[PH81] 教師の「見取り」と児童の自己評価間のズレの検討
Keywords:学校適応, 学校楽しぃーと, 教師の見取り
問題と目的
我々は,自己評価式の児童用アンケート(「学校楽しぃーと」;鹿児島県総合教育センター,2012)で,教師による「良好である」や「良好でない」の見取りは,児童の自己評価得点と概ね一致するがそれぞればらつきがあり,観点によっては教師の見取りと大きくずれた回答をする児童の存在が明らかにした。(中島・大坪,2015)
本研究では,教師の見立てと児童の自己評価のズレの要因の一つに,「教師の児童に対する困り感への見立てが,教師による児童の状態の見取りに影響する」との仮説のもと,発達障害状態像にあると教師が見取った児童の自己評価をもとに教師による「見取り」とのズレを検討するものとする。
方 法
調査協力者:鹿児島市内の公立小学校4校の担任教師31名(小学4~6年担任教師;4年9名,5年11名,6年11名)。なお,クラスの児童数は20~30名(平均33名),担任教師の年代は,20代男性1名,女性4名計5名,30代男性7名,女性3名計10名,40代男性8名,女性3名計11名,50代男性2名,女性3名計5名であった。
調査内容:「学校楽しぃーと」(鹿児島県総合教育センター作成教育相談のためのアンケート;2012)を児童に実施した担任教師に教師用アンケートを実施した。学校楽しぃーとの6観点(「友達との関係」「教師との関係」「学習意欲」「自己肯定感」「心身の状態」「学級適応感」)について児童の回答を予想し,クラス内で「良好」と「良好でない」児童を5名ずつ担任教師に見立て,答えてもらった。また,発達障害の状態像にあると担任教師が見取っている児童をすべてあげてもらった。教師による見取りと児童による自己評価のズレについては,教師の見立ての「良好」「良好でない」と,「学校楽しぃーと」の児童の自己評価を比較した。
結 果
1.児童自己評価得点の判別と教師による見取り
6観点の全てについて児童自己評価得点16点満点のうち「学校楽しぃーと」の標準点の11点以上を「良好」,10点以下を「良好でない」として,担任教師の「良好」「良好でない」の見取りと児童の自己評価得点を比較した。
2.教師の見取り「良好」児童の自己評価のズレ
教師が発達障害状態像であると見立てた児童に特化して「良好である」と見取った児童の自己評価得点はいずれも11点以上と高かった。教師が発達障害状態像であると見立てた児童に関しては,教師の見取りと,児童の自己評価得点とのずれはほとんど見られなかった。このため,本報告では,教師による見取り「良好でない」についてのみ検討した。
3.教師が発達障害の状態像にあると見立てた児童とそれ以外の児童の自己評価得点
⑴ 「心身の状態」についての不一致度はどちらも一貫して高くない。
⑵ 5年生以上になると「自己肯定感」の不一致度も明らかに低くなる。
⑶ 低学年(4年生)においては,6つの指標間に大きな差はないが,5年生,6年生では「自己肯定感」や「心身の状態」の不一致度は低くなる傾向がある。
⑷ これらのことから担任教師は「心身の状態が低い」児童を「気になる児童」ととらえている可能性が予想され,高学年ほど顕著である。
⑸ 発達障害が懸念される児童とそうでない子どもの差異はとくに大きいとはいえない。
⑹ 4年生においては,「学習意欲」や「自己肯定感」など発達障害の傾向がない児童の方がかえって不一致度が高くなっている。
⑺ 発達障害の有無によって「学校楽しぃーと」の結果が多児と大きく異なる傾向は得られなかった。
我々は,自己評価式の児童用アンケート(「学校楽しぃーと」;鹿児島県総合教育センター,2012)で,教師による「良好である」や「良好でない」の見取りは,児童の自己評価得点と概ね一致するがそれぞればらつきがあり,観点によっては教師の見取りと大きくずれた回答をする児童の存在が明らかにした。(中島・大坪,2015)
本研究では,教師の見立てと児童の自己評価のズレの要因の一つに,「教師の児童に対する困り感への見立てが,教師による児童の状態の見取りに影響する」との仮説のもと,発達障害状態像にあると教師が見取った児童の自己評価をもとに教師による「見取り」とのズレを検討するものとする。
方 法
調査協力者:鹿児島市内の公立小学校4校の担任教師31名(小学4~6年担任教師;4年9名,5年11名,6年11名)。なお,クラスの児童数は20~30名(平均33名),担任教師の年代は,20代男性1名,女性4名計5名,30代男性7名,女性3名計10名,40代男性8名,女性3名計11名,50代男性2名,女性3名計5名であった。
調査内容:「学校楽しぃーと」(鹿児島県総合教育センター作成教育相談のためのアンケート;2012)を児童に実施した担任教師に教師用アンケートを実施した。学校楽しぃーとの6観点(「友達との関係」「教師との関係」「学習意欲」「自己肯定感」「心身の状態」「学級適応感」)について児童の回答を予想し,クラス内で「良好」と「良好でない」児童を5名ずつ担任教師に見立て,答えてもらった。また,発達障害の状態像にあると担任教師が見取っている児童をすべてあげてもらった。教師による見取りと児童による自己評価のズレについては,教師の見立ての「良好」「良好でない」と,「学校楽しぃーと」の児童の自己評価を比較した。
結 果
1.児童自己評価得点の判別と教師による見取り
6観点の全てについて児童自己評価得点16点満点のうち「学校楽しぃーと」の標準点の11点以上を「良好」,10点以下を「良好でない」として,担任教師の「良好」「良好でない」の見取りと児童の自己評価得点を比較した。
2.教師の見取り「良好」児童の自己評価のズレ
教師が発達障害状態像であると見立てた児童に特化して「良好である」と見取った児童の自己評価得点はいずれも11点以上と高かった。教師が発達障害状態像であると見立てた児童に関しては,教師の見取りと,児童の自己評価得点とのずれはほとんど見られなかった。このため,本報告では,教師による見取り「良好でない」についてのみ検討した。
3.教師が発達障害の状態像にあると見立てた児童とそれ以外の児童の自己評価得点
⑴ 「心身の状態」についての不一致度はどちらも一貫して高くない。
⑵ 5年生以上になると「自己肯定感」の不一致度も明らかに低くなる。
⑶ 低学年(4年生)においては,6つの指標間に大きな差はないが,5年生,6年生では「自己肯定感」や「心身の状態」の不一致度は低くなる傾向がある。
⑷ これらのことから担任教師は「心身の状態が低い」児童を「気になる児童」ととらえている可能性が予想され,高学年ほど顕著である。
⑸ 発達障害が懸念される児童とそうでない子どもの差異はとくに大きいとはいえない。
⑹ 4年生においては,「学習意欲」や「自己肯定感」など発達障害の傾向がない児童の方がかえって不一致度が高くなっている。
⑺ 発達障害の有無によって「学校楽しぃーと」の結果が多児と大きく異なる傾向は得られなかった。