10:00 AM - 12:00 PM
[PA07] 自己意識と社会的スキルが自尊感情に及ぼす影響
多母集団同時分析による性差の検討
Keywords:自尊感情, 自己意識, 社会的スキル
問題と目的
加藤(2014)は,自尊感情が(1)Well-beingの中核である(2)心の健康状態を示す指標となる(3)危険行動と関連すると述べている。近年,日本の子どもの自尊感情の低下が指摘されてきており(速水,2014),対応策を考えていくことは重要である。
吉橋ら(2013)は,小学校3年生から6年生を対象に,青島(2008)の自尊感情尺度と嶋田ら(1996)の社会的スキル尺度,桜井(1992)の自己意識尺度,大竹ら(2001)のコーピング尺度を用い,それぞれ発達的変化を検討した。さらに社会的スキルが自己意識,コーピングスキルを調整変数として,自尊感情にどのように影響するかを分析した。結果,自己意識とコーピングスキルに依存せず,社会的スキルの高さが自尊感情に対して安定的に影響を及ぼすことが明らかとなった。これより,社会的スキルの向上を図る教育的介入が個人の自尊感情の維持にも有益であることが示唆された。
さらに,予防的な観点からきめ細かな対応を行うことができるように考える時,堂野(2011)は社会的スキルに性差が存在することを指摘していることから,性差を視野に入れた検討が求められる。
そこで本研究では,小学生を対象としたアンケート調査を実施し,社会的スキルと自己意識が自尊感情に及ぼす影響について性差を考慮に入れた多母集団分析を行い,支援の可能性について考察することを目的とする。
方 法
分析対象者 公立小学校2校に在籍する3~6年生のうち,データに不備があった者を除いた745名(男子353名,女子392名)を分析対象者とした。
手続き 学級ごとに各担任教諭によってアンケート調査を実施した。
調査内容 (1)自尊感情:青島(2008)で作成された「自尊感情尺度」を使用した。9項目4件法。
(2)自己意識:桜井(1992)の「自己意識尺度」のうち,吉橋ら(2013)が分析・採用したもの。「公的自己意識」6項目,「私的自己意識」7項目の2因子合計13項目4件法。
(3)社会的スキル:嶋田ら(1996)で作成された「小学生用社会的スキル尺度」を使用。「向社会的スキル」7項目,「攻撃行動」4項目,「引っ込み思案行動」4項目の3因子合計15項目4件法。
結果と考察
自己意識と社会的スキルを独立変数,自尊感情を従属変数とするモデルについて,その性差を多母集団同時分析で検討した(Figure1)。適合度は
χ2=11.353,df=4,p<.05,CFI=.990,AGFI=.947,RMSEA=.050と十分な値であった。
分析の結果,(1)男女ともに私的自己意識が向社会的行動と自尊感情に,公的自己意識が引込思案行動に,向社会的行動と攻撃行動,引込思案行動が自尊感情に影響を与えていた。(2)男子は私的自己意識が攻撃行動と引込思案行動に影響を与えていた。(3)女子は公的自己意識が攻撃行動に影響を与えていた。
以上のことから,自己意識が社会的スキルを媒介して自尊感情に影響を与えることが明らかになった。また,社会的スキルのうち特に攻撃行動については,男子は私的自己意識が,女子は公的自己意識が影響を与えており,性差に対応した支援の必要性が示された。
加藤(2014)は,自尊感情が(1)Well-beingの中核である(2)心の健康状態を示す指標となる(3)危険行動と関連すると述べている。近年,日本の子どもの自尊感情の低下が指摘されてきており(速水,2014),対応策を考えていくことは重要である。
吉橋ら(2013)は,小学校3年生から6年生を対象に,青島(2008)の自尊感情尺度と嶋田ら(1996)の社会的スキル尺度,桜井(1992)の自己意識尺度,大竹ら(2001)のコーピング尺度を用い,それぞれ発達的変化を検討した。さらに社会的スキルが自己意識,コーピングスキルを調整変数として,自尊感情にどのように影響するかを分析した。結果,自己意識とコーピングスキルに依存せず,社会的スキルの高さが自尊感情に対して安定的に影響を及ぼすことが明らかとなった。これより,社会的スキルの向上を図る教育的介入が個人の自尊感情の維持にも有益であることが示唆された。
さらに,予防的な観点からきめ細かな対応を行うことができるように考える時,堂野(2011)は社会的スキルに性差が存在することを指摘していることから,性差を視野に入れた検討が求められる。
そこで本研究では,小学生を対象としたアンケート調査を実施し,社会的スキルと自己意識が自尊感情に及ぼす影響について性差を考慮に入れた多母集団分析を行い,支援の可能性について考察することを目的とする。
方 法
分析対象者 公立小学校2校に在籍する3~6年生のうち,データに不備があった者を除いた745名(男子353名,女子392名)を分析対象者とした。
手続き 学級ごとに各担任教諭によってアンケート調査を実施した。
調査内容 (1)自尊感情:青島(2008)で作成された「自尊感情尺度」を使用した。9項目4件法。
(2)自己意識:桜井(1992)の「自己意識尺度」のうち,吉橋ら(2013)が分析・採用したもの。「公的自己意識」6項目,「私的自己意識」7項目の2因子合計13項目4件法。
(3)社会的スキル:嶋田ら(1996)で作成された「小学生用社会的スキル尺度」を使用。「向社会的スキル」7項目,「攻撃行動」4項目,「引っ込み思案行動」4項目の3因子合計15項目4件法。
結果と考察
自己意識と社会的スキルを独立変数,自尊感情を従属変数とするモデルについて,その性差を多母集団同時分析で検討した(Figure1)。適合度は
χ2=11.353,df=4,p<.05,CFI=.990,AGFI=.947,RMSEA=.050と十分な値であった。
分析の結果,(1)男女ともに私的自己意識が向社会的行動と自尊感情に,公的自己意識が引込思案行動に,向社会的行動と攻撃行動,引込思案行動が自尊感情に影響を与えていた。(2)男子は私的自己意識が攻撃行動と引込思案行動に影響を与えていた。(3)女子は公的自己意識が攻撃行動に影響を与えていた。
以上のことから,自己意識が社会的スキルを媒介して自尊感情に影響を与えることが明らかになった。また,社会的スキルのうち特に攻撃行動については,男子は私的自己意識が,女子は公的自己意識が影響を与えており,性差に対応した支援の必要性が示された。