The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PH27] 学級規模の大小及び学級内の学力のばらつきと児童の学力との関係

小学校国語の場合

綱川貴1, 山森光陽2 (1.早稲田大学大学院, 2.国立教育政策研究所)

Keywords:学級規模

問題と目的
 学級規模縮小の効果に関しては度々議論の対象になっているが,学級規模が小さく学級内で学力のばらつきがある場合は,学級全体として学力が向上しやすいという知見がある(Mitchell et al,1989)。日本でもインクルーシブ教育システムが導入されたが,このことにより学級内の学力にはばらつきが生じやすくなると考えられる。
 本研究では,学級規模の大小と学級内の学力のばらつきの大小が児童の学力の変化に対して影響を与えるかを検討する。
方   法
対象:山形県内の平成23,24年度入学の小学生の,第2,3学年年度始(平成24年度入学)及び第3,4学年年度始(平成23年度入学)の標準学力検査による学力偏差値を連結可能匿名化された状態で入手した。平成23,24年度入学の各コーホートの分析対象学校数は109校,71校,学級数は177学級,107学級,児童数は3973人,2328人であった。
指標:各コーホートを対象に行われた第2,または第3学年年度始の検査結果(学力偏差値)を事前,翌年度始の結果を事後の学力の指標として用いた。学級内の学力のばらつきは,各学級の事前テスト結果の四分位範囲(IQR)を指標とした。学級規模は山形県教育庁提供の学級編制表を用いた。
学級の類型化:学級規模とIQRのばらつきの2要因で類型化した。学級規模は山形県の小学校の単式学級の平均規模(24人)以下を小規模,上回るものを大規模と分類した。IQRは値の大きさの順位上,中,下位各1/3ずつとして分類した。
分析:各コーホートに対し,学級ごとに事前・事後テストの学力偏差値の差得点の効果量(反復測定)を求め,学級類型ごとに統合した。
結   果
 2時点の学力偏差値の差得点の効果量を学級類型ごとに統合した結果はTable 1の通りであった。
 この結果のうち,平成23年度入学のコーホートの,小規模学級・IQR大,大規模学級・IQR小の各群のフォレストプロットはFigure 1の通りであった。
考   察
 以上の結果から,学級規模が小さく,学級内の学力のばらつきが大きい学級においては,これ以外の学級類型と比べて,1年間で全体的に学力が上がることが示された。事前・事後の学力偏差値の平均に着目すると,学力のばらつきの大きい学級では事前の学力が低いが,学級規模が小さい場合には,事前の学力のばらつきが小さい学級と同程度の学力レベルになることも示唆された。
※本研究の一部はJSPS科研費(基盤研究B)25285189の助成を受けた。