The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PH16] 大学生の養育者に対する満足感と自立意識の関連

逢坂うらら (北海道大学)

Keywords:自立

問題と目的
 養育者と青年期の若者の関係を検討することは,青年期の若者の自立意識を見るための側面の一つとして重要であると考えられている(仲野・桜本,2005)。にも関わらず,青年期の若者と養育者の関係に焦点を当て,①養育者との関係が青年の自立にどのように作用しているのか,②自立の意識が養育者との関係にどのような変化を及ぼしているかを検討している研究は未だに少ない。
 そこで,本研究では青年期に該当する大学生,そして養育者に対する「満足感」に焦点を当てた。彼らと養育者の間の関係がいかなるものかを検討するに当たり,青年期の若者の個々のbackground,そして青年期の若者が養育者に対してどの程度満足感を抱いているかを調査し,自立の意識との関連を研究することで,青年期の若者の自立意識,養育者との関係の意味について再考することを本研究では目的とする。
方   法
調査対協力者:国公立大学に在籍する大学生530名(大学院生を含む)。
調査時期と手続き:2015年10月から11月に各大学の講義の際に質問紙を配布し,同講義時間内に回収した。
質問項目:①デモグラフィック変数(性別,年齢,出生順位),②入学形態(現役,浪人),③生活形態(一人暮らし,実家通学)③養育者に対する満足感:20項目(例「第一養育者に満足しているか」),④自立意識:20項目(例「自分は自立していると思う」)
 なお,③,④は5件法(1:「全くそう思わない」~5:「とてもそう思う」)で求めた。
結果と考察
 養育者に対する満足感尺度及び自立意識尺度それぞれ20項目について探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行った。その結果,養育者に対する満足感尺度では「満足」,「存在受容」の2因子構造が得られ,自立意識尺度では「社会的自立」,「自尊感情」,「精神的自立」の3因子項目構造が得られた。これらの因子に性別・学年・入学形態・生活形態・出生順序がどのように関連しているかを検討するため,2要因の分散分析を行った。
 その結果,性別と入学形態によって養育者への満足感または自立意識に有意な差がみられた。「社会的自立」因子に対しては,入学形態の有意傾向な主効果が見られた(F(1,502)=2.75,p<.10)。多重比較によると浪人のほうが得点が高かった。また,「自尊感情」因子においても入学形態の有意傾向な主効果が見られた(F(1,502)=3.11,p<.10)。多重比較によると浪人のほうが現役よりも得点が有意に高かった。性別においては,「満足」(F(1,502)=15.5,p<.01),「存在受容」(F(1,502)=11.8,p<.01),「精神的自立」(F(1,502)=6.72,p<.01)で性別の有意な主効果がみられた。多重比較によると,いずれも男子に比べ,女子のほうが得点が高かった。
 これらの結果から,自立意識の高さは養育者に対する満足感の影響を受けていることが明らかになったが,性別や学年,生活形態,出生順序など,大学生を取り巻く環境もまた影響を及ぼしていると推測された。また,養育者に対する満足感の高低によって自立の意識も変化すると推測され,養育者に対する満足感と自立意識は双方的に影響を与えていることが明らかとなった。