[PH86] ストリートダンスにおけるシルエット形状の身体的特徴と印象評価の関係性の分析
Keywords:ストリートダンス, 印象評価, 重回帰分析
問題と目的
現在,学校教育では,リズム感や敏捷性といった身体能力の向上や,自己表現や共同活動によるコミュ二ケーション能力の向上を目的として,現代的なリズムのダンスの1つであるストリートダンスが新たに導入されている(文部科学省,2008)。そこで生じた問題点の1つとして,「教員の指導力不足」が挙げられるが,この主な原因はストリートダンスの質の優劣が「カッコ良さ」という主観的な基準で評価されるために,ダンス経験が不足している教員には指導が難しいという実状があるからだ,と考えられている。
そこで,近年では「カッコ良さ」を客観的に解明しようと,動作特性(e.g.,飯野・吉村・八村,2011)やリズム感(e.g.,Miura et al,2011)などの構成要素に着目した研究があるが,構成要素は複雑かつ多様なため,まだ検討されていないものも多い。
そこで,本研究では過去に扱われていないダンスの「カッコ良さ」の構成要素の1つである「シルエット」を取り上げ,ストリートダンスのジャンルの1つであるLockダンスの技を対象に,その形状の身体的特徴と「カッコ良さ」に関する評価との関係性を明らかにすることを目的とする。今回は予備調査として,ダンス経験者がシルエットの優劣を判断する際に着目する身体部位とその特徴を特定した後,実際のダンスのシルエット画像から得た身体的特徴と「カッコ良さ」の印象評価との関係性を分析した。
方 法
〈予備調査〉
参加者 Lockダンス経験者310名。
質問紙 分析対象とする技のシルエットのどの身体部位に着目しているかを多肢選択方式で回答してもらい,また,その身体的特徴を自由記述で回答してもらった。
分析 分析対象について着目すべき身体部位群をカイ二乗検定によって特定した。
〈本調査〉
参加者 シルエット画像撮影協力者110名(Lockダンス経験者62名,Lockダンス未経験者48名),シルエット画像評価者25名(全てLockダンス経験者)
手続き 分析対象とする技のシルエット画像を撮影し,Mathematica10.1を用いて,画像上の着目すべき身体部位の座標から身体的特徴(長さ比,角度)の情報を取得した。一方で,得られたシルエット画像のカッコ良さを7件法による質問紙調査で回答してもらい,印象評価を得た。
分析 身体的特徴を独立変数,「カッコ良さ」の印象評価を従属変数として重回帰分析を行った。
結果と考察
予備調査では,分析対象となったLockダンスの各技について,特定の身体部位が着目されていることが明らかになった。また本調査での重回帰分析から,分析対象の各技に関して複数の身体的特徴がカッコ良さを規定する要因となることが統計的に有意に示された(いずれもp<.01)。以上により,シルエット形状の身体的特徴と「カッコ良さ」の評価との関係性が明らかとなった。
今回の結果に基づくと,技によってはLockダンスの経験の有無に関わらず,カッコ良いとされるシルエット形状が存在し,それらには「形の対称性」や「直角」など,いくつかの特徴があることが示唆される。これらは実際のダンス指導の場面でも一助となる結果や知見だと考えられる。
今回の重回帰分析では,技によって寄与率が必ずしも高くないことから,他の要因をどのように統制していくか,今後更に検討を重ねていくことでより有用な知見が得られるであろう。
現在,学校教育では,リズム感や敏捷性といった身体能力の向上や,自己表現や共同活動によるコミュ二ケーション能力の向上を目的として,現代的なリズムのダンスの1つであるストリートダンスが新たに導入されている(文部科学省,2008)。そこで生じた問題点の1つとして,「教員の指導力不足」が挙げられるが,この主な原因はストリートダンスの質の優劣が「カッコ良さ」という主観的な基準で評価されるために,ダンス経験が不足している教員には指導が難しいという実状があるからだ,と考えられている。
そこで,近年では「カッコ良さ」を客観的に解明しようと,動作特性(e.g.,飯野・吉村・八村,2011)やリズム感(e.g.,Miura et al,2011)などの構成要素に着目した研究があるが,構成要素は複雑かつ多様なため,まだ検討されていないものも多い。
そこで,本研究では過去に扱われていないダンスの「カッコ良さ」の構成要素の1つである「シルエット」を取り上げ,ストリートダンスのジャンルの1つであるLockダンスの技を対象に,その形状の身体的特徴と「カッコ良さ」に関する評価との関係性を明らかにすることを目的とする。今回は予備調査として,ダンス経験者がシルエットの優劣を判断する際に着目する身体部位とその特徴を特定した後,実際のダンスのシルエット画像から得た身体的特徴と「カッコ良さ」の印象評価との関係性を分析した。
方 法
〈予備調査〉
参加者 Lockダンス経験者310名。
質問紙 分析対象とする技のシルエットのどの身体部位に着目しているかを多肢選択方式で回答してもらい,また,その身体的特徴を自由記述で回答してもらった。
分析 分析対象について着目すべき身体部位群をカイ二乗検定によって特定した。
〈本調査〉
参加者 シルエット画像撮影協力者110名(Lockダンス経験者62名,Lockダンス未経験者48名),シルエット画像評価者25名(全てLockダンス経験者)
手続き 分析対象とする技のシルエット画像を撮影し,Mathematica10.1を用いて,画像上の着目すべき身体部位の座標から身体的特徴(長さ比,角度)の情報を取得した。一方で,得られたシルエット画像のカッコ良さを7件法による質問紙調査で回答してもらい,印象評価を得た。
分析 身体的特徴を独立変数,「カッコ良さ」の印象評価を従属変数として重回帰分析を行った。
結果と考察
予備調査では,分析対象となったLockダンスの各技について,特定の身体部位が着目されていることが明らかになった。また本調査での重回帰分析から,分析対象の各技に関して複数の身体的特徴がカッコ良さを規定する要因となることが統計的に有意に示された(いずれもp<.01)。以上により,シルエット形状の身体的特徴と「カッコ良さ」の評価との関係性が明らかとなった。
今回の結果に基づくと,技によってはLockダンスの経験の有無に関わらず,カッコ良いとされるシルエット形状が存在し,それらには「形の対称性」や「直角」など,いくつかの特徴があることが示唆される。これらは実際のダンス指導の場面でも一助となる結果や知見だと考えられる。
今回の重回帰分析では,技によって寄与率が必ずしも高くないことから,他の要因をどのように統制していくか,今後更に検討を重ねていくことでより有用な知見が得られるであろう。