[PH39] 自己決定をサポートする環境が内面化と調整スタイルに及ぼす影響
動機づけの促進要因
キーワード:自己決定理論, 動機づけ, 調整
目 的
Deci,Eghrari,Patrick,& Leone(1994)は,個人が課題に従事する場面で,社会的文脈が調整の内面化の度合いと調整スタイルに与える影響を検討した。この研究を承けて,本研究では,内面化を促進し,調整スタイルをより自己決定的になるようにする促進要因が存在する環境からの影響を検討した。
仮説は以下の通り。①促進要因あり群の方が促進要因なし群に比べ,課題従事時間が長くなる。つまり,促進要因あり群の方が内面化が強まる。②促進要因あり群は課題従事時間と質問紙得点の相関が高くなり促進要因なし群は相関が低くなる。つまり,促進要因あり群は行動と認知の一貫性が高くなり調整スタイルは“統合”になる。一方,促進要因なし群は行動と認知の一貫性は低くなり,調整スタイルは“取り入れ”になる。
方 法
実験参加者:立教大学の大学生19名(男性:5名,女性:14名,平均年齢:21.95歳(SD = 0.89))。
実験課題:PCを用いて視覚探索課題を行った。
手続き:参加者を,促進要因あり群と促進要因なし群の2グループに分けた。促進要因あり群では,①意味のある理由を提供する(この課題は集中力を高めることができる等の教示文を示した)②選択を示す(促進要因なし群の教示文に対して20箇所の言葉を変更して統制感が低い言葉を使用した)の,2つの促進要因を設定した。
課題終了後,自由活動時間(5分間)を設定した。その間,隣接の観察室から,カメラを通して参加者を観察した。自由活動時間中に,参加者がPC課題に従事した時間(課題従事時間)を測定した。自由活動時間の後,参加者には“課題に対する認知”の質問紙への回答を求めた。質問紙は,選択の知覚・価値の知覚・楽しさの1項目ずつ,計3項目からなる。
結果と考察
課題従事者(課題従事時間が0秒を超えた参加者)の課題従事時間(秒),及び“課題に対する認知”に関する質問紙得点(選択の知覚,価値の知覚,楽しさ)で,促進要因あり群・促進要因なし群の差を調べるために,t検定を行った(促進要因あり:N = 4,促進要因なし:N = 2)。その結果,課題従事時間の対数変換値(t(4)= 4.75,p < .01),選択の知覚(t(4)= 3.62,p < .05)で,促進要因あり群の方が促進要因なし群よりも有意に値が高かった。この結果は,仮説を支持するものであった。価値の知覚(t(4)= 0.96,n.s.)と楽しさ(t(4)= 0.96,n.s.)には,有意差はなかった。
促進要因あり群と促進要因なし群で行動と認知の一貫性に差があるかを検討するために,課題従事時間(秒)と“課題に対する認知”に関する質問紙得点(選択の知覚,価値の知覚,楽しさ)の相関係数を算出した(促進要因あり:N = 10,促進要因なし:N = 9)。促進要因あり群で課題従事時間と質問紙得点の間に有意な相関はなかった。促進要因なし群には課題従事時間と選択の知覚の間に有意な負の相関があった(r = -.67,p < .05)。課題従事時間と価値の知覚,楽しさの間に有意な相関はなかった。これらの結果は仮説を一部支持した。
以上の結果から,意味のある理由が提供されたり選択の自由度を感じられたりして自己決定をサポートする環境は,行動の調整の内面化を促し,個人がより長く課題に取り組むように影響すると考えられる。また,自己決定をサポートしない環境では,行動と認知の一貫性は低くなり,調整スタイルは“取り入れ”になると考えられる。
Deci,Eghrari,Patrick,& Leone(1994)は,個人が課題に従事する場面で,社会的文脈が調整の内面化の度合いと調整スタイルに与える影響を検討した。この研究を承けて,本研究では,内面化を促進し,調整スタイルをより自己決定的になるようにする促進要因が存在する環境からの影響を検討した。
仮説は以下の通り。①促進要因あり群の方が促進要因なし群に比べ,課題従事時間が長くなる。つまり,促進要因あり群の方が内面化が強まる。②促進要因あり群は課題従事時間と質問紙得点の相関が高くなり促進要因なし群は相関が低くなる。つまり,促進要因あり群は行動と認知の一貫性が高くなり調整スタイルは“統合”になる。一方,促進要因なし群は行動と認知の一貫性は低くなり,調整スタイルは“取り入れ”になる。
方 法
実験参加者:立教大学の大学生19名(男性:5名,女性:14名,平均年齢:21.95歳(SD = 0.89))。
実験課題:PCを用いて視覚探索課題を行った。
手続き:参加者を,促進要因あり群と促進要因なし群の2グループに分けた。促進要因あり群では,①意味のある理由を提供する(この課題は集中力を高めることができる等の教示文を示した)②選択を示す(促進要因なし群の教示文に対して20箇所の言葉を変更して統制感が低い言葉を使用した)の,2つの促進要因を設定した。
課題終了後,自由活動時間(5分間)を設定した。その間,隣接の観察室から,カメラを通して参加者を観察した。自由活動時間中に,参加者がPC課題に従事した時間(課題従事時間)を測定した。自由活動時間の後,参加者には“課題に対する認知”の質問紙への回答を求めた。質問紙は,選択の知覚・価値の知覚・楽しさの1項目ずつ,計3項目からなる。
結果と考察
課題従事者(課題従事時間が0秒を超えた参加者)の課題従事時間(秒),及び“課題に対する認知”に関する質問紙得点(選択の知覚,価値の知覚,楽しさ)で,促進要因あり群・促進要因なし群の差を調べるために,t検定を行った(促進要因あり:N = 4,促進要因なし:N = 2)。その結果,課題従事時間の対数変換値(t(4)= 4.75,p < .01),選択の知覚(t(4)= 3.62,p < .05)で,促進要因あり群の方が促進要因なし群よりも有意に値が高かった。この結果は,仮説を支持するものであった。価値の知覚(t(4)= 0.96,n.s.)と楽しさ(t(4)= 0.96,n.s.)には,有意差はなかった。
促進要因あり群と促進要因なし群で行動と認知の一貫性に差があるかを検討するために,課題従事時間(秒)と“課題に対する認知”に関する質問紙得点(選択の知覚,価値の知覚,楽しさ)の相関係数を算出した(促進要因あり:N = 10,促進要因なし:N = 9)。促進要因あり群で課題従事時間と質問紙得点の間に有意な相関はなかった。促進要因なし群には課題従事時間と選択の知覚の間に有意な負の相関があった(r = -.67,p < .05)。課題従事時間と価値の知覚,楽しさの間に有意な相関はなかった。これらの結果は仮説を一部支持した。
以上の結果から,意味のある理由が提供されたり選択の自由度を感じられたりして自己決定をサポートする環境は,行動の調整の内面化を促し,個人がより長く課題に取り組むように影響すると考えられる。また,自己決定をサポートしない環境では,行動と認知の一貫性は低くなり,調整スタイルは“取り入れ”になると考えられる。