[PH78] 中学校におけるスクールカウンセラーと教員が協働した集団SSTの実践と効果の検討
学校・生徒の実態に即した集団SSTの効果
Keywords:中学校, 集団SST
問題と目的
学校現場においてスクールカウンセラー(以下,SC)には児童生徒へのカウンセリングといった個別直接的な支援だけでなく,集団に対する予防・開発的な支援も求められている。しかし,心理教育プログラムが年間計画に組まれていない学校もみられる。スクールカウンセリングではそのような学校の実態に即し柔軟に効果的な教育プログラムを教員と協働して実施していくことがSCには求められる。
そこで,本研究では中学校2年担当教員から生徒のソーシャルスキルに関する相談があったことから,学校の実態を踏まえながらSCと教員とで協働して集団ソーシャルスキルトレーニング(以下,集団SST)を実施し,その効果を検討することを目的とした。
方 法
調査対象者 A県の公立中学校1校の2年生37名(男子20名女子17名)を対象に質問紙調査および集団SSTを実施した。
手続き ①2015年5月に南川(2006)の「標的スキル選定のためのソーシャルスキル自己評定尺度」
(以下SST尺度)を用いて事前調査を行った。
②事前調査から7つの下位項目の標準得点を算出して課題となるソーシャルスキルを明らかにするとともに,対象集団の実態と照らし合わせながら担当教員と標的スキルを「聴くスキル」「配慮のスキル」「主張スキル」に決定した。同年5月に「元気の出る聴き方」7月に「上手な話しかけ方」12月に「言いにくいことを相手に伝える方法」をテーマに集団SSTを実施した。小林・相川(1999)を参考に担当教員とSCが話し合いながら指導略案を作成し,生徒が実際に経験していそうな場面をロールプレイに取り入れるよう留意した。集団SSTはイントロダクション,モデリング,リハーサル,フィードバックの4つのステップから構成され,各クラスの担任教諭が実施した。集団SSTの実施にはSCと担当教諭が話し合って作成した指導略案及びワークシートが用いられた。
③同年3月に事前調査と同一の質問紙を用いて事後調査を実施し,事前事後の結果を分析した。
結果と考察
SST尺度全24項目の合計得点と各下位尺度の得点について事前事後の得点の差の比較を行った(Table 1)。その結果,事前,事後において「SST尺度合計得点」「配慮のスキル」に有意な得点の増加がみられた。「配慮のスキル」には「友達の様子から,友達の気持ちを考える」「友達の気持ちを考えてから話す」といった項目が含まれていることから,SCと担当教員とで検討した標的スキル学習の効果が表れたと考えられる。また,事前事後の「SST尺度合計得点」の差分値が0.5SD以上上昇したスキル獲得群(n=12)においては「ルール順守スキル」(t=1.11,df=11,p<.05)「基本的な声掛けスキル」(t=3.45,df=11,p<.01)「聴くスキル」(t=2.76,df=11,p.05)「配慮のスキル」(t=5.73,df=11,p<.01)「主張スキル」(t=2.28,df=11,p<.05)「誘う・入るスキル」(t=3.75,df=11,p<.01)の有意な得点の上昇がみられた。本研究ではロールプレイのステップにおいて,教員の見立てから対象集団にふさわしいと思われる場面が設定されたことも集団SSTの効果を高めた要因になったと考えられる。
学校現場においてスクールカウンセラー(以下,SC)には児童生徒へのカウンセリングといった個別直接的な支援だけでなく,集団に対する予防・開発的な支援も求められている。しかし,心理教育プログラムが年間計画に組まれていない学校もみられる。スクールカウンセリングではそのような学校の実態に即し柔軟に効果的な教育プログラムを教員と協働して実施していくことがSCには求められる。
そこで,本研究では中学校2年担当教員から生徒のソーシャルスキルに関する相談があったことから,学校の実態を踏まえながらSCと教員とで協働して集団ソーシャルスキルトレーニング(以下,集団SST)を実施し,その効果を検討することを目的とした。
方 法
調査対象者 A県の公立中学校1校の2年生37名(男子20名女子17名)を対象に質問紙調査および集団SSTを実施した。
手続き ①2015年5月に南川(2006)の「標的スキル選定のためのソーシャルスキル自己評定尺度」
(以下SST尺度)を用いて事前調査を行った。
②事前調査から7つの下位項目の標準得点を算出して課題となるソーシャルスキルを明らかにするとともに,対象集団の実態と照らし合わせながら担当教員と標的スキルを「聴くスキル」「配慮のスキル」「主張スキル」に決定した。同年5月に「元気の出る聴き方」7月に「上手な話しかけ方」12月に「言いにくいことを相手に伝える方法」をテーマに集団SSTを実施した。小林・相川(1999)を参考に担当教員とSCが話し合いながら指導略案を作成し,生徒が実際に経験していそうな場面をロールプレイに取り入れるよう留意した。集団SSTはイントロダクション,モデリング,リハーサル,フィードバックの4つのステップから構成され,各クラスの担任教諭が実施した。集団SSTの実施にはSCと担当教諭が話し合って作成した指導略案及びワークシートが用いられた。
③同年3月に事前調査と同一の質問紙を用いて事後調査を実施し,事前事後の結果を分析した。
結果と考察
SST尺度全24項目の合計得点と各下位尺度の得点について事前事後の得点の差の比較を行った(Table 1)。その結果,事前,事後において「SST尺度合計得点」「配慮のスキル」に有意な得点の増加がみられた。「配慮のスキル」には「友達の様子から,友達の気持ちを考える」「友達の気持ちを考えてから話す」といった項目が含まれていることから,SCと担当教員とで検討した標的スキル学習の効果が表れたと考えられる。また,事前事後の「SST尺度合計得点」の差分値が0.5SD以上上昇したスキル獲得群(n=12)においては「ルール順守スキル」(t=1.11,df=11,p<.05)「基本的な声掛けスキル」(t=3.45,df=11,p<.01)「聴くスキル」(t=2.76,df=11,p.05)「配慮のスキル」(t=5.73,df=11,p<.01)「主張スキル」(t=2.28,df=11,p<.05)「誘う・入るスキル」(t=3.75,df=11,p<.01)の有意な得点の上昇がみられた。本研究ではロールプレイのステップにおいて,教員の見立てから対象集団にふさわしいと思われる場面が設定されたことも集団SSTの効果を高めた要因になったと考えられる。