[PH14] 習い事が幼児の問題行動の抑制に与える影響
自己制御機能・向社会性の関連
Keywords:習い事, 問題行動, 自己制御機能
研究の背景・目的
近年,小学生の暴力行為の低年齢化が問題になっている(例えば,文部科学省,2014)。問題行動は,幼児期にすでにその傾向が表れている場合が多く(菅原・北村・戸田・島・佐藤・向井,1999),早い段階での介入が望まれている。先行研究より,問題行動を抑制する能力として,自己制御機能と向社会性が明らかになっている。自己制御機能は自身を調節し自身のある側面を変える能力であり(Joseph, Baumeister, & Tice, 2009),向社会性は,相手の気持ちを理解し,自分よりも相手を優先させようとする心情である(首藤,2006)。海外で習い事に該当する課外活動(extra curricular activities)への参加は,問題行動の抑制や社会的スキルに関連することが示されているが(例えば,Simoncini & Caltabiono, 2012),日本において,習い事と問題行動の関連を示した研究は見当たらない。
本研究の目的は,習い事,自己制御機能,向社会性,問題行動の関連を示すことで,習い事が幼児の問題行動を抑制するメカニズムを明らかにすることである。
方 法
対象:9都道県の保育園,認定こども園の年中・年長児624人の保護者
調査内容:平成27年10月に無記名式質問紙調査を行った。調査内容は,幼児が行っている習い事(数,内容,頻度等),幼児の自己制御機能尺度(大内・長尾・櫻井,2008),問題行動・向社会性を測定する,Strengths and Difficulties Questionnaire(Goodman, 1997)である。その他,習い事以外に各変数に影響を与えることが予想される,親の養育態度,家庭の経済状況,親の最終学歴,きょうだい数についても回答を求めた。
結果・考察
分析には,親の最終学歴,家庭の経済状況,親の養育態度,きょうだい数,所属(年中年長)を統制した標準化されていない残差得点を用いた。
習い事1回あたりの時間,1か月あたりの頻度,習い事を行っている期間の積から習い事の合計時間を算出し,習い事の合計時間から自己制御機能と向社会性,自己制御機能から向社会性,自己制御機能と向社会性から問題行動へのパスを想定した共分散構造モデルを作成した。最終的なパス解析の結果をFigure 1に示す。CFI=1.000,RMSEA=.000でモデルの適合性はよかった。
習い事の合計時間は,自己制御機能を媒介し問題行動を抑制する,あるいは習い事の合計時間が自己制御機能,向社会性を媒介し問題行動を抑制するというモデルを描くことができ,習い事を続けることで,自己制御機能が高まり(向社会性が高まり)問題行動の抑制に繋がるというメカニズムが明らかになった。Baumeister & Tierney(2012)は,日常的に行っている行動を変えることで,自己コントロールが鍛えられることを示しており,習い事に決められた頻度で通ったり練習したりすることで自己コントロール,自己制御機能が高まると考えられる。また,習い事に関わらず,定期的な勉強や運動を続けることで,最終的に問題行動が抑制されることが期待される。
近年,小学生の暴力行為の低年齢化が問題になっている(例えば,文部科学省,2014)。問題行動は,幼児期にすでにその傾向が表れている場合が多く(菅原・北村・戸田・島・佐藤・向井,1999),早い段階での介入が望まれている。先行研究より,問題行動を抑制する能力として,自己制御機能と向社会性が明らかになっている。自己制御機能は自身を調節し自身のある側面を変える能力であり(Joseph, Baumeister, & Tice, 2009),向社会性は,相手の気持ちを理解し,自分よりも相手を優先させようとする心情である(首藤,2006)。海外で習い事に該当する課外活動(extra curricular activities)への参加は,問題行動の抑制や社会的スキルに関連することが示されているが(例えば,Simoncini & Caltabiono, 2012),日本において,習い事と問題行動の関連を示した研究は見当たらない。
本研究の目的は,習い事,自己制御機能,向社会性,問題行動の関連を示すことで,習い事が幼児の問題行動を抑制するメカニズムを明らかにすることである。
方 法
対象:9都道県の保育園,認定こども園の年中・年長児624人の保護者
調査内容:平成27年10月に無記名式質問紙調査を行った。調査内容は,幼児が行っている習い事(数,内容,頻度等),幼児の自己制御機能尺度(大内・長尾・櫻井,2008),問題行動・向社会性を測定する,Strengths and Difficulties Questionnaire(Goodman, 1997)である。その他,習い事以外に各変数に影響を与えることが予想される,親の養育態度,家庭の経済状況,親の最終学歴,きょうだい数についても回答を求めた。
結果・考察
分析には,親の最終学歴,家庭の経済状況,親の養育態度,きょうだい数,所属(年中年長)を統制した標準化されていない残差得点を用いた。
習い事1回あたりの時間,1か月あたりの頻度,習い事を行っている期間の積から習い事の合計時間を算出し,習い事の合計時間から自己制御機能と向社会性,自己制御機能から向社会性,自己制御機能と向社会性から問題行動へのパスを想定した共分散構造モデルを作成した。最終的なパス解析の結果をFigure 1に示す。CFI=1.000,RMSEA=.000でモデルの適合性はよかった。
習い事の合計時間は,自己制御機能を媒介し問題行動を抑制する,あるいは習い事の合計時間が自己制御機能,向社会性を媒介し問題行動を抑制するというモデルを描くことができ,習い事を続けることで,自己制御機能が高まり(向社会性が高まり)問題行動の抑制に繋がるというメカニズムが明らかになった。Baumeister & Tierney(2012)は,日常的に行っている行動を変えることで,自己コントロールが鍛えられることを示しており,習い事に決められた頻度で通ったり練習したりすることで自己コントロール,自己制御機能が高まると考えられる。また,習い事に関わらず,定期的な勉強や運動を続けることで,最終的に問題行動が抑制されることが期待される。