[PG77] 教師とスクールカウンセラーの協働をめぐる研究の概観
1994-2014年における雑誌論文・記事による研究動向の検討
キーワード:教師, スクールカウンセラー, 協働
問題と目的
近年,児童生徒を取り巻く問題の複雑多様化や教師の役割拡大が指摘されており(中央教育審議会,2015),教師とスクールカウンセラー(以下SC)の協働が急務となっている。本研究では,教師とSCの協働をめぐる研究がどのように行われ,どのような変遷を辿ってきたかを明らかにすることを目的とする。
方 法
まず,文献収集の対象期間を,SCが学校に導入された1995年の前年度である1994年から,2014年までと設定した。
文献収集は,2度の時期に行った。まず,2014年4月下旬から2014年11月下旬の期間に,CiNii(国立情報学研究所論文検索)を用いて,「SC」「学校」「教師」「連携」「協働」をキーワードに,合計23本の雑誌論文・記事を収集した。続いて,より包括的に先行研究を概観するため,2015年11月に,国立国会図書館蔵書検索システム(NDL-OPAC)を使用し,「SC」「スクールカウンセリング」をキーワードとして,雑誌論文・記事1303件を追加し,それらの題目,掲載雑誌名,著者名,発行年をデータとした。合計,1326件を分析対象とした。
結果と考察
1994-2014年の雑誌論文・記事の分類・整理 まず,雑誌論文・記事の分類は,研究領域と研究テーマの2つの指標から行った。研究領域では,「心理」「学校教育」「教育・社会」「福祉」「医学・看護・保健」「その他」の6つに分類された。研究テーマでは,「SC・SC制度に対する評価・解説・展望」「実践を巡って」「協働」「判別不可」「その他」の5つに分類された。さらに,「協働」においては,「1.教師間」「2.学校・教師―保護者」「3.学校・教師―SC」「4.学校・教師―保護者―SC」「5.スクールソーシャルワーカー(以下SSW)」「6.関係機関」「7.校種間」「8.1-7を組み合わせたあり方」「9.協働方略」に細分類した(表1)。
「協働」をテーマとする研究は,206件(総数の15.5%)であった。そのうち,学校・教師とSCの協働に関する研究は109件(52.9%)と半数を占めており,心理領域が61件(56.0%),学校教育領域が39件(35.8%)であった。学校・教師の内訳としては,担任教師や養護教諭,教育相談係が挙げられた。特に心理領域において,SCが学校・教師とどのように協働し,児童生徒を支援していくかについて,数多く検討されてきたことがうかがえた。
教師とSCの協働をめぐる研究の動向 最後に,今回収集したデータを基に,1994年から2014年の期間を3期に分け,教師とSCの協働をめぐる研究の動向を概観した。
まず第1期は,1994年から「SC活用調査研究委託事業」としてSCが学校に導入された2000年までである。文献数は34件(16.5%)あり,教師のSC導入に対する不安や抵抗,SCの専門性への期待が明らかにされた(e.g.,伊藤,2000; 伊藤・中村,1998)。これは,心理臨床という新しい専門性を持ったSCの導入に伴う,教師の不安や期待を反映するものであると考えられた。
第2期は,「SC活用事業補助」として事業が大幅に拡大された2001-2007年である。文献数も88件(42.7%)と大幅に増え,協働上の課題として,SCの勤務体制による時間的な制限や,SCの守秘義務による教師とSCの情報共有の困難さ,SCの役割の明確化が指摘された(e.g., 荒木・中澤,2007)。SCの活動が徐々に定着したことで,具体的な課題が明らかになった時期であった。
第3期は,学校にSSWが導入される等,支援体制が見直された2008-2014年であり,文献数は84件(40.7%)であった。この時期は,第2期に指摘された協働上の様々な課題が引き続き指摘され(e.g., 江村,2011),加えて,SCに対し,学校の特性に対する理解不足や,問題解決力の個人差が指摘される等(小林,2008),厳しい評価がなされた。
さらに,第1期から第3期にかけて,教師とSCの相互理解の必要性が繰り返し指摘されており,教師とSCで相互理解を図ることが最重要であると考えられた。
※本研究は,2014年度に鹿児島純心女子大学に提出した卒業論文の一部を加筆・修正したものです。
近年,児童生徒を取り巻く問題の複雑多様化や教師の役割拡大が指摘されており(中央教育審議会,2015),教師とスクールカウンセラー(以下SC)の協働が急務となっている。本研究では,教師とSCの協働をめぐる研究がどのように行われ,どのような変遷を辿ってきたかを明らかにすることを目的とする。
方 法
まず,文献収集の対象期間を,SCが学校に導入された1995年の前年度である1994年から,2014年までと設定した。
文献収集は,2度の時期に行った。まず,2014年4月下旬から2014年11月下旬の期間に,CiNii(国立情報学研究所論文検索)を用いて,「SC」「学校」「教師」「連携」「協働」をキーワードに,合計23本の雑誌論文・記事を収集した。続いて,より包括的に先行研究を概観するため,2015年11月に,国立国会図書館蔵書検索システム(NDL-OPAC)を使用し,「SC」「スクールカウンセリング」をキーワードとして,雑誌論文・記事1303件を追加し,それらの題目,掲載雑誌名,著者名,発行年をデータとした。合計,1326件を分析対象とした。
結果と考察
1994-2014年の雑誌論文・記事の分類・整理 まず,雑誌論文・記事の分類は,研究領域と研究テーマの2つの指標から行った。研究領域では,「心理」「学校教育」「教育・社会」「福祉」「医学・看護・保健」「その他」の6つに分類された。研究テーマでは,「SC・SC制度に対する評価・解説・展望」「実践を巡って」「協働」「判別不可」「その他」の5つに分類された。さらに,「協働」においては,「1.教師間」「2.学校・教師―保護者」「3.学校・教師―SC」「4.学校・教師―保護者―SC」「5.スクールソーシャルワーカー(以下SSW)」「6.関係機関」「7.校種間」「8.1-7を組み合わせたあり方」「9.協働方略」に細分類した(表1)。
「協働」をテーマとする研究は,206件(総数の15.5%)であった。そのうち,学校・教師とSCの協働に関する研究は109件(52.9%)と半数を占めており,心理領域が61件(56.0%),学校教育領域が39件(35.8%)であった。学校・教師の内訳としては,担任教師や養護教諭,教育相談係が挙げられた。特に心理領域において,SCが学校・教師とどのように協働し,児童生徒を支援していくかについて,数多く検討されてきたことがうかがえた。
教師とSCの協働をめぐる研究の動向 最後に,今回収集したデータを基に,1994年から2014年の期間を3期に分け,教師とSCの協働をめぐる研究の動向を概観した。
まず第1期は,1994年から「SC活用調査研究委託事業」としてSCが学校に導入された2000年までである。文献数は34件(16.5%)あり,教師のSC導入に対する不安や抵抗,SCの専門性への期待が明らかにされた(e.g.,伊藤,2000; 伊藤・中村,1998)。これは,心理臨床という新しい専門性を持ったSCの導入に伴う,教師の不安や期待を反映するものであると考えられた。
第2期は,「SC活用事業補助」として事業が大幅に拡大された2001-2007年である。文献数も88件(42.7%)と大幅に増え,協働上の課題として,SCの勤務体制による時間的な制限や,SCの守秘義務による教師とSCの情報共有の困難さ,SCの役割の明確化が指摘された(e.g., 荒木・中澤,2007)。SCの活動が徐々に定着したことで,具体的な課題が明らかになった時期であった。
第3期は,学校にSSWが導入される等,支援体制が見直された2008-2014年であり,文献数は84件(40.7%)であった。この時期は,第2期に指摘された協働上の様々な課題が引き続き指摘され(e.g., 江村,2011),加えて,SCに対し,学校の特性に対する理解不足や,問題解決力の個人差が指摘される等(小林,2008),厳しい評価がなされた。
さらに,第1期から第3期にかけて,教師とSCの相互理解の必要性が繰り返し指摘されており,教師とSCで相互理解を図ることが最重要であると考えられた。
※本研究は,2014年度に鹿児島純心女子大学に提出した卒業論文の一部を加筆・修正したものです。