Voを活用して不登校者支援をおこなう学校でフィールドワークを行い,大学生Voを活用した支援の目的と方法を明らかにする。
方 法
フィールドについて 本研究では,不登校支援に特化した私立全日制単位制高校B(以下B高校)をフィールドとした。B高校の教職員は,折に触れて「誰も排除しないことを理念として教育を行っている」ことに言及していた。
大学生によるボランティア活動 B高校が活用する大学生VoはLearning Assistant(以下LA)と呼ばれ,その役割は,教員とは異なる立場として,生徒の高校生活やそこでの成長をサポートすることであった。具体的には週に1度,「生徒ホール」と呼ばれるオープンスペースに滞在して生徒と雑談をすることが主な役割であった。授業中のホール利用は保護者と教職員からの承認が必要であったが,それ以外の時間帯は全員の生徒が利用できた。月に1度はLAが活動中に気になったことをSSWに相談するミーティングが行われた。
分析 2012年7月から2013年11月の間に実施されたミーティングにおけるSSWのLAへの助言を分析対象とした。LAの相談内容を,生徒の教師や親との関係,友人との関係,授業参加や卒業,それ以外(LAとの交流等)に分け,相談内容に通底してSSWが伝えていること(共通性)と,相談内容に特有な助言(特殊性)を分析した。
結 果
SSWの発言に一貫していたのは,LAの生徒理解を促進し,生徒とLAの関わりを維持することであった。週に1度,ホールでしか生徒と関わる機会をもたないLAは,生徒の授業欠席や友人関係の相談等をネガティブな状態と見なしやすい。そこでSSWは過去と比較した生徒の成長やクラスでの状況を提示することで,LAの生徒理解のための文脈を拡張していた。相談内容ごとの助言の特徴としては,授業への出席や進路については,問題を外在化していたのに対して,生徒の対人関係については,嫌いな人とも同じ空間で過ごすこと,生徒同士で言い合えるようになるという目標が伝えられた。
さらに,SSWの助言分析から,B高校では生徒の継続的な授業参加に向けて7段階のステップを用意していることが分かった(Figure 1)。B高校では,多様な登校形態を保証した上で,登校形態を横断した共有の場として生徒ホールを設置していたのである。LAを,生徒の登校と関係形成の足場となるよう配置し,継続登校と排他しない関係の形成を目指していたことが分かった。