日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

2016年10月10日(月) 13:00 〜 15:00 展示場 (1階展示場)

[PH57] 大学生の就職活動における主観的幸福感とアイデンティティとパーソナリティの関連

高岡洋子 (聖徳大学大学院)

キーワード:主観的幸福感, 職業的アイデンティティ, パーソナリティ

問題と目的
 大学生の就職活動において内定を簡単にとれる学生がいる一方で,1社からの内定もとれずにいる学生が存在する。この両者の心理的状態における違いは何だろうか。内定有の学生は主観的幸福感が高いと考えられる。しかし児玉(2002)によれば,自分の職業的な目標や能力が明確であり,目標が実現できそうかなどといった自分らしさの意識を持つことが大事だとしている。さらにパーソナリティとして楽観性が高い人ほど諦めず最後まで頑張れるのではないかと思われる。本稿では,内定有群と内定無群に分け,就職活動をしている学生に対し,職業的アイデンティティ,楽観性,主観的幸福感の差を比較検討する。
方   法
調査対象者 就職活動をしている女子大学4年生で一般企業希望している141名を対象にした。
調査時期および手続き 調査は2015年11月に質問紙法で,大学の講義時間内に集団式で実施された。使用した尺度は,①アイデンティティ尺度(児玉,2002)「有能感」,「目標・目的」の4項目,5件法②改訂版楽観性尺度日本語版(坂本・田中,2002)「楽観性」,「悲観性」の6項目,5件法③主観的幸福感尺度(伊藤・相良・池田・川浦,2003)12項目,4件法であった。
結果と考察
内定有と無の差
 職業的アイデンティティの下位尺度,「有能感」と「目標・目的」,楽観性の下位尺度,「楽観的」と「悲観的」,「主観的幸福感」の下位尺度の平均と標準偏差をTable 1に示す。内定有群(61名)と内定無群(74名)の差をt検定で行った結果,有能感と主観的幸福感について,有意な差がみられた。有能感と主観的幸福感のどちらも就職内定有の学生のほうが得点は高かった。この理由は,1社でも内定しているという安心感や余裕から有能感や主観的幸福感が高くなったのだと思われる。
各変数間の相関
 職業的アイデンティティと楽観性と主観的幸福感の相関係数をTable 2に示す。職業的アイデンティティの「有能感」と「目標・目的」,楽観性の「楽観的」と主観的幸福感には正の相関がみられ「有能感」及び「目標・目的」と「悲観的」には負の相関がみられた。
 就職活動中の学生は,職業的アイデンティティが高いと主観的幸福感も高いことがわかり,たとえ内定無でも目標・目的が明確の場合は主観的幸福感が維持されることが示唆された。