The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PH11] 母親の養育態度の変化

中年期母親の子育ての振り返りから

吉田祐由子 (慶應義塾大学)

Keywords:子育て, 母親, 養育態度

目   的
 子育ては,親と子の相互作用によってなされていくものである。子どもの成長に伴い,そこで求められる母親としての役割も変化していく。本研究では子育てを通しての母親の養育態度の変化を検討する。
 親による子どもへの『自律性支援』は子どもの有能さへの欲求や,関係性の欲求を満たす(Deci & Ryan, 2000)。このことは親子関係の改善につながる。しかしその際,親もまた子どもの『自律性支援』に対し『取入れ的調整』『同一化的調整』『統合的調整』の段階を踏んでいくことが予測される。
この面からも母親の養育態度の変化を検討する。
方   法
調査対象者:子育て経験のある女性,20代から30代までの子どもを持つ母親10名(50~65歳:平均年齢56.2歳,SD=4.21)。養育した子どもの数(1~3人:平均2.1,SD=.07)。
調査期間:2014年10月~12月
調査方法:一人当たり,40分~100分の半構造化面接をICレコーダーに録音。
面接に先立ちPBI尺度日本版(及川,2005)により調査対象者自身が受けた母親の養育態度の質問紙調査を実施。
面接内容:子育て前に持っていた子育てモデル,子どもとの関わり方の転機となったできごと,子どもの反抗期,夫の子育てに対する姿勢など。
面接データの分析方法:木下(2005)の修正版グラウンデッド・セオリーアプローチを参考に分析。
結果と考察
 調査対象者自身の母親の養育態度のCare得点とOverprotection得点ならびに養育態度をTable 1に示す。
 母親自身の子ども時代の経験がその子育てに反映されていた。多くの母親は自分が受けた養育体験と同じような養育態度をとっていた。
 子育て開始期の母親は過保護・過干渉・困惑,思い込みに基づく養育態度など,初めての子どもでは特にプレッシャーや思い入れを抱えながら子育てに取り組んでいた。子育て開始以前の社会的評価基準では個人の努力がその結果に直接的につながっていた(一生懸命勉強すれば,成績に反映するなど)。子育てはそれ以前の自身の行動基準・評価基準が通用しない経験で,子どもに良かれと思う行動が却って子どもに,マイナスの結果となることなどが母親の戸惑いの原因となった。
 子どもの不適応行動や反抗期,家庭環境の変化(兄弟の誕生等),また母親自身による子どもの成長の自覚等をきっかけとし,母親は養育態度を変えていった。養育態度を変える際,母親への周囲のサポートは精神的なサポートと具体的なアドバイス両面から重要であった。夫である父親との関係は,単身赴任時には母親の精神的負担の増加という形でも現われていた。
 男子を持つ母親において,子どもの『自律性支援的態度』に関して,『取入れ的調整』から『同一化的調整』『統合的調整』へと最終的には変わっていった。子どもとの物理的な距離(子どもが独立し,家を出る)もまた『同一化的調整』につながっていた。その結果子どもとの関係性の良好化や母親の精神的健康の改善も示唆されていた。