[PG72] 児童の座席指向に関する研究
座席の好みとその傾向
Keywords:座席指向, 選好度, 児童
問題と目的
「座席行動」は非言語行動の一領域であり,着席者の心理状態が着席位置等に表れる場合があると指摘されている。教育分野においては,大学の講義室をフィールドとした研究が多く,学習に対する意欲や積極性が座席選択に大きな影響を与えることや,後列よりも前列の座席に着席する学生の方が成績の良いことなどが報告されている。
宮本ら(1994)や小西(1998)のように小学生を対象とした研究もあるが,大学生の研究に比べて少なく,一致した見解が得られていない。本研究では,対象学年と調査人数を拡大し,より一般的な小学生の座席指向の把握を目指した。
方 法
調査対象
大阪市と堺市の公立小学校3校の3年生以上の児童を対象に,無記名のアンケート調査を行った。回答者1394名の内,理由記述の部分を除く全ての項目に不備なく回答した1118名分を有効回答,分析対象とした(全体の有効回答率は80.2%)。
調査内容
仮想の32人学級の座席配置図を提示し,各座席に対する座りたい気持ちの強さを4段階で記入してもらった。同時に,「一番座りたい席」及び「一番座りたくない席」の選択と,その理由記述も求めた。さらに,児童の特性等に関して4件法で回答を求めた。
結果及び考察
(1) 児童の座席指向
前方の座席の選好度は,3年生で高く6年生で低いのに対して,後方の座席の選好度は,3年生で低く6年生で高かった(Figure 1)。このように,学年が上がるにつれて前方が忌避され,後方が選好される傾向が有意であり,宮本ら(1994)と類似する結果であった。この座席指向は,男子に早くから現れるが,6年生では性差は見られなかった。加えて,教室の中央付近の座席は,学年や性別に関わらず忌避されにくいことが新たに明らかになった。また,一番に座りたくない最忌避位置は,教卓前の座席及び教室の4隅に集まっているが,教卓前と後方両端の座席は一番に座りたい最選好位置にも比較的多く選ばれており,好みが分かれやすい座席であると言える。
(2) 座席選択に関する要因
座席選択理由として,「黒板の見えやすさ」を中心とした「授業関連」のカテゴリーに該当する回答が多く,小西(1998)と同様の結果となった。また,「快適性」や「先生との関係」の理由が学年と共に上昇する傾向が新たに明らかとなった。
(3) 児童の特性と座席指向
「視力」と「前後方向の座席指向」との間に強い相関が見られ,視力の悪い児童が前方を好む傾向にあった。「授業や勉強に対する感情」と「前後方向の座席指向」との間の相関は,高学年で有意であるが弱かった。この両者の相関が強まるのは中学生以降であると推察できる。
「座席行動」は非言語行動の一領域であり,着席者の心理状態が着席位置等に表れる場合があると指摘されている。教育分野においては,大学の講義室をフィールドとした研究が多く,学習に対する意欲や積極性が座席選択に大きな影響を与えることや,後列よりも前列の座席に着席する学生の方が成績の良いことなどが報告されている。
宮本ら(1994)や小西(1998)のように小学生を対象とした研究もあるが,大学生の研究に比べて少なく,一致した見解が得られていない。本研究では,対象学年と調査人数を拡大し,より一般的な小学生の座席指向の把握を目指した。
方 法
調査対象
大阪市と堺市の公立小学校3校の3年生以上の児童を対象に,無記名のアンケート調査を行った。回答者1394名の内,理由記述の部分を除く全ての項目に不備なく回答した1118名分を有効回答,分析対象とした(全体の有効回答率は80.2%)。
調査内容
仮想の32人学級の座席配置図を提示し,各座席に対する座りたい気持ちの強さを4段階で記入してもらった。同時に,「一番座りたい席」及び「一番座りたくない席」の選択と,その理由記述も求めた。さらに,児童の特性等に関して4件法で回答を求めた。
結果及び考察
(1) 児童の座席指向
前方の座席の選好度は,3年生で高く6年生で低いのに対して,後方の座席の選好度は,3年生で低く6年生で高かった(Figure 1)。このように,学年が上がるにつれて前方が忌避され,後方が選好される傾向が有意であり,宮本ら(1994)と類似する結果であった。この座席指向は,男子に早くから現れるが,6年生では性差は見られなかった。加えて,教室の中央付近の座席は,学年や性別に関わらず忌避されにくいことが新たに明らかになった。また,一番に座りたくない最忌避位置は,教卓前の座席及び教室の4隅に集まっているが,教卓前と後方両端の座席は一番に座りたい最選好位置にも比較的多く選ばれており,好みが分かれやすい座席であると言える。
(2) 座席選択に関する要因
座席選択理由として,「黒板の見えやすさ」を中心とした「授業関連」のカテゴリーに該当する回答が多く,小西(1998)と同様の結果となった。また,「快適性」や「先生との関係」の理由が学年と共に上昇する傾向が新たに明らかとなった。
(3) 児童の特性と座席指向
「視力」と「前後方向の座席指向」との間に強い相関が見られ,視力の悪い児童が前方を好む傾向にあった。「授業や勉強に対する感情」と「前後方向の座席指向」との間の相関は,高学年で有意であるが弱かった。この両者の相関が強まるのは中学生以降であると推察できる。