[PH06] 子の離家が妻の夫婦関係認知に与える心理的影響について
Keywords:結婚コミットメント, 夫婦関係満足度, 子の離家
問題と目的
本研究では,子の離家(子が親世帯から離れて暮らすこと)が中年期夫婦の関係性や,個の適応に与える心理的影響を妻の認知に着目し検討することを目的とする。また,夫婦の関係性を検討する上で,結婚コミットメントという,関係維持における基本的態度を背景にある要因として用いる。
方 法
1.調査期間 2015年12月中旬から下旬。
2. 調査対象者 大学生をもつ夫婦248名(妻130名,夫118名)。平均年齢は妻51.55歳(SD=4.01),夫53.76歳(SD=4.75)。なお,夫のデータはクラスタ分析のみに使用。3.調査内容 フェイスシート,結婚コミットメント(伊藤・相良,2015),夫婦関係満足度,夫婦の共同行動(伊藤・相良,2015),子の離家に関する項目(子の離家前後での夫婦関係の変化の認知,夫婦の会話量・共有時間の増減),心理的well-being(西田,2000)。
結果と考察
子との居住状態を「同居群」,離家経験ありかつ同居子ありの「離家途中群」,子全員が離家の「離家群」とした。また,結婚コミットメントにより対象者を分類するため階層的クラスタ分析(Ward法)を行い3クラスタを抽出した。クラスタⅠは結婚生活を継続する上で人格的コミットメントを重視する「人格高群」,クラスタⅡは人格的,諦め・機能的,規範的の全てのコミットメントを重視する「全般高群」,クラスタⅢは人格的コミットメントが低く,諦め・機能的,規範的コミットメントに頼る「機能高群」と命名した。
以上を用いて,子の居住形態と結婚コミットメントを独立変数とし,夫婦関係に関する各項目と心理的well-beingに対し2要因の分散分析を行った(Table 1)。
まず,夫婦の会話量の増減,共有時間の増減,夫婦関係の変化の認知に居住形態の有意な主効果が見られ,いずれも離家群が離家途中群より各得点が高かった。子全員の離家により,夫婦の会話量,共有時間が増加したことで,夫婦関係の変化をより高く認知するようになったといえる。
つぎに,夫婦関係満足度,共同行動,心理的well-beingの環境制御力に交互作用が見られ,それぞれについて単純主効果検定を行った。夫婦関係満足度では,機能高群で離家群が同居群より得点が高く,子の離家による夫婦関係へのポジティブな影響が示唆された。共同行動では,同居群と離家途中群で機能高群が他の2群より得点が低かったが,離家群では有意差が見られず,子全員が離家すると共同行動に差異が見られなくなった。環境制御力では,機能高群で離家途中群,離家群が同居群より得点が高く,子が離家し手を離れることで,自分自身の能力で環境に働きかけ,創造性を発揮する機会や余裕が増え,環境制御力が高まったと考えられる。
以上より,子全員が離家すると,夫婦関係の行動面に変化が生じるとともに関係の変化も認知されることが示された。その結果,夫婦関係や心理的適応にポジティブな影響を与えると考えられ,子の離家が夫婦関係を変化させる契機となることが示唆された。
本研究では,子の離家(子が親世帯から離れて暮らすこと)が中年期夫婦の関係性や,個の適応に与える心理的影響を妻の認知に着目し検討することを目的とする。また,夫婦の関係性を検討する上で,結婚コミットメントという,関係維持における基本的態度を背景にある要因として用いる。
方 法
1.調査期間 2015年12月中旬から下旬。
2. 調査対象者 大学生をもつ夫婦248名(妻130名,夫118名)。平均年齢は妻51.55歳(SD=4.01),夫53.76歳(SD=4.75)。なお,夫のデータはクラスタ分析のみに使用。3.調査内容 フェイスシート,結婚コミットメント(伊藤・相良,2015),夫婦関係満足度,夫婦の共同行動(伊藤・相良,2015),子の離家に関する項目(子の離家前後での夫婦関係の変化の認知,夫婦の会話量・共有時間の増減),心理的well-being(西田,2000)。
結果と考察
子との居住状態を「同居群」,離家経験ありかつ同居子ありの「離家途中群」,子全員が離家の「離家群」とした。また,結婚コミットメントにより対象者を分類するため階層的クラスタ分析(Ward法)を行い3クラスタを抽出した。クラスタⅠは結婚生活を継続する上で人格的コミットメントを重視する「人格高群」,クラスタⅡは人格的,諦め・機能的,規範的の全てのコミットメントを重視する「全般高群」,クラスタⅢは人格的コミットメントが低く,諦め・機能的,規範的コミットメントに頼る「機能高群」と命名した。
以上を用いて,子の居住形態と結婚コミットメントを独立変数とし,夫婦関係に関する各項目と心理的well-beingに対し2要因の分散分析を行った(Table 1)。
まず,夫婦の会話量の増減,共有時間の増減,夫婦関係の変化の認知に居住形態の有意な主効果が見られ,いずれも離家群が離家途中群より各得点が高かった。子全員の離家により,夫婦の会話量,共有時間が増加したことで,夫婦関係の変化をより高く認知するようになったといえる。
つぎに,夫婦関係満足度,共同行動,心理的well-beingの環境制御力に交互作用が見られ,それぞれについて単純主効果検定を行った。夫婦関係満足度では,機能高群で離家群が同居群より得点が高く,子の離家による夫婦関係へのポジティブな影響が示唆された。共同行動では,同居群と離家途中群で機能高群が他の2群より得点が低かったが,離家群では有意差が見られず,子全員が離家すると共同行動に差異が見られなくなった。環境制御力では,機能高群で離家途中群,離家群が同居群より得点が高く,子が離家し手を離れることで,自分自身の能力で環境に働きかけ,創造性を発揮する機会や余裕が増え,環境制御力が高まったと考えられる。
以上より,子全員が離家すると,夫婦関係の行動面に変化が生じるとともに関係の変化も認知されることが示された。その結果,夫婦関係や心理的適応にポジティブな影響を与えると考えられ,子の離家が夫婦関係を変化させる契機となることが示唆された。