[PH34] 振り返り活動における認知プロセス
改訂版ブルームタキソノミー活用
Keywords:振り返り活動
問題と目的
変化の激しいこれからの時代において,多様化する価値観のなかで互いを尊重し,共生し合う力が求められる。その力を養う教育として道徳教育が注目されている(松下,2014)。これからの道徳教育では,学習者自身が体験から学び,自分自身で価値観や意味を構築していく必要がある。そのときに重要になるのが,振り返り活動である(Kolb,1984)。しかし,振り返り活動は浅い振り返りに留まってしまうときがあるという問題点も指摘される(宮田,2008)。よって本研究ではより深い振り返り活動を目指し,改訂版ブルームタキソノミーを用いて,児童の振り返り活動の実態を把握することを目的とする。振り返り活動の深度について,学習者のデータの分析を行っている研究は数が少ない。大きな転換点を迎えている道徳教育において,よりよい振り返り活動へとつながるように展望を開いていく。
方 法
(1) 対象 東京都内の公立小学校6年生に向け行った計4回の道徳授業を分析対象とした。各授業実践では,45分間の授業の最後5分間を振り返り活動の時間として設け,振り返りカードへの記述を求めた。
(2) 分析の単位 一文を単位とし,記述文章中の句点を区切り,これを基本的設定にした(小野寺ら,2011)。一文のなかに複数の叙述を含む文章に関しては,アイデアユニットに基づき分類した(邑本,1992)。
(3) 方法 本研究は2つの手順で行った。①宮田ら(2008)をもとに,タイプごとに抽出児童を決定する。②改訂版ブルームタキソノミーを使い,知識の次元と認知的プロセスの次元で抽出児童の記述文章を分類する(中村ら,2011)。
結 果
体験の感想を中心に記述した児童をA児,具体的な行動を中心に記述した児童をC児,その中間に位置する児童をB児とし,3タイプそれぞれに当てはまる記述を行っていた児童を抽出児として設定した。そして作成したタキソノミーテーブルをもとにこの3タイプの児童の記述の分類を行った。分類後,全体の記述に対する項目ごとの割合を算出した。抽出児のプロフィールはFigure1のようになった。A児からB児,そしてC児へと,より深い振り返りをしている児童のほうがより高度な認知の次元となる傾向を見ることができる。
考 察
抽出児はタイプごとに認知処理の段階の差が見られた。改訂版ブルームタキソノミーは,人間の複雑な認知過程をあまりにも単純に区分しているという批判もある。確かに,A児やB児のように前の過程を飛ばしている場合もあった。しかし,Figure 1から示されるように,記憶から創造へと段階をふむと考えられる。今回は少ない事例での分析であったので,今後データ数を増やし検討を重ねる必要がある。そして,この改訂版ブルームタキソノミーを活用して児童の振り返りの特徴を把握し,児童の実態にあった振り返り活動の支援へとつなげ,有用性を検証していく必要がある。
引用文献
Kolb,D.A. (1984). Experiential Learning: Exper ience as the Source of Learning and Developme nt”,Prentice Hall.
小野寺亮介・利根川明子・上淵 寿(2011).講義型授業において大学生はどのように意見を外化するか―リアクション・ペーパーの記述内容の分析を通した検討 東京学芸大学紀要,62(1),293-303.
中村和世・大和浩子・中島敦夫・吉川和生(2011).図画工作・美術家における「ブルームのタキソノミー改訂版」の活用に関する考察,学校教育実践学研究,17,71-80.
松下良平(2014).学校における道徳教育はどこへ向かうのか,指導と評価,9-11.
宮田靖志・八木田一雄・森崎龍郎・山本和利(2008).地域医療必修実習における“Sinificant Event Anolysis(SEA)を用いた振り返り”の検討,医療教育,39,153-159.
邑本俊介(1992).要約文章の多様性―要約産出 方略と要約文章の良さについての検討―,教育心理学研究,20,213-223.
変化の激しいこれからの時代において,多様化する価値観のなかで互いを尊重し,共生し合う力が求められる。その力を養う教育として道徳教育が注目されている(松下,2014)。これからの道徳教育では,学習者自身が体験から学び,自分自身で価値観や意味を構築していく必要がある。そのときに重要になるのが,振り返り活動である(Kolb,1984)。しかし,振り返り活動は浅い振り返りに留まってしまうときがあるという問題点も指摘される(宮田,2008)。よって本研究ではより深い振り返り活動を目指し,改訂版ブルームタキソノミーを用いて,児童の振り返り活動の実態を把握することを目的とする。振り返り活動の深度について,学習者のデータの分析を行っている研究は数が少ない。大きな転換点を迎えている道徳教育において,よりよい振り返り活動へとつながるように展望を開いていく。
方 法
(1) 対象 東京都内の公立小学校6年生に向け行った計4回の道徳授業を分析対象とした。各授業実践では,45分間の授業の最後5分間を振り返り活動の時間として設け,振り返りカードへの記述を求めた。
(2) 分析の単位 一文を単位とし,記述文章中の句点を区切り,これを基本的設定にした(小野寺ら,2011)。一文のなかに複数の叙述を含む文章に関しては,アイデアユニットに基づき分類した(邑本,1992)。
(3) 方法 本研究は2つの手順で行った。①宮田ら(2008)をもとに,タイプごとに抽出児童を決定する。②改訂版ブルームタキソノミーを使い,知識の次元と認知的プロセスの次元で抽出児童の記述文章を分類する(中村ら,2011)。
結 果
体験の感想を中心に記述した児童をA児,具体的な行動を中心に記述した児童をC児,その中間に位置する児童をB児とし,3タイプそれぞれに当てはまる記述を行っていた児童を抽出児として設定した。そして作成したタキソノミーテーブルをもとにこの3タイプの児童の記述の分類を行った。分類後,全体の記述に対する項目ごとの割合を算出した。抽出児のプロフィールはFigure1のようになった。A児からB児,そしてC児へと,より深い振り返りをしている児童のほうがより高度な認知の次元となる傾向を見ることができる。
考 察
抽出児はタイプごとに認知処理の段階の差が見られた。改訂版ブルームタキソノミーは,人間の複雑な認知過程をあまりにも単純に区分しているという批判もある。確かに,A児やB児のように前の過程を飛ばしている場合もあった。しかし,Figure 1から示されるように,記憶から創造へと段階をふむと考えられる。今回は少ない事例での分析であったので,今後データ数を増やし検討を重ねる必要がある。そして,この改訂版ブルームタキソノミーを活用して児童の振り返りの特徴を把握し,児童の実態にあった振り返り活動の支援へとつなげ,有用性を検証していく必要がある。
引用文献
Kolb,D.A. (1984). Experiential Learning: Exper ience as the Source of Learning and Developme nt”,Prentice Hall.
小野寺亮介・利根川明子・上淵 寿(2011).講義型授業において大学生はどのように意見を外化するか―リアクション・ペーパーの記述内容の分析を通した検討 東京学芸大学紀要,62(1),293-303.
中村和世・大和浩子・中島敦夫・吉川和生(2011).図画工作・美術家における「ブルームのタキソノミー改訂版」の活用に関する考察,学校教育実践学研究,17,71-80.
松下良平(2014).学校における道徳教育はどこへ向かうのか,指導と評価,9-11.
宮田靖志・八木田一雄・森崎龍郎・山本和利(2008).地域医療必修実習における“Sinificant Event Anolysis(SEA)を用いた振り返り”の検討,医療教育,39,153-159.
邑本俊介(1992).要約文章の多様性―要約産出 方略と要約文章の良さについての検討―,教育心理学研究,20,213-223.