The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PH63] マインドフルネスが中学生の学校ストレスに与える影響

認知的評価の観点から

飯島有哉1, 松野航大#2, 宮崎球一#3, 根建金男4, 桂川泰典5 (1.早稲田大学大学院, 2.早稲田大学大学院, 3.早稲田大学, 4.早稲田大学, 5.早稲田大学)

Keywords:学校ストレス, マインドフルネス, 中学生

問題と目的
 学校ストレスとは,児童生徒が学校生活の中で経験している心理的ストレスのことであり,不登校をはじめとする学校不適応や,いじめなどの原因として指摘されている(三浦・坂野, 1996)。近年では,認知行動療法を援用したストレスマネジメント教育としてマインドフルネスの活用が注目されており,その有効性は子どもに対しても確認されている(Saltzman & Goldin, 2008)。マインドフルネスとは「今ここでの経験に, 評価や判断を加えることなく,能動的に注意を向けること」を意味する心理状態であるとされており,瞑想法や呼吸法などのマインドフルネストレーニング(MT)によってこの心理状態を目指す(Kabat-Zinn,1990)。MTは短時間のエクササイズを継続することで効果が得られるという性質を持っており,カリキュラムに時間的余裕が少ない日本の学校現場における導入が期待される。しかし,マインドフルネスがストレスを低減させるメカニズムについては不明瞭な点が多く(Hayes & Wilson, 2003),これまでのストレス研究によって積み上げられてきた知見との関連性は未だ明らかとなっていない。そこで本研究では,これまでの中学生を対象としたストレス研究においても参考とされてきたLazarus & Folkman(1986)のストレスモデルを基に,ストレッサーに対する認知的評価の観点からマインドフルネスの作用機序について検討する。
方   法
調査対象:首都圏内の中学生に対して質問紙調査を行い,有効回答者119名(男子56名,女子63名,平均年齢13.58歳, SD=.50)を分析対象とした。調査時期:2015年9月下旬。
倫理的配慮:本調査は,対象生徒本人および保護者の同意を得た上で実施された。また,本研究は,早稲田大学「人を対象とする研究に関する倫理委員会」の審査・承認を得て行われた。
調査材料:①日本語版MAAS(宇佐美・田上,2012):マインドフルネス傾向を測定する。②PSI中学生用(坂野・岡安・嶋田,2007)の「ストレス反応尺度(SR)」,「ストレッサー尺度(ST)」:ストレス反応と,学校ストレッサーの経験頻度を測定する。③中学生用認知的評価測定尺度(三浦,2002):ストレッサーに対する「影響性」の評価と「コントロール可能性」の評価を測定する。
結   果
 各変数がストレス反応に与える影響を検討するため,SR得点を目的変数,その他の変数を説明変数とする階層的重回帰分析を実施した(Table 1)。その結果,統制変数であるSTの他に,MAAS,影響性,MAASと影響性の交互作用が有意となった。交互作用を検討するために,MAASの高低(平均値±1/2SD)における影響性のSRへの効果を検定した。その結果,MAASが高い場合には影響性の効果は有意傾向にとどまったが(β=.13, p<.10),MAASが低い場合には影響性の効果は有意であった(β=.29, p<.01)(Figure 1)。したがって,マインドフルネス傾向には,ストレッサーに対する影響性の評価がストレス反応を増加させる効果を緩和するはたらきがあることが示された。
考   察
 本研究の結果から,マインドフルネス傾向はストレッサーに対する一次的評価である影響性の評価に対してのみ,そのストレス反応への効果を緩和するはたらきがあることが示された。二次的評価であるコントロール可能性に対しては同様のはたらきはみられなかった。しかし,マインドフルネスが「今」に着目する概念であることからも,未来について評価するコントロール可能性については作用せず,現在に対する影響性の評価にのみ作用することは妥当であると考えられる。