[PG75] 学校予防教育における向社会性の育成が児童の学習意欲に及ぼす効果について
第5学年におけるTOP SELF授業プログラムの実践
Keywords:学校予防教育, 向社会性, 学習意欲
問題と目的
鳴門教育大学予防教育科学センター編(2012)によると,TOP SELF(Trial Of Prevention School Education for Life and Friendship)ではベース総合教育として自律性と対人関係性の育成をめざし,向社会性の育成など4点の構成目標を掲げている。
向社会性(prosociality)とは,対人関係性の中核となるものである。構成中位目標として「向社会的行動を行う上で必要な認知や判断ができる」「他者の感情や外的状況を認識し,向社会的行動につながるような感情が喚起される」「向社会的行動ができる」の3点を設定している。社会・感情学習(Social Emotional Learning: SEL)やYCDIプログラム(You Can Do It: YCDI)の先行研究では,学業成績にポジティブな影響を与えていることが判明している(Brendtro, Brokenleg, & Van Bockern, 1990; Bernard & Anglim, 2013)。しかし,日本では向社会性の育成と学習意欲との関連についての報告事例が少なく,教育効果の有無を検証する余地があると考えた。
本研究では,学習意欲を向社会性の育成という視点から検証し,どのような効果があるのかを分析した。また8時間版授業と4時間版授業との結果を比較し,授業時数の違いと学習意欲との関連について検証した。
方 法
徳島県内A町の公立小学校3校第5学年児童309名(男子148名,女子161名)を対象に向社会性の育成の授業を実施した。A小は8時間版,B・C小は4時間版を実施した。TOP SELFの授業プログラムは,科学的根拠に基づくグループ活動やアニメーション,情動を喚起させるゲーム等を重視した授業である。教育目標達成度評価(鳴門教育大学予防教育科学センター)と学芸大式学習意欲検査(簡易版)(Gakugeidai Academic Motivation Inventory: GAMI)(下山ら,1985)を教育前後に実施し,教育後のみ印象評価(鳴門教育大学予防教育科学センター)を行った。
結果と考察
IBMのSPSS(Statistical Package for Social Science, version21)による2要因分散分析の結果,教育目標達成度評価では3校全てで時期の主効果が確認できた。この結果は授業時数にかかわらず教育効果があることを証明している。8時間版では4時間版より顕著な教育効果が確認できた。教育後における平均値も8時間版で上昇した項目が多かった。印象評価では約9割の児童が「授業が楽しかった」「授業の内容が理解できた」と回答し,児童にとって楽しくわかりやすい授業であったことを示している。
GAMIでは,従順性において時期の主効果が,失敗回避傾向において交互作用が確認できた。向社会性はクラスにおける対人関係性を養い,学習意欲向上の媒介変数として作用するものと考えられる。
鳴門教育大学予防教育科学センター編(2012)によると,TOP SELF(Trial Of Prevention School Education for Life and Friendship)ではベース総合教育として自律性と対人関係性の育成をめざし,向社会性の育成など4点の構成目標を掲げている。
向社会性(prosociality)とは,対人関係性の中核となるものである。構成中位目標として「向社会的行動を行う上で必要な認知や判断ができる」「他者の感情や外的状況を認識し,向社会的行動につながるような感情が喚起される」「向社会的行動ができる」の3点を設定している。社会・感情学習(Social Emotional Learning: SEL)やYCDIプログラム(You Can Do It: YCDI)の先行研究では,学業成績にポジティブな影響を与えていることが判明している(Brendtro, Brokenleg, & Van Bockern, 1990; Bernard & Anglim, 2013)。しかし,日本では向社会性の育成と学習意欲との関連についての報告事例が少なく,教育効果の有無を検証する余地があると考えた。
本研究では,学習意欲を向社会性の育成という視点から検証し,どのような効果があるのかを分析した。また8時間版授業と4時間版授業との結果を比較し,授業時数の違いと学習意欲との関連について検証した。
方 法
徳島県内A町の公立小学校3校第5学年児童309名(男子148名,女子161名)を対象に向社会性の育成の授業を実施した。A小は8時間版,B・C小は4時間版を実施した。TOP SELFの授業プログラムは,科学的根拠に基づくグループ活動やアニメーション,情動を喚起させるゲーム等を重視した授業である。教育目標達成度評価(鳴門教育大学予防教育科学センター)と学芸大式学習意欲検査(簡易版)(Gakugeidai Academic Motivation Inventory: GAMI)(下山ら,1985)を教育前後に実施し,教育後のみ印象評価(鳴門教育大学予防教育科学センター)を行った。
結果と考察
IBMのSPSS(Statistical Package for Social Science, version21)による2要因分散分析の結果,教育目標達成度評価では3校全てで時期の主効果が確認できた。この結果は授業時数にかかわらず教育効果があることを証明している。8時間版では4時間版より顕著な教育効果が確認できた。教育後における平均値も8時間版で上昇した項目が多かった。印象評価では約9割の児童が「授業が楽しかった」「授業の内容が理解できた」と回答し,児童にとって楽しくわかりやすい授業であったことを示している。
GAMIでは,従順性において時期の主効果が,失敗回避傾向において交互作用が確認できた。向社会性はクラスにおける対人関係性を養い,学習意欲向上の媒介変数として作用するものと考えられる。