10:00 〜 12:00
[PA03] 孤独感類型尺度 LSO の構成概念妥当性の検討
キーワード:孤独感, LSO, 時間的展望
落合 (1983) が開発した孤独感類型尺度LSO (Loneliness Scale of Ochiai) はふたつの次元をもつ。ひとつは LSO-U 次元であり,人間同士の理解・共感の可能性についての感じ(考え)方の次元である。もうひとつは LSO-E 次元であり,人間の個別性の自覚についての次元である。LSO の信頼性は確認されている。妥当性については LSO-U は確認されているが,LSO-Eについては確認されていない。本研究では LSO-E 尺度の妥当性について検討することを目的とした。
個別性と時間的展望 個別性という概念は実存主義の思想を背景にした概念である。実存は本質に先立つ。 ひとはそれぞれ独自なあり方をしており,あるひとがあるひとのかわりをすることはできず,自分のしてきたことについては自分が引き受け(過去受容),自分がどう生きるかについては自分で決めなければならない(目標指向性)。時間的展望研究からは,ひとがどういう心理的,社会的状況にあるかということと,そのひとが過去,現在,未来とどう向き合うかという時間的展望との間に関連のあることがわかっている。例えば,非行少年は無非行少年に比べて,過去を否定的に未来を肯定的にとらえるといった報告がある(Landau, 1975)。半投影法をもちいた研究では,自殺のリスクの高い群は低い群に比べて,未来に関する投影ができず,過去に過度に巻き込まれることがわかっている (Yufit & Benzies, 1973)。個別性に対するきづきのありなしも同様に時間的展望と関連をもつと考えることができる。
本研究の目的 本研究では,白井 (2001) の議論を参考に,個別性に気づいている者は,気づいていない者にくらべて,過去をより受容し,目標指向的であり,それゆえ,現在の充実感も高く,未来により希望をもっていると予測した。このような予測がたしからしいかを検討することによって,LSO-E の構成概念妥当性の確認を行う。
方 法
調査協力者 大学生116名を対象とした。
測定尺度
(1)Loneliness Scale of Ochiai 落合 (1983) の作成した 16 項目(5件法)からなる孤独感類型尺度を用いた。 前述したように,この尺度は,人間同士の理解・共感の可能性についてのとらえかたの尺度 (LSO-U) と,自己という存在の個別性について自覚についての尺度 (LSO-E) のふたつの下位尺度からなる。
(2)時間的展望体験尺度 白井 (1994) の作成した 18 項目(5段階評定)からなる尺度を用いた。 目標指向性因子,希望因子,充実感因子,過去受容因子の4つの下位因子をもつ。
倫理的配慮,説明と同意 調査対象者には書類を用いて口頭で研究の目的を伝え,協力するしないは自由であること,個人情報の保護,不利益の生じないなど説明した。
結果と考察
個別性に気づいているひとは,気づいていないひとにくらべて,自分のしてきたことを引きうけ(過去受容),どのように生きるべきか自分で考える(目標指向性)と予測した。それゆえ,現在の充実感や未来に対する希望も高いと予想した。
LSO-E 次元の得点の平均値 (M=1.5) を基準に,LSO-E 次元の得点の高群と低群のふたつの群をもうけた。LSO-E 次元の得点によって,時間的展望体験尺度の4つの因子,充実感,目的指向性,過去受容,希望の得点にちがいがあるか,Welch の t テストをもちいて検討した。結果,4つの因子すべて(充実感,目的指向性,過去受容,希望)の得点が,低群よりも高かった (t(110.24)=-2.77, p<.01, r=.26, t(110.24)=-2.49, p=.01, r=.23, t(109.27)=-3.65, p<.01, r=.33, t(108.57)=2.10, p=.03, r=.20)。本研究により,LSO-E の構成概念妥当性を確認することができた。
個別性と時間的展望 個別性という概念は実存主義の思想を背景にした概念である。実存は本質に先立つ。 ひとはそれぞれ独自なあり方をしており,あるひとがあるひとのかわりをすることはできず,自分のしてきたことについては自分が引き受け(過去受容),自分がどう生きるかについては自分で決めなければならない(目標指向性)。時間的展望研究からは,ひとがどういう心理的,社会的状況にあるかということと,そのひとが過去,現在,未来とどう向き合うかという時間的展望との間に関連のあることがわかっている。例えば,非行少年は無非行少年に比べて,過去を否定的に未来を肯定的にとらえるといった報告がある(Landau, 1975)。半投影法をもちいた研究では,自殺のリスクの高い群は低い群に比べて,未来に関する投影ができず,過去に過度に巻き込まれることがわかっている (Yufit & Benzies, 1973)。個別性に対するきづきのありなしも同様に時間的展望と関連をもつと考えることができる。
本研究の目的 本研究では,白井 (2001) の議論を参考に,個別性に気づいている者は,気づいていない者にくらべて,過去をより受容し,目標指向的であり,それゆえ,現在の充実感も高く,未来により希望をもっていると予測した。このような予測がたしからしいかを検討することによって,LSO-E の構成概念妥当性の確認を行う。
方 法
調査協力者 大学生116名を対象とした。
測定尺度
(1)Loneliness Scale of Ochiai 落合 (1983) の作成した 16 項目(5件法)からなる孤独感類型尺度を用いた。 前述したように,この尺度は,人間同士の理解・共感の可能性についてのとらえかたの尺度 (LSO-U) と,自己という存在の個別性について自覚についての尺度 (LSO-E) のふたつの下位尺度からなる。
(2)時間的展望体験尺度 白井 (1994) の作成した 18 項目(5段階評定)からなる尺度を用いた。 目標指向性因子,希望因子,充実感因子,過去受容因子の4つの下位因子をもつ。
倫理的配慮,説明と同意 調査対象者には書類を用いて口頭で研究の目的を伝え,協力するしないは自由であること,個人情報の保護,不利益の生じないなど説明した。
結果と考察
個別性に気づいているひとは,気づいていないひとにくらべて,自分のしてきたことを引きうけ(過去受容),どのように生きるべきか自分で考える(目標指向性)と予測した。それゆえ,現在の充実感や未来に対する希望も高いと予想した。
LSO-E 次元の得点の平均値 (M=1.5) を基準に,LSO-E 次元の得点の高群と低群のふたつの群をもうけた。LSO-E 次元の得点によって,時間的展望体験尺度の4つの因子,充実感,目的指向性,過去受容,希望の得点にちがいがあるか,Welch の t テストをもちいて検討した。結果,4つの因子すべて(充実感,目的指向性,過去受容,希望)の得点が,低群よりも高かった (t(110.24)=-2.77, p<.01, r=.26, t(110.24)=-2.49, p=.01, r=.23, t(109.27)=-3.65, p<.01, r=.33, t(108.57)=2.10, p=.03, r=.20)。本研究により,LSO-E の構成概念妥当性を確認することができた。