The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH(65-88)

ポスター発表 PH(65-88)

Mon. Oct 10, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PH79] 学年別に見た運動部活動におけるスポーツ経験がレジリエンスに与える影響

除補千可保1, 島本好平2 (1.兵庫教育大学大学院, 2.兵庫教育大学)

Keywords:レジリエンス, 運動部活動

問題と目的
 現代社会では,さまざまな事件や事故,自然災害,社会不安や経済的な問題など,回避や解決が困難な出来事がわれわれの身の回りに数多く存在している。解決の難しい困難な問題に遭遇したとしても,そこでの経験を糧として乗り越えていく力や資質を表す概念として「レジリエンス(resilience)」がある(上野・若原,2013)。渋倉(2010)は,運動部活動やスポーツクラブという枠の中において,ネガティブな出来事として敗北と挫折や人間関係の悩みなどは比較的誰もが経験し得ると述べており,そのネガティブな経験がレジリエンスを向上させる「場」になり得る可能性を示唆している。そのため,レジリエンスの獲得につながると考えられる運動部活動は,生徒の日常生活,さらには人間形成に影響を及ぼすと考えられる(小林・西田,2010)。そこで,本研究では,学業,人間関係,進路選択,大学受験などで乗り越えなければならない壁や課題が多く存在する時期である(久保ら,2015)高校生を対象とし,その運動部活動におけるどのような経験が,高校生アスリートのレジリエンスに影響を与えるのかについて,学年による検討を行うことを目的とする。
方   法
調査時期及び調査対象
 2015年11月~12月に兵庫県立高等学校一校272名(男性165名,女性107名,有効回答率86.8%)を対象に質問紙調査を実施した。調査時期が3年生にとっては受験期であったため,1,2年生を対象に調査を行った(1年生124名,2年生112名)。
調査内容
 レジリエンスを測る尺度として,3側面(新奇性追求,感情調整,肯定的な未来志向)からなる精神的回復力尺度(小塩ら,2002)を使用した。また,運動部活動における経験を測る尺度として,5側面(自己開示,指導者からの生活指導,挑戦達成,周囲からのサポート,努力忍耐)からなる運動部活動経験評価尺度(島本・石井,2008)を使用した。
結果及び考察
 独立変数に運動部活動の経験内容,従属変数にレジリエンスを置き,重回帰分析にて検討を行った。両学年で共通する結果として,「周囲からのサポート(例:プレーや日常生活のことに関して,メンバーからアドバイスを受けた)」の経験がレジリエンスの「肯定的な未来志向(例:自分の将来に希望を持っている)」に正の影響を与えていた。学年によらず,当該経験は未来を肯定的に捉えることに繋がっていたと考えられる。
 2年生では,その他に「自己開示(例:自分の考えをメンバーや指導者に伝えた)」と「努力忍耐(例:厳しい練習も全力でやり抜いた)」による影響が見られた。前者の経験はレジリエンスの「感情調整(例:いつも冷静でいられるよう心がけている)」に正の影響を与えていた。これは,運動部活動に継続的に参加する中で,自身の思いをチームのメンバーや指導者に伝える機会が多くなることにより,感情をコントロールし,自身を落ち着かせることに繋がったと考えられる。また,後者の経験はジリエンスの「肯定的な未来志向」に正の影響を与えていた。厳しい練習の下でも,弱音を吐かず全力で取り組んできたという努力と忍耐の経験が,1年生に比べて長期に行ってきたため,2年生の段階で正の影響として表出したと推察される。