[PG73] 児童期における私語の集団規範に関する研究
リターン・ポテンシャルモデルを用いて
キーワード:集団規範, リターンポテンシャル, 小学生
問 題
卜部・佐々木(1999)によると,中学生・高校生・専門学校生において,授業中の私語と私語に関する集団規範が深く関係していることをリターン・ポテンシャルモデルを用いて明らかにしている。鶴川・井上(2015)では,児童期において,授業中の私語と私語をした時のクラスメイトの反応,担任の先生の反応の関係を検討したが,集団規範との関係は検討されていない。この研究では,卜部・佐々木(1999)を参考にして質問紙を作成していることから,リターン・ポテンシャルモデルを用いて集団規範の様相を明らかにすることができるであろう。そこで本研究では,児童期における授業中の私語と集団規範の関係について,リターン・ポテンシャルモデルを用いて検討することを目的とする。
方 法
調査対象者 小学3,6年生4学級の児童135名。
質問項目 (1) 私語の実態尺度 卜部・佐々木(1999)により作成された5つの私語に関する行動のうち,「授業に無関係なことを,時々,周りに聞こえるような声で話す」と「授業に無関係なことを,授業中ずっと,周りに聞こえるような声で話す」を1つにまとめた4つの行動(1授業に関係のあることを,小さい声で隣の人に尋ねる,2授業に関係のないことを,小さい声で隣の人に話す,3授業に関係のないことを,周りに聞こえるような声で話す,4おしゃべりせずに授業を聞く)を用いた。「あなたの授業中の行動について」4つの行動ごとに,「よくする」から「まったくしない」の4件法で評定を求めた。
(2) 私語の集団規範尺度 卜部・佐々木(1999)により用いられた質問内容と同様に,「あなたの授業中の行動に対してクラスのみんながどう思うかについて」上記の1から4の行動ごとに,「よいと思うだろう」から「かなりまずいと思うだろう」の5件法で評定を求めた。
結果と考察
図1は,私語の集団規範について質問紙から得られた得点をリターン・ポテンシャルモデルに基づきプロットしたもので,点数が高いほど是認されていることを意味する。表1は,リターン・ポテンシャルモデルからわかる集団規範の様相(強度の認知,是―否認差の認知)を示したものである。集団規範の様相のクラス間の差をみた結果,「強度の認知」では3年1組>6年2組(p<.05),3年1組>6年1組(p<.05)の差がみられた。
表2は,私語の実態の平均得点を私語行動ごとに示したものである。私語の実態と集団規範の強度の認知の間の関係を見た結果,集団規範の強度の認知と「小声・関係なし」(r=.-.189, p<.05)と「大声・関係なし」(r=-.262, p<.01)に関する私語の実態との間には有意な相関が見られた。このことから,授業と関係のない話をする頻度が集団規範の強度の認知と関係していることがわかる。しかし,3年2組は3年1組よりも「小声・関係なし」と「大声・関係なし」得点が大きいものの,集団規範の強度の認知について6年生のクラスとの間に差が見られなかったことから,集団規範の強度の認知と他にも関係するものがあることが考えられる。
卜部・佐々木(1999)によると,中学生・高校生・専門学校生において,授業中の私語と私語に関する集団規範が深く関係していることをリターン・ポテンシャルモデルを用いて明らかにしている。鶴川・井上(2015)では,児童期において,授業中の私語と私語をした時のクラスメイトの反応,担任の先生の反応の関係を検討したが,集団規範との関係は検討されていない。この研究では,卜部・佐々木(1999)を参考にして質問紙を作成していることから,リターン・ポテンシャルモデルを用いて集団規範の様相を明らかにすることができるであろう。そこで本研究では,児童期における授業中の私語と集団規範の関係について,リターン・ポテンシャルモデルを用いて検討することを目的とする。
方 法
調査対象者 小学3,6年生4学級の児童135名。
質問項目 (1) 私語の実態尺度 卜部・佐々木(1999)により作成された5つの私語に関する行動のうち,「授業に無関係なことを,時々,周りに聞こえるような声で話す」と「授業に無関係なことを,授業中ずっと,周りに聞こえるような声で話す」を1つにまとめた4つの行動(1授業に関係のあることを,小さい声で隣の人に尋ねる,2授業に関係のないことを,小さい声で隣の人に話す,3授業に関係のないことを,周りに聞こえるような声で話す,4おしゃべりせずに授業を聞く)を用いた。「あなたの授業中の行動について」4つの行動ごとに,「よくする」から「まったくしない」の4件法で評定を求めた。
(2) 私語の集団規範尺度 卜部・佐々木(1999)により用いられた質問内容と同様に,「あなたの授業中の行動に対してクラスのみんながどう思うかについて」上記の1から4の行動ごとに,「よいと思うだろう」から「かなりまずいと思うだろう」の5件法で評定を求めた。
結果と考察
図1は,私語の集団規範について質問紙から得られた得点をリターン・ポテンシャルモデルに基づきプロットしたもので,点数が高いほど是認されていることを意味する。表1は,リターン・ポテンシャルモデルからわかる集団規範の様相(強度の認知,是―否認差の認知)を示したものである。集団規範の様相のクラス間の差をみた結果,「強度の認知」では3年1組>6年2組(p<.05),3年1組>6年1組(p<.05)の差がみられた。
表2は,私語の実態の平均得点を私語行動ごとに示したものである。私語の実態と集団規範の強度の認知の間の関係を見た結果,集団規範の強度の認知と「小声・関係なし」(r=.-.189, p<.05)と「大声・関係なし」(r=-.262, p<.01)に関する私語の実態との間には有意な相関が見られた。このことから,授業と関係のない話をする頻度が集団規範の強度の認知と関係していることがわかる。しかし,3年2組は3年1組よりも「小声・関係なし」と「大声・関係なし」得点が大きいものの,集団規範の強度の認知について6年生のクラスとの間に差が見られなかったことから,集団規範の強度の認知と他にも関係するものがあることが考えられる。