The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PH61] Sense of Coherence の因子に注目した文章完成法の反応の検討

雲財啓1, 齊藤誠一2 (1.神戸大学大学院, 2.神戸大学)

Keywords:Sense of Coherence(SOC), 文章完成法(SCT)

問題と目的
 Sense of Coherence(SOC)が健康生成モデルの中核概念として注目され,その有用性が実証されつつあるが,その因子に焦点を当てた検討は多いとは言えない。SOCは把握可能感,処理可能感,有意味感の3つの因子から成り立っているとされ,ストレス対処において各因子で異なる機能を持つことが示唆されているものの,実際の対処の差異は十分に明確ではない。そこで本研究では,対処の差異として文章完成法(SCT)の反応を検討し,SOCの各因子の違いで対処の差異を明らかにすることを目的とした。
方   法
調査時期および対象者
 近畿地方の総合大学であるA大学に所属する学生に対して2009年12月に質問紙調査を実施し,回答が得られた273名(男性93名,女性180名,平均年齢20.08,SD=1.51)を分析の対象とした。
調査内容
 (a)29項目版SOCスケール(SOC-29):Antonovsky(198 山崎・吉井訳 2001)が作成し,把握可能感,処理可能感,有意味感の3因子構造。(b)SCT: 置かれている環境や日常に対する対処を検討するために“世の中”,“意味のあることは”,“私の日常”の3つの刺激語(句)を作成し,刺激語(句)に続くように文章を記入してもらった。
結果と考察
 SOCの各因子の違いをまとめるために,SOCの下位尺度の標準得点を用いてグループ内平均連結法を用いた階層的クラスター分析を行い,有意味感高群,把握可能感高群,SOC低群,SOC高群の4つの群を得た(Figure 1)。また,各群の文章完成法の反応内容を肯定的反応,否定的反応,中立的反応に分類し検討した(Table 1)。各刺激語(句)に対する反応の偏りを検討するためにχ2検定を行ったところ有意な偏りが見られた。残差分析の結果,どの刺激語(句)に対してもSOC高群は否定的反応が少なく,SOC低群は肯定的反応が少なく否定的反応が多かった。また,有意味感高群は“世の中”,“意味のあることは”に対して肯定的反応が多く,把握可能感高群は“世の中”に対して肯定的反応が少なかった。以上のことから,SOCはストレス対処について肯定的反応を増やし,否定的反応を減らすこと,有意味感は肯定的反応を増やすこと,把握可能感は肯定的反応を減らすことが示唆された。把握可能感高群で肯定的反応が少ないことは従前から指摘されてきた把握可能感の負の面を反映していると考えられるが,否定的反応に偏っていないことから,常に負の面が影響を与えるわけではないことが示唆された。