日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PH(65-88)

ポスター発表 PH(65-88)

2016年10月10日(月) 13:00 〜 15:00 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PH70] 高校生のセルフ・コントロールがインターネット依存傾向および学校適応感に及ぼす影響

東野美佐子1, 玉木健弘2 (1.武庫川女子大学大学院, 2.武庫川女子大学)

キーワード:セルフ・コントロール, インターネット依存傾向, 学校適応感

問   題
 近年,高校生のスマートフォン利用率の増加に伴い,インターネット(以下,ネット)の利用率も増加している。内閣府(2016)は,平成26年度と比べて,ネットを2時間以上利用する高校生が増加していることを指摘している。総務省(2014)によると,ネットの長時間利用は,ネット依存に繋がることが示唆されている。さらに,高校生においてネット依存傾向の高い人は学校適応感に悪影響を及ぼす可能性がある。
 そこで,本研究では,個人のセルフ・コントロール(以下,SC)に着目する。SCが学校適応感に影響を及ぼすことは明らかになっている(崔・庄司,2013)。そこで,本研究では,SCがネット依存傾向を媒介して学校適応感に及ぼす影響を検討した。

方   法
1.調査対象者
 公立高等学校1年生から3年生の男女959名を対象に調査を行った。回答に不備のあった質問紙を削除した結果,737名(男子275名,女子462名)を分析対象者とした。
2.調査用紙
(1) フェイスシート
 学年,年齢,性別,所有機器,所有機器の中で最も使用している機器,所有機器に関する保護者との取り組み,1日のネット利用時間の記入を求めた。
(2) セルフ・コントロール
 日常におけるセルフ・コントロールを測定するために,Redressive-Reformative Self-Control Scale(RRS)尺度(杉若,1995)を使用した。この尺度は,「改良型セルフ・コントロール」,「外的要因によるセルフ・コントロール」,「調整型セルフ・コントロール」の3因子で構成されている。
(3) インターネット依存傾向
 高校生のネット依存傾向を測定するために,高校生向けインターネット依存傾向測定尺度(鶴田・山本・野嶋,2014)を使用した。この尺度は,「精神依存状態」,「メール不安」,「長時間利用」,「ながら利用」,「対面コミュニケーション不安」の5因子で構成されている。
(4) 学校適応感
 高校生の学校適応感を測定するために,青年用適応感尺度(大久保,2005)を使用した。この尺度は,「居心地の良さの感覚」,「課題・目的の存在」,「被信頼感・受容感」,「劣等感のなさ」の4因子で構成されている。

結果および考察
 SCとネット依存傾向,ならびに学校適応感の因果関係を測定するために,共分散構造分析を実施した。その結果,SCからネット依存傾向に有意な負のパス,学校適応感に有意な正のパスが見られた。また,ネット依存傾向から学校適応感に有意傾向のある負のパスが見られた。次に,分析で使用したモデルの適合度を算出した。その結果,モデル図のモデル適合度指数は,χ2 (40) = 328.31, GFI = .927, AGFI = .879, CFI = .916, RMSEA = .099であったことから,高い適合度のモデルであることが示された(Figure 1)。
 杉若(1995)によると,SCは内的要因によるSC (以下,内的SC)と外的要因によるSCの2つの視点から分類することが出来る。内的SCとは,比較的一貫した個人の特性のことを言い、改良型SCと調整型SCの2種類から構成される。本研究では,内的SCと外的SCを含んで分析をしたものより,内的SCのみで構成されるSCで分析した方のモデル適合度が高かった。
 これらのことから,内的SCが高いとネット依存傾向は低くなり,ネット依存傾向が高いと学校適応感も低くなることが明らかとなった。また,内的SCが高いと学校適応感も高いことが明らかとなった。以上のことから,内的SCを高めることがネット依存傾向を低下させ,学校適応感を高めることが示された。