[PH13] 小学校全校規模の社会的情報処理と学校適応のアセスメント
情動過程を伴った社会的情報処理への介入の事前測定として
Keywords:学校適応, 社会的情報処理, アセスメント
学校適応の問題は,あらゆる学校の喫緊の課題であり,その原因として,不適応児は他者やその場の状況のとらえ方としての社会的情報処理に誤りや歪みがあること(渡辺・戸田,2012),児童生徒の対人関係能力の低下(相川,1997)が挙げられる。本研究では,情動過程を伴った社会的情報処理モデル(Lemerise & Arsenio, 2000)に基づき,先行研究では実践されてこなかった全校規模での介入カリキュラムを開発する前段として,社会的情報処理と学校適応のアセスメント結果を報告する。
方 法
1.調査協力者
岐阜県内の小学校1校において,2015年12月下旬に質問紙調査を学級ごとで実施し,有効データが得られた382名(1年生男子32名・女子40名,2年生男子38名・女子27名,3年生男子50名・女子38名,4年生男子42名・女子30名,5年生男子52名・女子33名)を分析対象にした。
2.社会的情報処理に関わるアセスメント
(1)ステップ①②手がかりの符号化・解釈:24枚の表情写真に該当する表情語を選択(Sato, 2002; 6選択肢)(2)ステップ①②意図-手がかり:加害者の意図が異なる4種類の仮想挑発場面を3こま漫画で提示し,加害者の意図を回答(濱口,2004; 正誤形式)(3)ステップ①②敵意帰属バイアス:被害者の背後の視点から描かれた3こま漫画で,同性の仲間による「曖昧な」挑発場面を提示し,友だちの加害行為の意図性を回答(濱口,2004; 4項目4件法)(4)ステップ③目標の明確化:同性の仲間による「曖昧な」挑発場面と敵意帰属バイアスの質問項目を回答(濱口,2004; 8項目4件法)(5)ステップ④反応構成:被害者と加害者を1こまの漫画で提示し,吹き出しに台詞を最大5つまで記述(濱口,2004)(6)ステップ⑤反応決定:同性の仲間による「曖昧な」挑発場面と4種類の応答的行動を示し,「もしあなたが~したら,どうなるでしょう」と尋ね,友好的,主張的目標の実現性を回答(濱口,2004; 4件法)
3.学校適応に関わるアセスメント
(1)児童用情動知能尺度(豊田・山本, 2011; 情動利用除く13項目4件法)(2)YSR(倉本他,1999; 攻撃性19項目4件法)(3)反応的・道具的攻撃性尺度(濱口,2002; 敵意除く21項目4件法)
結果と考察
学年を独立変数,社会的情報処理指標の下位尺度を従属変数とした分散分析を行った。有意差が見られたものは,Table 1の通りである。表情認知の嫌悪・恐怖については,どの学年の正答数も低かった。1年生は幸福・怒り・恐怖,2年生は恐怖について他学年よりも正答数が低かった。社会的情報処理の各指標を独立変数,学校適応の各下位尺度を従属変数とした重回帰分析を実施した。有意な影響が見られたものは,Table 2の通りである。
本年度(2016年)の実践では,他学年に比べ問題のある側面や適応指標と関連の強い側面に介入する。2年ではステップ①②表情認知,敵意帰属バイアス,ステップ④反応構成,3年ではステップ①②表情認知,ステップ④反応構成,ステップ⑤反応決定,4年ではステップ①②表情認知,意図-手がかり,ステップ④反応構成,ステップ⑤反応決定,5年ではステップ①②表情認知,敵意帰属バイアス,意図-手がかり,ステップ④⑤反応決定,6年ではステップ①②表情認知,ステップ④反応構成,ステップ⑤反応決定を実践する。全学年で感情コントロールへの介入を実践する。
方 法
1.調査協力者
岐阜県内の小学校1校において,2015年12月下旬に質問紙調査を学級ごとで実施し,有効データが得られた382名(1年生男子32名・女子40名,2年生男子38名・女子27名,3年生男子50名・女子38名,4年生男子42名・女子30名,5年生男子52名・女子33名)を分析対象にした。
2.社会的情報処理に関わるアセスメント
(1)ステップ①②手がかりの符号化・解釈:24枚の表情写真に該当する表情語を選択(Sato, 2002; 6選択肢)(2)ステップ①②意図-手がかり:加害者の意図が異なる4種類の仮想挑発場面を3こま漫画で提示し,加害者の意図を回答(濱口,2004; 正誤形式)(3)ステップ①②敵意帰属バイアス:被害者の背後の視点から描かれた3こま漫画で,同性の仲間による「曖昧な」挑発場面を提示し,友だちの加害行為の意図性を回答(濱口,2004; 4項目4件法)(4)ステップ③目標の明確化:同性の仲間による「曖昧な」挑発場面と敵意帰属バイアスの質問項目を回答(濱口,2004; 8項目4件法)(5)ステップ④反応構成:被害者と加害者を1こまの漫画で提示し,吹き出しに台詞を最大5つまで記述(濱口,2004)(6)ステップ⑤反応決定:同性の仲間による「曖昧な」挑発場面と4種類の応答的行動を示し,「もしあなたが~したら,どうなるでしょう」と尋ね,友好的,主張的目標の実現性を回答(濱口,2004; 4件法)
3.学校適応に関わるアセスメント
(1)児童用情動知能尺度(豊田・山本, 2011; 情動利用除く13項目4件法)(2)YSR(倉本他,1999; 攻撃性19項目4件法)(3)反応的・道具的攻撃性尺度(濱口,2002; 敵意除く21項目4件法)
結果と考察
学年を独立変数,社会的情報処理指標の下位尺度を従属変数とした分散分析を行った。有意差が見られたものは,Table 1の通りである。表情認知の嫌悪・恐怖については,どの学年の正答数も低かった。1年生は幸福・怒り・恐怖,2年生は恐怖について他学年よりも正答数が低かった。社会的情報処理の各指標を独立変数,学校適応の各下位尺度を従属変数とした重回帰分析を実施した。有意な影響が見られたものは,Table 2の通りである。
本年度(2016年)の実践では,他学年に比べ問題のある側面や適応指標と関連の強い側面に介入する。2年ではステップ①②表情認知,敵意帰属バイアス,ステップ④反応構成,3年ではステップ①②表情認知,ステップ④反応構成,ステップ⑤反応決定,4年ではステップ①②表情認知,意図-手がかり,ステップ④反応構成,ステップ⑤反応決定,5年ではステップ①②表情認知,敵意帰属バイアス,意図-手がかり,ステップ④⑤反応決定,6年ではステップ①②表情認知,ステップ④反応構成,ステップ⑤反応決定を実践する。全学年で感情コントロールへの介入を実践する。