[PH05] 大学生における気遣いと友人関係疲労感との関連
友人関係満足度への影響に着目して
Keywords:気遣い, 友人関係疲労感, 友人関係満足度
問題と目的
青年にとって,友人関係は非常に重要度の高い関係であり,悩むことも多い。現代青年の友人関係は,心理的距離を一定に保ち,自己開示を行ったり,気遣いをする傾向が多くみられる一方で,本音で付き合いたいという気持ちは強く,その中でジレンマが生じている(白井,2008)。相手の顔色を伺いつつ,心理的距離を測り,お互いに配慮しながら微妙なバランスで友人関係を保とうとする。しかし,「もっと本音で付き合いたい」という気持ちとのジレンマの中で,疲労感が生じ,それによって友人関係満足度も低下すると推察される。そこで本研究では,気遣いと友人関係において生じる疲労感(以下,友人関係疲労感)の関連について検討し,さらに友人関係満足度に及ぼす影響を検討することを目的とする。
方 法
調査対象者 東京都内の大学生180名(男性73名,女性107名;平均年齢20.5歳,SD 1.2歳)を対象者とした。
調査時期 2015年12月に調査を実施した。
調査内容 ①気遣い尺度(満野・今城,2013):「援助的気遣い」,「抑制的気遣い」の2下位尺度23項目を使用した(7件法)。②大学に入ってから知り合った中で最も親密だと思う同性の学生を友人として想起させた上で,その友人との交友関係(知り合い・友人・親友),交友期間,親密度(1~10)を記入してもらった。③友人関係満足度尺度:髙坂(2010)の8項目を使用した(5件法)。④友人関係疲労感項目:事前調査の自由記述をもとに30項目を作成し,各項目に対し,項目内容が生じる頻度(0~3)と疲労度(0~3)を尋ね,その積を疲労感として使用した。
結果と考察
友人関係疲労感の因子分析 友人関係疲労感30項目について,最尤法・promax回転による因子分析を行い,「友人との不明瞭な距離感」,「友人の不愉快な振る舞い」,「友人への気がかり」の3因子を抽出した。それぞれに高い負荷量を示した項目の平均を算出し,各下位尺度得点とした。
気遣いと友人関係疲労感,友人関係満足度との関連 気遣いが友人関係疲労感を媒介とし,友人関係満足度に影響するというモデルを検討するために,男女別の多母集団共分散構造分析を行った(Figure 1)。
男性は援助的気遣いから友人関係満足度に正の影響(.49),「距離感」から友人関係満足度に負の影響(-.39)がみられた。これらから,男性の友人関係疲労感は気遣いという特性に影響を受けないことが明らかになった。
女性では,援助的気遣いから友人関係満足度に正の影響(.29),「距離感」に負の影響(-.20)がみられた。また抑制的気遣いから「距離感」(.31),「振る舞い」(.30),「気がかり」(.24)に正の影響がみられた。さらに,「距離感」から友人関係満足度に負の影響(-.60)がみられた。これらから援助的気遣いが女性にとって距離感に関する疲労感を下げ,友人関係を良い方向へ促進させることが示された。一方,抑制的気遣いは,お互いにとって丁度いい心理的距離感が掴めず,疲労感を生み出していることが明らかにされた。今後,生じた疲労感をどのように低めることができるか,さらに検討していく必要がある。
青年にとって,友人関係は非常に重要度の高い関係であり,悩むことも多い。現代青年の友人関係は,心理的距離を一定に保ち,自己開示を行ったり,気遣いをする傾向が多くみられる一方で,本音で付き合いたいという気持ちは強く,その中でジレンマが生じている(白井,2008)。相手の顔色を伺いつつ,心理的距離を測り,お互いに配慮しながら微妙なバランスで友人関係を保とうとする。しかし,「もっと本音で付き合いたい」という気持ちとのジレンマの中で,疲労感が生じ,それによって友人関係満足度も低下すると推察される。そこで本研究では,気遣いと友人関係において生じる疲労感(以下,友人関係疲労感)の関連について検討し,さらに友人関係満足度に及ぼす影響を検討することを目的とする。
方 法
調査対象者 東京都内の大学生180名(男性73名,女性107名;平均年齢20.5歳,SD 1.2歳)を対象者とした。
調査時期 2015年12月に調査を実施した。
調査内容 ①気遣い尺度(満野・今城,2013):「援助的気遣い」,「抑制的気遣い」の2下位尺度23項目を使用した(7件法)。②大学に入ってから知り合った中で最も親密だと思う同性の学生を友人として想起させた上で,その友人との交友関係(知り合い・友人・親友),交友期間,親密度(1~10)を記入してもらった。③友人関係満足度尺度:髙坂(2010)の8項目を使用した(5件法)。④友人関係疲労感項目:事前調査の自由記述をもとに30項目を作成し,各項目に対し,項目内容が生じる頻度(0~3)と疲労度(0~3)を尋ね,その積を疲労感として使用した。
結果と考察
友人関係疲労感の因子分析 友人関係疲労感30項目について,最尤法・promax回転による因子分析を行い,「友人との不明瞭な距離感」,「友人の不愉快な振る舞い」,「友人への気がかり」の3因子を抽出した。それぞれに高い負荷量を示した項目の平均を算出し,各下位尺度得点とした。
気遣いと友人関係疲労感,友人関係満足度との関連 気遣いが友人関係疲労感を媒介とし,友人関係満足度に影響するというモデルを検討するために,男女別の多母集団共分散構造分析を行った(Figure 1)。
男性は援助的気遣いから友人関係満足度に正の影響(.49),「距離感」から友人関係満足度に負の影響(-.39)がみられた。これらから,男性の友人関係疲労感は気遣いという特性に影響を受けないことが明らかになった。
女性では,援助的気遣いから友人関係満足度に正の影響(.29),「距離感」に負の影響(-.20)がみられた。また抑制的気遣いから「距離感」(.31),「振る舞い」(.30),「気がかり」(.24)に正の影響がみられた。さらに,「距離感」から友人関係満足度に負の影響(-.60)がみられた。これらから援助的気遣いが女性にとって距離感に関する疲労感を下げ,友人関係を良い方向へ促進させることが示された。一方,抑制的気遣いは,お互いにとって丁度いい心理的距離感が掴めず,疲労感を生み出していることが明らかにされた。今後,生じた疲労感をどのように低めることができるか,さらに検討していく必要がある。