[PH52] 同情が受け手の感情の生起に与える影響
親密さ,経験の共有,被援助志向性に焦点を当てて
Keywords:親密さ, 経験の共有, 被援助志向性
問題と目的
本研究の目的は,同情されたときの感情に関して,(1)同情をしてくる相手と親密か顔見知りか(2)同情をしてくる相手が同じネガティブな経験をしているかの2つの条件を組み合わせた仮想場面を作成し,それぞれの場面で同情されたとき,どのような感情が生起されるかを検討することである。また,援助を求める程度が同情されたときの感情の生起に及ぼす影響についても検討する。
方 法
対象:A大学の大学生227名に質問紙調査を行い,209名(男104名,女105名)を分析対象とした。
調査内容:仮想場面を設定し,回答を求めた。仮想場面は,ネガティブな出来事が起こり,自分にとって統制不可能な状況を設定した。場面数については,同情をする他者が親しい相手であるのか,同じ経験の有無で分けるために,計4場面を用意した。各場面でどのように感じるかを測定するために,次の尺度を用いた。①多面的感情状態尺度:寺崎・岸本・古賀(1992)の多面的感情状態尺度のうち,「抑鬱・不安」,「敵意」,「活動的快」,「非活動的快」の4因子を用いた。16項目,4件法。②特性被援助志向性尺度:田村・石隈(2006)の特性被援助志向性尺度のうち,大学生でも回答できるよう項目の一部を修正して用いた。13項目,5件法。なお,カウンターバランスをとるため,質問紙ごとに場面の順番をランダムに入れ替えた。
結果と考察
各場面における多面的感情状態尺度下位尺度の平均値を比較するために,まず2(親密さ:親密・顔見知り(被験者内))×2(経験の共有:有り・無し(被験者内))×2(被援助に対する懸念や抵抗感の低さ:高群・低群(被験者間))の三要因分散分析を行った。その結果,①抑鬱・不安は,経験の共有の主効果,被援助に対する懸念や抵抗感の低さの主効果がみられた。前者は,同じ経験の共有をしていないことで相手との差異が生じ,他者比較によって劣等感を抱き,抑鬱・不安といったネガティブな感情につながったのだろう。後者は,被援助に対して懸念や抵抗感少ない人は,仮想場面での失敗経験を深刻な悩みとして捉えたためだと考えられる。②敵意は,親密さの主効果,経験の共有の主効果がみられた。前者は,顔見知りの相手は自分にとって心理的距離の遠い相手であり,同情された側は,相手は自分のことを理解していないと認識したのだろう。後者は,同情した相手は同じ大学生であるが,状況が異なっていた。このことが,立場が正当でないという心理的な不満を生み,敵意の感情につながったと考えられる。③活動的快は,親密さの主効果,経験の共有の主効果がみられた。前者は,同情の受け手は,親密な相手からの同情を情緒的サポートと捉え,相手は自分のことをわかってくれていると認識したと考えられる。後者は,同じ立場にいることで相手との差異を感じることもなく,自分がどんな状況にいてどんな気持ちでいるかをわかってくれていると認識したためだろう。④非活動的快は,親密さの主効果,経験の共有の主効果がみられた。前者は,活動的快と同じように,相手が自分のことをわかってくれていると認識することで非活動的快の感情を抱いたのだろう。後者は,ネガティブな出来事の経験の共有をしたことが安心感につながったと考えられる。
次に,2(親密さ:親密・顔見知り(被験者内))×2(経験の共有:有り・無し(被験者内))×2(被援助に対する肯定的態度:高群・低群(被験者間))の三要因分散分析を行った。抑鬱・不安は,経験の共有のみに主効果がみられた。敵意,活動的快については前述の結果と同様であった。また,非活動的快については,親密さ×被援助に対する肯定的態度の交互作用がみられた。被援助に対して肯定的態度を示す人は,援助者に対して助言や情緒的サポートを求めていることが項目から予想され,情緒的サポートを求める相手は親密な他者であることが示唆されている。よって,親密な人から同情されたときに非活動的快の感情を強く感じたと考えられる。それに対して,顔見知りの人から同情されたときの非活動的快の得点が低いのは,親密な他者からの情緒的サポートを求めていたにもかかわらず,同情してきた相手が顔見知りの人であったためであろう。
また,経験の共有×被援助に対する肯定的態度の交互作用がみられた。被援助に対して肯定的態度を示す人は,情緒的サポートを求めていることが項目から予想される。受け手が情緒的サポートを得られると考えるのは同じ経験の共有をしている相手から同情されたときであるため,非活動的快の得点が上がったのだろう。非活動的快の得点が下がったのは,同じ経験の共有をしておらず,自分の気持ちを理解してくれていないであろう相手からの同情であったためと考えられる。
本研究の目的は,同情されたときの感情に関して,(1)同情をしてくる相手と親密か顔見知りか(2)同情をしてくる相手が同じネガティブな経験をしているかの2つの条件を組み合わせた仮想場面を作成し,それぞれの場面で同情されたとき,どのような感情が生起されるかを検討することである。また,援助を求める程度が同情されたときの感情の生起に及ぼす影響についても検討する。
方 法
対象:A大学の大学生227名に質問紙調査を行い,209名(男104名,女105名)を分析対象とした。
調査内容:仮想場面を設定し,回答を求めた。仮想場面は,ネガティブな出来事が起こり,自分にとって統制不可能な状況を設定した。場面数については,同情をする他者が親しい相手であるのか,同じ経験の有無で分けるために,計4場面を用意した。各場面でどのように感じるかを測定するために,次の尺度を用いた。①多面的感情状態尺度:寺崎・岸本・古賀(1992)の多面的感情状態尺度のうち,「抑鬱・不安」,「敵意」,「活動的快」,「非活動的快」の4因子を用いた。16項目,4件法。②特性被援助志向性尺度:田村・石隈(2006)の特性被援助志向性尺度のうち,大学生でも回答できるよう項目の一部を修正して用いた。13項目,5件法。なお,カウンターバランスをとるため,質問紙ごとに場面の順番をランダムに入れ替えた。
結果と考察
各場面における多面的感情状態尺度下位尺度の平均値を比較するために,まず2(親密さ:親密・顔見知り(被験者内))×2(経験の共有:有り・無し(被験者内))×2(被援助に対する懸念や抵抗感の低さ:高群・低群(被験者間))の三要因分散分析を行った。その結果,①抑鬱・不安は,経験の共有の主効果,被援助に対する懸念や抵抗感の低さの主効果がみられた。前者は,同じ経験の共有をしていないことで相手との差異が生じ,他者比較によって劣等感を抱き,抑鬱・不安といったネガティブな感情につながったのだろう。後者は,被援助に対して懸念や抵抗感少ない人は,仮想場面での失敗経験を深刻な悩みとして捉えたためだと考えられる。②敵意は,親密さの主効果,経験の共有の主効果がみられた。前者は,顔見知りの相手は自分にとって心理的距離の遠い相手であり,同情された側は,相手は自分のことを理解していないと認識したのだろう。後者は,同情した相手は同じ大学生であるが,状況が異なっていた。このことが,立場が正当でないという心理的な不満を生み,敵意の感情につながったと考えられる。③活動的快は,親密さの主効果,経験の共有の主効果がみられた。前者は,同情の受け手は,親密な相手からの同情を情緒的サポートと捉え,相手は自分のことをわかってくれていると認識したと考えられる。後者は,同じ立場にいることで相手との差異を感じることもなく,自分がどんな状況にいてどんな気持ちでいるかをわかってくれていると認識したためだろう。④非活動的快は,親密さの主効果,経験の共有の主効果がみられた。前者は,活動的快と同じように,相手が自分のことをわかってくれていると認識することで非活動的快の感情を抱いたのだろう。後者は,ネガティブな出来事の経験の共有をしたことが安心感につながったと考えられる。
次に,2(親密さ:親密・顔見知り(被験者内))×2(経験の共有:有り・無し(被験者内))×2(被援助に対する肯定的態度:高群・低群(被験者間))の三要因分散分析を行った。抑鬱・不安は,経験の共有のみに主効果がみられた。敵意,活動的快については前述の結果と同様であった。また,非活動的快については,親密さ×被援助に対する肯定的態度の交互作用がみられた。被援助に対して肯定的態度を示す人は,援助者に対して助言や情緒的サポートを求めていることが項目から予想され,情緒的サポートを求める相手は親密な他者であることが示唆されている。よって,親密な人から同情されたときに非活動的快の感情を強く感じたと考えられる。それに対して,顔見知りの人から同情されたときの非活動的快の得点が低いのは,親密な他者からの情緒的サポートを求めていたにもかかわらず,同情してきた相手が顔見知りの人であったためであろう。
また,経験の共有×被援助に対する肯定的態度の交互作用がみられた。被援助に対して肯定的態度を示す人は,情緒的サポートを求めていることが項目から予想される。受け手が情緒的サポートを得られると考えるのは同じ経験の共有をしている相手から同情されたときであるため,非活動的快の得点が上がったのだろう。非活動的快の得点が下がったのは,同じ経験の共有をしておらず,自分の気持ちを理解してくれていないであろう相手からの同情であったためと考えられる。