[PH38] ライバル関係の有無と学習活動・学習充実感の関連
キーワード:ライバル関係
問題と目的
学校場面で,学生は多様な関係の他者と学習活動を共にしている。例えば,岡田(2008)は友人と学習活動の関連を検討した。しかし,学習活動の対象として,学業面におけるライバルに注目した研究はない。そこで,本研究は,ライバル関係と学習活動・学習充実感の関連を探索的に検討することを目的とした。
ライバルに関する研究には,客観的にライバルを定義するものと,本人が主観的に認知したライバルを扱うものがある(太田,2001)。本研究では,実際の学校場面に即したライバル関係を捉えるため,主観的に認知したライバルを扱った。ライバル関係が友人関係と異なるとすると,共有される学習活動や学習充実感も異なると考えられる。
方 法
調査時期:2014年10月
調査対象者:同志社大学の学生143名(男性73名,女性70名)
調査手続き:同志社大学の講義の時間の一部を利用し,質問調査紙に回答してもらった。
調査内容:1.高校3年生,浪人生時に学業面におけるライバルがいたかどうか回答させ,いた場合はライバル(ライバル群)を,いなかった場合は同性の友人(非ライバル群)を想起させた。2.ライバルの認知理由(太田,2001)を用いて,想起させた人物との関係性を測定した。相互作用,目標の対象,親近性,能力対等の4つの下位尺度からなる14項目を5件法で測定した。3.友人との学習活動(岡田,2008)を用いて,想起させた人物との学習活動を測定した。援助要請,援助提供,相互作用,間接的支援,学習機会の5つの下位尺度からなる23項目を5件法で測定した。4.学習充実感(岡田,2008)の5項目を5件法で測定した。
結果と考察
使用した尺度の結果に基づき,下位尺度ごとにα係数を算出した。その結果,ライバルの認知理由尺度の能力対等(α=.34)と,学習活動尺度の間接的支援(α=.61)のα係数が低かったため,以降の分析には含めなかった。その他の下位尺度のα係数は.67-.90と一応の信頼性が確認された。
次に,想起させたライバルとの関係を検討するために,ライバル関係の有無を独立変数,ライバルの認知理由の下位尺度を従属変数としたt検定を行った。その結果,非ライバル群と比較して,ライバル群の相互作用(t(141)=4.85, p <.001),目標の対象(t(141)=7.13, p <.001)が有意に高く,親近性においては,両群間で有意差が認められなかった(t(141)=1.13, n.s.)。この結果より,非ライバルに比べて,主観的に認知されたライバルは,自分よりも成績が高い目標であり,関わり合いが多い人物であったと考えられる。
次に,ライバル関係の有無を独立変数,学習活動の各下位尺度と学習充実感を従属変数としたt検定を行った(Table 1)。その結果,両群間で援助提供に有意差はなかったが,非ライバル群よりも,ライバル群の学習機会が有意に高く,援助要請,相互学習は有意傾向で高かった。以上の結果より,非ライバルよりも,ライバルと多くの学習活動を行っていたと考えられる。太田(2000)は,ライバル観に関して,課題構造に関する「競争-協同」の軸と,対人関係に関する「敵対-友好」の軸を抽出した。この2軸で学業面でのライバル関係を捉えると,対人関係については,両群間で親近性に差がなかったため,敵対-友好の判断は出来ないが,課題構造は,ライバルと多くの学習活動を行っていたことから,協同的なものだったと考えられる。さらに,ライバル関係の存在が学習充実感を促進する可能性が示唆された。これは,協同的に学習活動を行うことで,学業成績が上がったからだと予想されるが,本研究ではその過程までは検討できなかったため,今後の課題となろう。
学校場面で,学生は多様な関係の他者と学習活動を共にしている。例えば,岡田(2008)は友人と学習活動の関連を検討した。しかし,学習活動の対象として,学業面におけるライバルに注目した研究はない。そこで,本研究は,ライバル関係と学習活動・学習充実感の関連を探索的に検討することを目的とした。
ライバルに関する研究には,客観的にライバルを定義するものと,本人が主観的に認知したライバルを扱うものがある(太田,2001)。本研究では,実際の学校場面に即したライバル関係を捉えるため,主観的に認知したライバルを扱った。ライバル関係が友人関係と異なるとすると,共有される学習活動や学習充実感も異なると考えられる。
方 法
調査時期:2014年10月
調査対象者:同志社大学の学生143名(男性73名,女性70名)
調査手続き:同志社大学の講義の時間の一部を利用し,質問調査紙に回答してもらった。
調査内容:1.高校3年生,浪人生時に学業面におけるライバルがいたかどうか回答させ,いた場合はライバル(ライバル群)を,いなかった場合は同性の友人(非ライバル群)を想起させた。2.ライバルの認知理由(太田,2001)を用いて,想起させた人物との関係性を測定した。相互作用,目標の対象,親近性,能力対等の4つの下位尺度からなる14項目を5件法で測定した。3.友人との学習活動(岡田,2008)を用いて,想起させた人物との学習活動を測定した。援助要請,援助提供,相互作用,間接的支援,学習機会の5つの下位尺度からなる23項目を5件法で測定した。4.学習充実感(岡田,2008)の5項目を5件法で測定した。
結果と考察
使用した尺度の結果に基づき,下位尺度ごとにα係数を算出した。その結果,ライバルの認知理由尺度の能力対等(α=.34)と,学習活動尺度の間接的支援(α=.61)のα係数が低かったため,以降の分析には含めなかった。その他の下位尺度のα係数は.67-.90と一応の信頼性が確認された。
次に,想起させたライバルとの関係を検討するために,ライバル関係の有無を独立変数,ライバルの認知理由の下位尺度を従属変数としたt検定を行った。その結果,非ライバル群と比較して,ライバル群の相互作用(t(141)=4.85, p <.001),目標の対象(t(141)=7.13, p <.001)が有意に高く,親近性においては,両群間で有意差が認められなかった(t(141)=1.13, n.s.)。この結果より,非ライバルに比べて,主観的に認知されたライバルは,自分よりも成績が高い目標であり,関わり合いが多い人物であったと考えられる。
次に,ライバル関係の有無を独立変数,学習活動の各下位尺度と学習充実感を従属変数としたt検定を行った(Table 1)。その結果,両群間で援助提供に有意差はなかったが,非ライバル群よりも,ライバル群の学習機会が有意に高く,援助要請,相互学習は有意傾向で高かった。以上の結果より,非ライバルよりも,ライバルと多くの学習活動を行っていたと考えられる。太田(2000)は,ライバル観に関して,課題構造に関する「競争-協同」の軸と,対人関係に関する「敵対-友好」の軸を抽出した。この2軸で学業面でのライバル関係を捉えると,対人関係については,両群間で親近性に差がなかったため,敵対-友好の判断は出来ないが,課題構造は,ライバルと多くの学習活動を行っていたことから,協同的なものだったと考えられる。さらに,ライバル関係の存在が学習充実感を促進する可能性が示唆された。これは,協同的に学習活動を行うことで,学業成績が上がったからだと予想されるが,本研究ではその過程までは検討できなかったため,今後の課題となろう。