[PH77] 教師のスクールカウンセラーへの 相談行動に対する利益とコストの影響(3)
SCとの接触経験の影響の検討
Keywords:教師―SC関係, 相談行動, 接触経験
問題と目的
教師のスクールカウンセラー(以下,SC)への自発的相談は①児童・生徒への効果,②教師自身への効果の両面から重要である(塚越,1998)。SCのさらなる効果的な活動のため,教師からの相談の促進・抑制要因を明らかにする必要がある。相談行動の研究では,相談行動に関する利益とコストの予期の影響が検討されてきた(e.g., Shaffer,Vogel,& Wei,2006)。利益とコストの予期とは相談実行利益,相談回避コスト,相談回避利益,相談実行コストの4概念であり,国内では中学生同士の相談行動との関連が検討されている(e.g., 永井・新井,2007)。一方,吉田(2015)は教師―SC版利益とコスト尺度を作成している。
そこで,本研究では吉田(2015)の尺度を用い,援助要請促進要因である教師のSCとの接触経験が利益とコストの予期に与える影響を検討する。
方 法
調査手続き:2013年8月~10月に首都圏内の小・中・高等学校に勤務の教員714名への質問紙調査。
分析対象:有効回答は管理職・養護教諭を含まない小・中学校教員406名(有効回収率56.9%:小学校221名,中学校185名)。平均年齢は40.0歳(SD=12.0),平均勤務年数は15.2年(SD=12.2),性別は男性176名,女性229名。
調査内容(本発表で使用した項目のみ):
①教師―SC版利益とコスト尺度(吉田,2015):40項目,5件法。②SCとの接触経験:ここ1年間での雑談経験(したことがない~いつもしたの6件法)と今までの教員生活での相談経験(したことがない~よくしたの4件法)の2項目。
結 果
接触経験間の相関係数を確認したところ,.460であった。よって,各接触経験の単独での影響を検討するため,相談実行利益因子の「間接的援助効果」,「直接的援助効果」,相談回避コスト因子の「教師だけでの限界」,相談回避利益因子の「自助努力による利益」,相談実行コスト因子の「無効性」,「相談への抵抗感」,「時間・制度的制約」の全7因子の下位尺度得点に対し,個人属性と各接触経験を独立変数とした階層的重回帰分析を実施した。step1で個人属性,step2で今までの相談経験,step3でここ1年間の雑談経験を投入した。
分析の結果,接触経験の程度が相談実行利益,回避コストに正の影響を,相談回避利益,「時間・制度的制約」以外の実行コストには負の影響を与えていた(Table1)。中でも,「間接的援助利益」,「自助努力による利益」,「無効性」はstep3が有意であり,雑談経験が影響を与えていた。
考 察
特定の利益とコストの予期では,雑談経験でも相談促進効果が得られたことから,日常的な雑談経験でも教師からの相談を促進する方略になりえることが推察される。
謝辞・付記
本研究は平成25年度東京国際大学大学院社会学研究科に提出した修士論文を再分析したものである。
修士論文をご指導いただきました東京未来大学の角山剛教授,東京国際大学の村井美紀准教授,再分析にあたり貴重なご指摘をいただきました筑波大学の庄司一子教授,松井 豊教授,専修大学の下斗米淳教授に感謝申し上げます。
教師のスクールカウンセラー(以下,SC)への自発的相談は①児童・生徒への効果,②教師自身への効果の両面から重要である(塚越,1998)。SCのさらなる効果的な活動のため,教師からの相談の促進・抑制要因を明らかにする必要がある。相談行動の研究では,相談行動に関する利益とコストの予期の影響が検討されてきた(e.g., Shaffer,Vogel,& Wei,2006)。利益とコストの予期とは相談実行利益,相談回避コスト,相談回避利益,相談実行コストの4概念であり,国内では中学生同士の相談行動との関連が検討されている(e.g., 永井・新井,2007)。一方,吉田(2015)は教師―SC版利益とコスト尺度を作成している。
そこで,本研究では吉田(2015)の尺度を用い,援助要請促進要因である教師のSCとの接触経験が利益とコストの予期に与える影響を検討する。
方 法
調査手続き:2013年8月~10月に首都圏内の小・中・高等学校に勤務の教員714名への質問紙調査。
分析対象:有効回答は管理職・養護教諭を含まない小・中学校教員406名(有効回収率56.9%:小学校221名,中学校185名)。平均年齢は40.0歳(SD=12.0),平均勤務年数は15.2年(SD=12.2),性別は男性176名,女性229名。
調査内容(本発表で使用した項目のみ):
①教師―SC版利益とコスト尺度(吉田,2015):40項目,5件法。②SCとの接触経験:ここ1年間での雑談経験(したことがない~いつもしたの6件法)と今までの教員生活での相談経験(したことがない~よくしたの4件法)の2項目。
結 果
接触経験間の相関係数を確認したところ,.460であった。よって,各接触経験の単独での影響を検討するため,相談実行利益因子の「間接的援助効果」,「直接的援助効果」,相談回避コスト因子の「教師だけでの限界」,相談回避利益因子の「自助努力による利益」,相談実行コスト因子の「無効性」,「相談への抵抗感」,「時間・制度的制約」の全7因子の下位尺度得点に対し,個人属性と各接触経験を独立変数とした階層的重回帰分析を実施した。step1で個人属性,step2で今までの相談経験,step3でここ1年間の雑談経験を投入した。
分析の結果,接触経験の程度が相談実行利益,回避コストに正の影響を,相談回避利益,「時間・制度的制約」以外の実行コストには負の影響を与えていた(Table1)。中でも,「間接的援助利益」,「自助努力による利益」,「無効性」はstep3が有意であり,雑談経験が影響を与えていた。
考 察
特定の利益とコストの予期では,雑談経験でも相談促進効果が得られたことから,日常的な雑談経験でも教師からの相談を促進する方略になりえることが推察される。
謝辞・付記
本研究は平成25年度東京国際大学大学院社会学研究科に提出した修士論文を再分析したものである。
修士論文をご指導いただきました東京未来大学の角山剛教授,東京国際大学の村井美紀准教授,再分析にあたり貴重なご指摘をいただきました筑波大学の庄司一子教授,松井 豊教授,専修大学の下斗米淳教授に感謝申し上げます。