10:00 〜 12:00
[JD02] 社会化の担い手たちはいかにして子どもの社会性を育むのか
親・友人・教師・地域住民の多層的影響の実証的検討
キーワード:社会化, エージェント, 社会性
企画趣旨
子どもの社会化に影響する環境には,家庭,友人・仲間集団,地域住民,学校などがあるとされる。Bronfenbrenner (1979) の生態学的環境モデルにおいては,環境の構造として,子どもを同心円の中核に置き,内側から順にマイクロシステム,メゾシステム,エクソシステム,マクロシステムの4レベルの環境が想定されている。子どもの社会化に関する多くの研究ではマイクロシステム,メゾシステムにおける社会化の担い手の影響が主に検討され,エクソシステム,マクロシステムにおける担い手の影響は積極的な検討が不足している。さらに,社会化の担い手は互いに独立して子どもの社会化に影響するだけではなく,相互補完的もしくは相乗的に子どもの社会化に影響するといった知見も報告されている(e.g., Criss et al., 2002)。
そこで,本シンポジウムでは,比較的マクロな環境要因である地域住民も含め,社会化の多様な担い手が子どもの社会化に与える多層的な影響を検証した複数の研究を紹介する。システムを構成する社会化の担い手たちの包括的な影響を横断・縦断調査のデータを用いて分析し,すべての担い手の包括的な資源が子どもの社会性の高さと共変する可能性を検証した研究も紹介する。討論では,精神発達病理を専門とする菅原ますみ氏を迎え,子どもの社会性を高める,もしくは損なわないために有効な環境のあり方を議論する。
引用文献
Bronfenbrenner, U. (1979). The ecology of human development: Experiments by nature and design. Cambridge, MA: Harvard University Press.
Criss, M. M. et al. (2002). Family adversity, positive peer relationships, and children's externalizing behavior: A longitudinal perspective on risk and resilience. Child Development, 73, 1220-1237.
社会化の担い手が子どもの社会性に与える影響
:ペアデータ分析・マルチレベル分析による検討
浅野良輔(久留米大学)
心理学(Bronfenbrenner, 1979)や社会学(Coleman, 1988)では,養育者,教師,友人といったさまざまな社会化の担い手たちが子どもの社会性に果たす役割について検討されてきた。しかし,これまでの研究は,子どもを取り巻く環境としての社会化の担い手そのものを測定・分析の対象としておらず,こうした人々がいかにして子どもの社会性をうながすのかが十分に明らかとされてこなかった(Oishi, 2014)。この限界に対して,近年,子どもとその養育者からペアデータを収集し,養育者による実際の養育態度が子どもの社会性に与える影響に関する検討が増えてきている(Laird & De Los Reyes, 2013)。また,学級単位で行われた調査データに対してマルチレベル・モデルを用いることで,教師による学級運営や友人関係の実態をとらえようとする試みもある(Gini et al., 2015)。このような新たな方法論を駆使した研究は,社会化の担い手たちが子どもの社会性に与える影響をより深く理解することにつながるだろう。
そこで本発表では,小学校や中学校における質問紙調査に基づいた3つの研究を紹介する。第1に,養育者の養育態度が子どもの養育認知に影響することで,子どもの共感性を高めたり社会的認知バイアスを低減したりすることを報告する。第2に,教師のリーダーシップが子どもの攻撃性に影響するプロセスについて,個人―学級という階層的な視点から検証する。第3に,いじめ加害傾向に対して,個人レベルと学級レベルの友人関係の良好さによる相反する影響がみられることを報告する。これらの知見を踏まえ,社会化に関わるさまざまな担い手が子どもの社会性を育むメカニズムについて総合的に議論したい。
引用文献
Coleman, J. S. (1988). Social capital in the creation of human capital. American Journal of Sociology, 94, 95-120.
Gini, G. et al. (2015). The role of individual and collective moral disengagement in peer aggression and bystanding: A multilevel analysis. Journal of Abnormal Child Psychology, 43, 441-452.
Laird, R. D., & De Los Reyes, A. (2013). Testing informant discrepancies as predictors of early adolescent psychopathology: Why difference scores cannot tell you what you want to know and how polynomial regression may. Journal of Abnormal Child Psychology, 41, 1-14.
Oishi, S. (2014). Socioecological psychology. Annual Review of Psychology, 65, 581-609.
親・友人・教師・地域住民が育む子の自己抑制
原田知佳(名城大学)
昨今,セルフ・コントロール(Moffitt et al., 2011),やり抜く力(Duckworth, 2016),非認知能力(Heckman, 2013)といった自己抑制に関する概念に注目が集まっている。自己抑制は,学校・職場での適応的行動,食行動や体重管理,対人関係,心身の健康といった幅広い適応指標と関連があるだけでなく(de Ridder et al., 2012),幼少期の自己抑制の高さが,10年後の学力や問題行動,40年後の脳機能を予測するなど長期的な影響も報告されている(Casey et al., 2011)。自己抑制の発達には,親,友人,教師,地域住民といった社会化の担い手からの影響を受けるものの,各担い手の間の補完的・相乗的影響を検討した研究は少ない。また,欧米においては,縦断データをもとに自己抑制の発達軌跡が検討されているが,日本人を対象とした研究は未だ数少ないのが現状である。
そこで本発表では,自己抑制に及ぼす親・教師・地域住民といった社会化の担い手間の補完的・相乗的影響を検討した研究と,親・友人・教師との関わりを踏まえた中学生の自己抑制の発達軌跡を検討した研究を報告する。自己抑制のうち,感情や欲求を抑制する側面と根気強く物事に取り組む側面とで異なる結果が得られており,こうした知見を踏まえた上で,自己抑制の発達に関わる環境要因について考えていきたい。
引用文献
Casey et al. (2011). Behavioral and neural correlates of delay of gratification 40 years later. PNAS, 108, 14998-15003.
de Ridder et al. (2012). Taking stock of self-control: A meta-analysis of how trait self-control relates to a wide range of behaviors. PSPR, 16, 76-99.
Duckworth, A. (2016). GRIT: The Power of Passion and Perseverance. Simon and Schuster.
Heckman, J. J. (2013). Giving Kids a Fair Chance. Cambridge, MA: MIT Press.
Moffitt et al. (2011). A gradient of childhood self-control predicts health, wealth, and public safety. PNAS, 108, 2693-2698.
地域に根差した学校運営におけるチームワーク
吉田琢哉(岐阜聖徳学園大学)
2000年前後に地域と連携しての学校教育が重要な政策課題となって以来,学校には,保護者や地域住民をつないで子どもの教育活動の支援を得る役割が期待されている。2004年に開始したコミュニティ・スクール(CS)では,保護者や地域住民が学校運営協議会に参加し,運営方針の決定に中核的な役割を担うことが定められている。CSの制度はここ数年,放課後子ども教室や学校支援地域本部などのボランティアによる教育実践参加の流れと一体化して,指定校の拡大をみせてきた(仲田, 2015)。しかし,CSが子どもに及ぼす教育効果についての実証的な知見は乏しい。CSとして子どもの教育環境の充実に寄与するためには,教師,保護者,地域住民の間での連携,すなわちチームワークが十分に機能している必要があると考えられる。学校でのチームワーク機能を捉えることで,教員の負担増加を防ぎ,子どもの教育環境の充実に資するCSのあり方を明らかにすることができるだろう。
本発表では,地域に根ざした教育を行っている小中学校にて保護者,地域住民,教員を対象に行った面接調査の結果を中心に報告する。集団が一つとしてまとまって課題に取り組もうとする意識を表す「チーム志向性」,活動を円滑に進めていくために行われるメンバー同士のコミュニケーション行動を表す「チーム・プロセス」,リーダーの役割を担う人物が活動を円滑に進めるために行うコミュニケーション行動を表す「リーダーシップ」と,チームワークの理論モデル(Dickinson & McIntyre, 1997)に対応する3つの要素が抽出された。チームワークを促進すると考えられる学校運営上の工夫も見出された。本調査の結果を踏まえて,これからの学校のあり方についての議論を深めていきたい。
引用文献
Dickinson, T. L., & McIntyre, R. M. (1997). A conceptual framework for teamwork measurement. In M. T. Brannick, E. Salas, & C. Prince (Eds.), Team performance assessment and measurement. Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates. pp. 19-43.
仲田康一 (2015). コミュニティ・スクールのポリティクス:学校運営協議会における保護者の位置 勁草書房
社会化の担い手の包括的資源が
子どもの社会性に及ぼす因果的影響
吉澤寛之(岐阜大学)
Harris (1995) は,子どもの社会化が,親,友人,地域住民,教師といった特定の社会化の担い手との関係など,文脈固有で行われると指摘する。Grusec & Davidov (2010) は社会化の過程に着目し,その領域を「保護」「互酬性」「監督」「指導的学習」「集団参与」の5つに整理している。各社会化の担い手は,いずれかの領域限定で有効な機能を発揮すると指摘する。他方,各社会化の担い手が効果的な社会化機能を有することを資源と捉えれば,子どもを取り巻く全担い手の包括的資源を仮定することも可能である。Criss et al. (2002)は,劣悪な家庭環境の子どもでも良好な友人関係を持てば,後の問題行動を顕現化させないことを見出している。親の機能不全を,仲間集団が補完するこの知見を拡張すれば,包括的資源により適応的社会化が予測される可能性が示唆される。
本発表では,縦断調査により,社会化の担い手の包括的資源の様態が,向社会性としての社会的スキル,共感性,自己制御や,反社会性としての社会的ルールの適切性,認知的歪曲,規範的攻撃信念に及ぼす因果的影響を検討した研究を報告し,包括的資源の重要性について議論を深めたい。
引用文献
Grusec, J. E., & Davidov, M. (2010). Integrating different perspectives on socialization theory and research: A domain-specific approach. Child Development, 81, 687-709.
Harris, J. R. (1995). Where is the child's environment? A group socialization theory of development. Psychological Review, 102, 458-489.
子どもの社会化に影響する環境には,家庭,友人・仲間集団,地域住民,学校などがあるとされる。Bronfenbrenner (1979) の生態学的環境モデルにおいては,環境の構造として,子どもを同心円の中核に置き,内側から順にマイクロシステム,メゾシステム,エクソシステム,マクロシステムの4レベルの環境が想定されている。子どもの社会化に関する多くの研究ではマイクロシステム,メゾシステムにおける社会化の担い手の影響が主に検討され,エクソシステム,マクロシステムにおける担い手の影響は積極的な検討が不足している。さらに,社会化の担い手は互いに独立して子どもの社会化に影響するだけではなく,相互補完的もしくは相乗的に子どもの社会化に影響するといった知見も報告されている(e.g., Criss et al., 2002)。
そこで,本シンポジウムでは,比較的マクロな環境要因である地域住民も含め,社会化の多様な担い手が子どもの社会化に与える多層的な影響を検証した複数の研究を紹介する。システムを構成する社会化の担い手たちの包括的な影響を横断・縦断調査のデータを用いて分析し,すべての担い手の包括的な資源が子どもの社会性の高さと共変する可能性を検証した研究も紹介する。討論では,精神発達病理を専門とする菅原ますみ氏を迎え,子どもの社会性を高める,もしくは損なわないために有効な環境のあり方を議論する。
引用文献
Bronfenbrenner, U. (1979). The ecology of human development: Experiments by nature and design. Cambridge, MA: Harvard University Press.
Criss, M. M. et al. (2002). Family adversity, positive peer relationships, and children's externalizing behavior: A longitudinal perspective on risk and resilience. Child Development, 73, 1220-1237.
社会化の担い手が子どもの社会性に与える影響
:ペアデータ分析・マルチレベル分析による検討
浅野良輔(久留米大学)
心理学(Bronfenbrenner, 1979)や社会学(Coleman, 1988)では,養育者,教師,友人といったさまざまな社会化の担い手たちが子どもの社会性に果たす役割について検討されてきた。しかし,これまでの研究は,子どもを取り巻く環境としての社会化の担い手そのものを測定・分析の対象としておらず,こうした人々がいかにして子どもの社会性をうながすのかが十分に明らかとされてこなかった(Oishi, 2014)。この限界に対して,近年,子どもとその養育者からペアデータを収集し,養育者による実際の養育態度が子どもの社会性に与える影響に関する検討が増えてきている(Laird & De Los Reyes, 2013)。また,学級単位で行われた調査データに対してマルチレベル・モデルを用いることで,教師による学級運営や友人関係の実態をとらえようとする試みもある(Gini et al., 2015)。このような新たな方法論を駆使した研究は,社会化の担い手たちが子どもの社会性に与える影響をより深く理解することにつながるだろう。
そこで本発表では,小学校や中学校における質問紙調査に基づいた3つの研究を紹介する。第1に,養育者の養育態度が子どもの養育認知に影響することで,子どもの共感性を高めたり社会的認知バイアスを低減したりすることを報告する。第2に,教師のリーダーシップが子どもの攻撃性に影響するプロセスについて,個人―学級という階層的な視点から検証する。第3に,いじめ加害傾向に対して,個人レベルと学級レベルの友人関係の良好さによる相反する影響がみられることを報告する。これらの知見を踏まえ,社会化に関わるさまざまな担い手が子どもの社会性を育むメカニズムについて総合的に議論したい。
引用文献
Coleman, J. S. (1988). Social capital in the creation of human capital. American Journal of Sociology, 94, 95-120.
Gini, G. et al. (2015). The role of individual and collective moral disengagement in peer aggression and bystanding: A multilevel analysis. Journal of Abnormal Child Psychology, 43, 441-452.
Laird, R. D., & De Los Reyes, A. (2013). Testing informant discrepancies as predictors of early adolescent psychopathology: Why difference scores cannot tell you what you want to know and how polynomial regression may. Journal of Abnormal Child Psychology, 41, 1-14.
Oishi, S. (2014). Socioecological psychology. Annual Review of Psychology, 65, 581-609.
親・友人・教師・地域住民が育む子の自己抑制
原田知佳(名城大学)
昨今,セルフ・コントロール(Moffitt et al., 2011),やり抜く力(Duckworth, 2016),非認知能力(Heckman, 2013)といった自己抑制に関する概念に注目が集まっている。自己抑制は,学校・職場での適応的行動,食行動や体重管理,対人関係,心身の健康といった幅広い適応指標と関連があるだけでなく(de Ridder et al., 2012),幼少期の自己抑制の高さが,10年後の学力や問題行動,40年後の脳機能を予測するなど長期的な影響も報告されている(Casey et al., 2011)。自己抑制の発達には,親,友人,教師,地域住民といった社会化の担い手からの影響を受けるものの,各担い手の間の補完的・相乗的影響を検討した研究は少ない。また,欧米においては,縦断データをもとに自己抑制の発達軌跡が検討されているが,日本人を対象とした研究は未だ数少ないのが現状である。
そこで本発表では,自己抑制に及ぼす親・教師・地域住民といった社会化の担い手間の補完的・相乗的影響を検討した研究と,親・友人・教師との関わりを踏まえた中学生の自己抑制の発達軌跡を検討した研究を報告する。自己抑制のうち,感情や欲求を抑制する側面と根気強く物事に取り組む側面とで異なる結果が得られており,こうした知見を踏まえた上で,自己抑制の発達に関わる環境要因について考えていきたい。
引用文献
Casey et al. (2011). Behavioral and neural correlates of delay of gratification 40 years later. PNAS, 108, 14998-15003.
de Ridder et al. (2012). Taking stock of self-control: A meta-analysis of how trait self-control relates to a wide range of behaviors. PSPR, 16, 76-99.
Duckworth, A. (2016). GRIT: The Power of Passion and Perseverance. Simon and Schuster.
Heckman, J. J. (2013). Giving Kids a Fair Chance. Cambridge, MA: MIT Press.
Moffitt et al. (2011). A gradient of childhood self-control predicts health, wealth, and public safety. PNAS, 108, 2693-2698.
地域に根差した学校運営におけるチームワーク
吉田琢哉(岐阜聖徳学園大学)
2000年前後に地域と連携しての学校教育が重要な政策課題となって以来,学校には,保護者や地域住民をつないで子どもの教育活動の支援を得る役割が期待されている。2004年に開始したコミュニティ・スクール(CS)では,保護者や地域住民が学校運営協議会に参加し,運営方針の決定に中核的な役割を担うことが定められている。CSの制度はここ数年,放課後子ども教室や学校支援地域本部などのボランティアによる教育実践参加の流れと一体化して,指定校の拡大をみせてきた(仲田, 2015)。しかし,CSが子どもに及ぼす教育効果についての実証的な知見は乏しい。CSとして子どもの教育環境の充実に寄与するためには,教師,保護者,地域住民の間での連携,すなわちチームワークが十分に機能している必要があると考えられる。学校でのチームワーク機能を捉えることで,教員の負担増加を防ぎ,子どもの教育環境の充実に資するCSのあり方を明らかにすることができるだろう。
本発表では,地域に根ざした教育を行っている小中学校にて保護者,地域住民,教員を対象に行った面接調査の結果を中心に報告する。集団が一つとしてまとまって課題に取り組もうとする意識を表す「チーム志向性」,活動を円滑に進めていくために行われるメンバー同士のコミュニケーション行動を表す「チーム・プロセス」,リーダーの役割を担う人物が活動を円滑に進めるために行うコミュニケーション行動を表す「リーダーシップ」と,チームワークの理論モデル(Dickinson & McIntyre, 1997)に対応する3つの要素が抽出された。チームワークを促進すると考えられる学校運営上の工夫も見出された。本調査の結果を踏まえて,これからの学校のあり方についての議論を深めていきたい。
引用文献
Dickinson, T. L., & McIntyre, R. M. (1997). A conceptual framework for teamwork measurement. In M. T. Brannick, E. Salas, & C. Prince (Eds.), Team performance assessment and measurement. Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates. pp. 19-43.
仲田康一 (2015). コミュニティ・スクールのポリティクス:学校運営協議会における保護者の位置 勁草書房
社会化の担い手の包括的資源が
子どもの社会性に及ぼす因果的影響
吉澤寛之(岐阜大学)
Harris (1995) は,子どもの社会化が,親,友人,地域住民,教師といった特定の社会化の担い手との関係など,文脈固有で行われると指摘する。Grusec & Davidov (2010) は社会化の過程に着目し,その領域を「保護」「互酬性」「監督」「指導的学習」「集団参与」の5つに整理している。各社会化の担い手は,いずれかの領域限定で有効な機能を発揮すると指摘する。他方,各社会化の担い手が効果的な社会化機能を有することを資源と捉えれば,子どもを取り巻く全担い手の包括的資源を仮定することも可能である。Criss et al. (2002)は,劣悪な家庭環境の子どもでも良好な友人関係を持てば,後の問題行動を顕現化させないことを見出している。親の機能不全を,仲間集団が補完するこの知見を拡張すれば,包括的資源により適応的社会化が予測される可能性が示唆される。
本発表では,縦断調査により,社会化の担い手の包括的資源の様態が,向社会性としての社会的スキル,共感性,自己制御や,反社会性としての社会的ルールの適切性,認知的歪曲,規範的攻撃信念に及ぼす因果的影響を検討した研究を報告し,包括的資源の重要性について議論を深めたい。
引用文献
Grusec, J. E., & Davidov, M. (2010). Integrating different perspectives on socialization theory and research: A domain-specific approach. Child Development, 81, 687-709.
Harris, J. R. (1995). Where is the child's environment? A group socialization theory of development. Psychological Review, 102, 458-489.