日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

2016年10月10日(月) 13:00 〜 15:00 展示場 (1階展示場)

[PH50] 大学生のジェンダー観とファッション意識の関係について

吉岡映理1, 桂田恵美子2 (1.関西学院大学, 2.関西学院大学)

キーワード:ジェンダー, ファッション

問題と目的
 本研究においては,個人の伝統的性役割観や性役割的性格特性とファッション意識(ファッションに対する興味・関心の程度)との関連を検討した。ジェンダー観とファッション意識については坂本(2011)による先行研究があり,男女共に関係性が出ているが,対象者の年齢が20代から40代と幅広く,育った時代や社会的な立場を統制できていない。またジェンダー観については性役割観の視点のみから検討している。そのため,本研究では,最もファッションに興味があると思われる大学生に絞り,性役割観だけでなく,性役割的性格特性との関連についても検討した。
 仮説としては,伝統的な性役割観や性役割的性格特性を強く持つ人ほど,ファッションも流行に合ったものや同性に誉めてもらえたり異性に好かれたりするものを好む傾向があると考える。
方   法
【対象者】大学生251名(男性60名,女性191名,平均20.03歳,標準偏差=1.18)を対象とした。
【質問紙】平等的性役割観について問う鈴木(1987)による平等主義的性役割態度スケール(40項目),性役割的性格特性について問う杉原・桂田(2000)による性役割特性尺度(20項目),ファッション意識について問う坂本(2011)によるファッション意識尺度(13項目)を用いた。
結   果
 平等主義的性役割態度スケールは因子分析を行い,男女平等因子,結婚後役割因子の2因子に分化した。男女別に男女平等/結婚後役割因子高低2群(得点の中央値を基準に分化した)を独立変数とし,ファッション意識を表すファッション得点を従属変数とするt検定をおこなった。結果,女性のみ結婚後役割因子高低2群の間で有意な差が見られ,結婚後役割因子高群の方がファッション得点が高かった(t(189)=-4.07, p<.005)。
 性役割的性格特性についても,男女別に男/女性性高低2群(得点の中央値を基準に分化した)を独立変数とし,ファッション得点を従属変数とする  t検定をおこなった。結果,男性性については男女ともに有意な差が見られ(男性:t(58)=-2.03,   p<.05,女性:t(189)=-3.94, p<.005),女性性については女性のみ有意な差が見られた(t(188)=-4.66, p<.005)。いずれも男/女性性高群の方がファッション得点が高かった。
考   察
 結婚後役割因子は,結婚してから女性としてこうありたいという項目が多く,女性の理想,願望を反映したジェンダー観と言える。そのため,女性として魅力的な人になるための手段であるファッションと関係性が見られたことが考えられる。
 性格特性については,男性は仮説を支持できる結果となり,男性性をより強調するためにファッションにも強い興味を持つようになることが考えられる。女性は女性性については仮説通りであるが,女性にとって伝統的とは言えない男性性が高い場合でもファッション意識が高くなっている。これは現代の女性にとっては社会的な立場なども生きていく上で大切なことであるため,社会で重んじられる特性である男性性とそのような特性を服装で表現しようとする考えを含むファッション意識の間に関係が出たことが考えられる。つまり,男性性は社会的に肯定的とされる特性を多く含むため,現代社会においては女性であっても高い男性性を持つことが望ましいとされる実情が反映された結果と考えられる。