The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PH59] 心理的居場所感が攻撃性に与える影響

仮想的有能感,依存欲求に焦点を当てて

清水克輝 (和歌山大学)

Keywords:居場所感, 攻撃性, 友人グループ

問題・目的
 近年,若者の補導人員は減少傾向にあるが,依然として家庭内暴力といった問題行動の認知件数は増加傾向にある。本研究では,若者の問題行動の要因のひとつとして攻撃性に焦点を当て,高校生の友人グループにおける心理的居場所感が攻撃性に及ぼす影響を検討する。また,若者の特徴を測る要素として依存要求と仮想的有能感を挙げ,心理的居場所感と攻撃性それぞれに,依存欲求と仮想的有能感が及ぼす影響を検討することを目的とした。
方   法
調査対象 三重県内の高校生354名に質問紙調査を行い,最終的に224名(男性131名,女性93名)を分析の対象とした。
手続き 高校に対し質問紙調査を依頼した。
質問紙構成 質問紙は,友人グループの人数に関する質問と以下の5つの尺度によって構成された。
(1)攻撃性尺度(安立,2001)(2)心理的居場所感尺度(則定,2007)(3)仮想的有能感尺度(速水ら,2004)(4) Rosenberg(1965)の自尊感情尺度日本語版(山本・松井・山成,1982)(5)依存欲求尺度(竹澤・小玉,2004)(6)友人グループを「普段一緒に行動したり,遊んだりする三人以上の友人関係」とし,学校での同性友人グループの人数が自分を含めて何人かについて,1人から9人以上の中から回答を求めた。
結果・考察
 心理的居場所感と攻撃性の男女別重回帰分析を行ったところ,男性は「役割感」が「積極的行動」に正の,「自責感」「猜疑心」に負の影響を与え,「被受容感」が「自己破壊行動」に負の影響を与えること,女性は「役割感」が「自責感」に負の影響,「安心感」が「積極的行動」に負の影響を与えることを示した
 このことから,グループの中で自分に役割があり,必要とされていると感じることは,男性においては,心中で自分や他者を攻撃することを抑制し,能動的な行動を活性化させ,女性においては,心中で自分を攻撃することを抑制していることが明らかになった。また,グループ内で受け入れられていると感じることは男性が自分に対し攻撃をすることを抑制し,グループに所属していることへの安心感は,女性が能動的に行動することを抑制するといったことが明らかになった。
 仮想的有能感と自尊感情尺度得点の高低で四つに群分けし,そのうちの一つである仮想型に焦点を当て,攻撃性と心理的居場所感との関係を調査した。結果,仮想型は心理的居場所感得点が低く,自他への攻撃性得点が高かった。
 仮想的有能感が高い者の性格的特徴として,情緒不安定で動揺しやすく,猜疑心が強く現実的であることや,常日頃から感情的に不安定で強い抑うつ感情や敵意感情を抱いていることが指摘されている。また,仮想型はいじめの被害・加害経験が高いことも指摘されており,これらの結果から,仮想型の人間は日頃から自他に対しての攻撃性を持っており,ある時それが破壊行動として表出すると考えられる。
 依存欲求と心理的居場所感・攻撃性の重回帰分析を行ったところ,情緒的依存欲求・道具的依存欲求共に一部の心理的居場所感と攻撃性に影響を及ぼすことが明らかになった。これらの結果について,社会的性役割観や依存欲求が満たされている環境との関わりが示唆された。