[PG81] 小学生の学級コミュニティ感覚と社会性の関連
学級開きから半年間の縦断的調査
キーワード:学級経営, 学級コミュニティ感覚, 社会性
問題と目的
生活環境の変化等により,子どもたちの社会性育成のために学校教育が果たす役割は,ますます大きくなってきている。中でも,学級の状態と個人の成長には強い関連があるため,所属する学級がどのような集団であるかということは,人とのかかわりの中でさまざまな力を伸ばしていく子どもたちにとって大変重要であると考える。そこで本研究では,学級が公共の社会的性質をもった「コミュニティ」として機能することが,一人ひとりの社会性育成に有効であると考え,学級コミュニティ感覚と社会性,および教師の指導行動の関連について調査・検討をおこなった。
方 法
調査協力者 X市内の公立A小学校4年生から6年生の468名の児童と各学級担任13名。
調査内容 3種類の質問紙調査。児童の学級コミュニティ感覚と社会性の測定には「学級コミュニティ感覚尺度」(本研究の予備調査で作成)「社会性尺度」(瀧口ら,2014)を用いた。教師の指導行動の測定には「指導行動尺度」(弓削,2012)を用いた。児童用質問紙は4件法,教師用質問紙は5件法で回答を求めた。
調査時期 児童への調査は2015年4月,7月,10月の3回。教師への調査は2015年4月と10月の2回。
結果と考察
(1) 各尺度の分析結果
学級コミュニティ感覚尺度と社会性尺度の因子分析(主因子法,プロマックス回転)を4月,7月,10月データをまとめておこなった。その結果,学級コミュニティ感覚尺度では3因子(「所属感」「相互理解」「協調」)が抽出され,α係数は各因子とも.70以上と,信頼性も確認された。
社会性尺度では,先行研究とほぼ同じ因子構造の2因子(「機能面」「情緒面」)が抽出され,各因子ともα係数は.70以上を示し,信頼性が確認された。教師の指導行動尺度については回答者の人数が少ないため因子分析を実施せず,先行研究で示された下位尺度(「ひきあげる機能」「養う機能」)を構成する項目によるα係数を算出した結果,4月と10月のいずれにおいてもα>.70と,信頼性が確認された。
(2) 学級コミュニティ感覚と社会性および教師の指導行動の関連(Figure 1)
学級コミュニティ感覚は,個人の社会性に対して正の影響を与え,教師の「ひきあげる機能」と「養う機能」の2つの指導行動が,児童の学級コミュニティ感覚に対して正の影響を与える,という仮説に基づいてモデルを作成し,共分散構造分析により検証をおこなった。その結果,4月の学級コミュニティ感覚と4月の社会性の間に高い相関関係が見られ,7月,10月ともに,学級コミュニティ感覚は同時期内の社会性に正の影響を及ぼしていた。一人ひとりの居場所があり,理解し合いながら,ともに学級をつくっていこうとする集団の雰囲気が,子どもたちの役割意識や情緒的な結びつきを強め,積極的なかかわりをうながしていくと推測される。また,潜在変数「学級コミュニティ感覚」に対して,3つの観測変数のうち「所属感」が最も大きな正の影響を及ぼしていた。子どもたちが学級コミュニティ感覚をもつためには,新しい集団に対する所属感を得ることが重要であると考えられる。
また,4月の学級コミュニティ感覚は,その後の学級に影響を及ぼしており,4月の学級経営の重要性が示唆された。さらに7月の社会性から10月の学級コミュニティ感覚に対して正のパスが示され,学級に愛着をもち,協力して活動することを楽しむ一人ひとりの姿は,学級全体に良い影響を与え,集団の自治的な雰囲気を高めると考えられる。以上のことから,学級コミュニティ感覚は社会性に対して正の影響を与えるとした本研究の仮説は支持されたと考える。
また,10月の「ひきあげる機能」から10月の学級コミュニティ感覚に有意な正のパスが示され,この機能を含む教師の指導行動が学級のコミュニティ化に有効であるとする本研究の仮説は一部支持されたと考える。
生活環境の変化等により,子どもたちの社会性育成のために学校教育が果たす役割は,ますます大きくなってきている。中でも,学級の状態と個人の成長には強い関連があるため,所属する学級がどのような集団であるかということは,人とのかかわりの中でさまざまな力を伸ばしていく子どもたちにとって大変重要であると考える。そこで本研究では,学級が公共の社会的性質をもった「コミュニティ」として機能することが,一人ひとりの社会性育成に有効であると考え,学級コミュニティ感覚と社会性,および教師の指導行動の関連について調査・検討をおこなった。
方 法
調査協力者 X市内の公立A小学校4年生から6年生の468名の児童と各学級担任13名。
調査内容 3種類の質問紙調査。児童の学級コミュニティ感覚と社会性の測定には「学級コミュニティ感覚尺度」(本研究の予備調査で作成)「社会性尺度」(瀧口ら,2014)を用いた。教師の指導行動の測定には「指導行動尺度」(弓削,2012)を用いた。児童用質問紙は4件法,教師用質問紙は5件法で回答を求めた。
調査時期 児童への調査は2015年4月,7月,10月の3回。教師への調査は2015年4月と10月の2回。
結果と考察
(1) 各尺度の分析結果
学級コミュニティ感覚尺度と社会性尺度の因子分析(主因子法,プロマックス回転)を4月,7月,10月データをまとめておこなった。その結果,学級コミュニティ感覚尺度では3因子(「所属感」「相互理解」「協調」)が抽出され,α係数は各因子とも.70以上と,信頼性も確認された。
社会性尺度では,先行研究とほぼ同じ因子構造の2因子(「機能面」「情緒面」)が抽出され,各因子ともα係数は.70以上を示し,信頼性が確認された。教師の指導行動尺度については回答者の人数が少ないため因子分析を実施せず,先行研究で示された下位尺度(「ひきあげる機能」「養う機能」)を構成する項目によるα係数を算出した結果,4月と10月のいずれにおいてもα>.70と,信頼性が確認された。
(2) 学級コミュニティ感覚と社会性および教師の指導行動の関連(Figure 1)
学級コミュニティ感覚は,個人の社会性に対して正の影響を与え,教師の「ひきあげる機能」と「養う機能」の2つの指導行動が,児童の学級コミュニティ感覚に対して正の影響を与える,という仮説に基づいてモデルを作成し,共分散構造分析により検証をおこなった。その結果,4月の学級コミュニティ感覚と4月の社会性の間に高い相関関係が見られ,7月,10月ともに,学級コミュニティ感覚は同時期内の社会性に正の影響を及ぼしていた。一人ひとりの居場所があり,理解し合いながら,ともに学級をつくっていこうとする集団の雰囲気が,子どもたちの役割意識や情緒的な結びつきを強め,積極的なかかわりをうながしていくと推測される。また,潜在変数「学級コミュニティ感覚」に対して,3つの観測変数のうち「所属感」が最も大きな正の影響を及ぼしていた。子どもたちが学級コミュニティ感覚をもつためには,新しい集団に対する所属感を得ることが重要であると考えられる。
また,4月の学級コミュニティ感覚は,その後の学級に影響を及ぼしており,4月の学級経営の重要性が示唆された。さらに7月の社会性から10月の学級コミュニティ感覚に対して正のパスが示され,学級に愛着をもち,協力して活動することを楽しむ一人ひとりの姿は,学級全体に良い影響を与え,集団の自治的な雰囲気を高めると考えられる。以上のことから,学級コミュニティ感覚は社会性に対して正の影響を与えるとした本研究の仮説は支持されたと考える。
また,10月の「ひきあげる機能」から10月の学級コミュニティ感覚に有意な正のパスが示され,この機能を含む教師の指導行動が学級のコミュニティ化に有効であるとする本研究の仮説は一部支持されたと考える。