10:00 AM - 12:00 PM
[PA27] 先行オルグと閲読後の内容討議での役割による散文理解の促進(III).
2次元での類推
Keywords:散文理解, 内容討議, 類推
目 的
散文閲読後に小集団で内容討議する際の集団内の役割(フアシリテーター,生徒,全員対等)と教示による知識利用,特に類推の変化を指摘する。閲読内容の想起では全員に下記方法(b)の手掛かりを与えて, 討議での不完全な初期理解の共有を低減した後,集団内役割と類推活用との関連を指摘する。
方 法
(a)「実業の日本」誌’92の「情報量と分析の必要」を述べた箇所を書き改め,「湾岸戦争前のトルコは産油地域の利害と無縁ゆえにイラク軍動員の噂話から隣国侵攻を予測したが,米国は衛星で軍の移動を見ても石油の価格操作での示威と軽視した。日本政府は欧米と商社の情報に頼るゆえに,通産省役人が職務上知り得た情報を頼みに株をインサイダー取引したが役所向けに予め操作された情報を過信して損をした例や, マスコミの報道は記者クラブで事前に操作されたゆえ不確実なのと同然。賢明な商社幹部はトルコ帝国官僚の例から類推してソ連崩壊を予期し,徳川家康は戦時の情報途絶に備えて常に忍者を確保し,情報分析は参謀の他に僧や女性の知恵も活用」の内容31文を保育専門学校生51名に画面で閲読させ,6-7人の小集団で10分間の内容討議を求めた。1/3は全員対等の討議群,残る各群内の2-3名はフアシリテーター,その他は生徒役である。半数の群に予め上記の「情報量と分析が必要」と述べた先行オルグを与えた。 (b)閲読後は全員に「産油国の利害に無縁ゆえ, 住民の噂話のイラク軍移動を隣国侵攻と理解出来たトルコと,この軍を衛星で見たが石油価格の操作意図での示威と思う米国の類似度を5段階評定せよ」などと上記の文に下線で示す7項の特徴を明示し, 上記の集団内の役割と教示の組み合わせ計6群別に項目間の類似性判断とその確信度評定値を得てd’に換算した。(c) 集団内対人態度では思考動機,同調, 自己に配慮, 評価不安,討議と思考の意欲, 集団内リーダー/フオロワーシップ, 課題志向性と親和性の評定値を求めた。文の逐語/推理再認検査6項,その下位技能(閲読と無関係のA:B=C:D関係の4項類推,「d, c, e, b, ?」の文字系列の推理, 「松, 杉,桧と樅→横」の過剰類推,項目の分類基準理解と閲読視点の変更程度)の各々の反応とその確信度評定値を求めた結果をd’に変換した。
結果:(a)上記の「情報の量と分析」の値が大きくて確実(例:徳川とトルコ)または小さくて不確実(日本政府とマスコミ)な均質2項のペア内の類似性判断を求めてd’値に変換した結果が図1である。
ペア毎に2要因(役割と教示)分散分析してトルコ―徳川ペアのみ教示効果(5%水準)を得た。
(ロ)上記の項目ペアの各々の類似性判断のd’得点と,閲読文と無関係の4項目類推の成績との相関を求めて2要因共分散分析の結果,無教示ではどの役割条件下でも単語ペアが類推と負の相関関係を示す一方,日本―マスコミのペアでのみ役割を規定しない対等条件とフアシリテータ条件の教示群のみが高い正相関係数値を示す役割の主効果と,徳川―トルコのペアでは生徒役の無教示と対等条件での負相関の顕在化を示す役割の主効果(共に5%)を得て,生徒役では類推による反応抑制を指摘した。,情報量と分析が一様でないペア(例:トルコ―米国)の類似性判断値と類推との相関は教示群で負,無教示で正相関を示す例が多い。(c)表1はペア内の類似性判断のd'値の大小を従属変数とした判別分析結果であり,類推による抑制も示された。
考察と結論
以上より, 情報量も分析も極端な上記の項目間の類推は常には項目間類似性判断を促進しない。特に生徒群の類推, 教示による視点変更と思考動機が不適正なら正反応抑制,類推による既知感と不適切な写像も促進する危惧も生じる。
散文閲読後に小集団で内容討議する際の集団内の役割(フアシリテーター,生徒,全員対等)と教示による知識利用,特に類推の変化を指摘する。閲読内容の想起では全員に下記方法(b)の手掛かりを与えて, 討議での不完全な初期理解の共有を低減した後,集団内役割と類推活用との関連を指摘する。
方 法
(a)「実業の日本」誌’92の「情報量と分析の必要」を述べた箇所を書き改め,「湾岸戦争前のトルコは産油地域の利害と無縁ゆえにイラク軍動員の噂話から隣国侵攻を予測したが,米国は衛星で軍の移動を見ても石油の価格操作での示威と軽視した。日本政府は欧米と商社の情報に頼るゆえに,通産省役人が職務上知り得た情報を頼みに株をインサイダー取引したが役所向けに予め操作された情報を過信して損をした例や, マスコミの報道は記者クラブで事前に操作されたゆえ不確実なのと同然。賢明な商社幹部はトルコ帝国官僚の例から類推してソ連崩壊を予期し,徳川家康は戦時の情報途絶に備えて常に忍者を確保し,情報分析は参謀の他に僧や女性の知恵も活用」の内容31文を保育専門学校生51名に画面で閲読させ,6-7人の小集団で10分間の内容討議を求めた。1/3は全員対等の討議群,残る各群内の2-3名はフアシリテーター,その他は生徒役である。半数の群に予め上記の「情報量と分析が必要」と述べた先行オルグを与えた。 (b)閲読後は全員に「産油国の利害に無縁ゆえ, 住民の噂話のイラク軍移動を隣国侵攻と理解出来たトルコと,この軍を衛星で見たが石油価格の操作意図での示威と思う米国の類似度を5段階評定せよ」などと上記の文に下線で示す7項の特徴を明示し, 上記の集団内の役割と教示の組み合わせ計6群別に項目間の類似性判断とその確信度評定値を得てd’に換算した。(c) 集団内対人態度では思考動機,同調, 自己に配慮, 評価不安,討議と思考の意欲, 集団内リーダー/フオロワーシップ, 課題志向性と親和性の評定値を求めた。文の逐語/推理再認検査6項,その下位技能(閲読と無関係のA:B=C:D関係の4項類推,「d, c, e, b, ?」の文字系列の推理, 「松, 杉,桧と樅→横」の過剰類推,項目の分類基準理解と閲読視点の変更程度)の各々の反応とその確信度評定値を求めた結果をd’に変換した。
結果:(a)上記の「情報の量と分析」の値が大きくて確実(例:徳川とトルコ)または小さくて不確実(日本政府とマスコミ)な均質2項のペア内の類似性判断を求めてd’値に変換した結果が図1である。
ペア毎に2要因(役割と教示)分散分析してトルコ―徳川ペアのみ教示効果(5%水準)を得た。
(ロ)上記の項目ペアの各々の類似性判断のd’得点と,閲読文と無関係の4項目類推の成績との相関を求めて2要因共分散分析の結果,無教示ではどの役割条件下でも単語ペアが類推と負の相関関係を示す一方,日本―マスコミのペアでのみ役割を規定しない対等条件とフアシリテータ条件の教示群のみが高い正相関係数値を示す役割の主効果と,徳川―トルコのペアでは生徒役の無教示と対等条件での負相関の顕在化を示す役割の主効果(共に5%)を得て,生徒役では類推による反応抑制を指摘した。,情報量と分析が一様でないペア(例:トルコ―米国)の類似性判断値と類推との相関は教示群で負,無教示で正相関を示す例が多い。(c)表1はペア内の類似性判断のd'値の大小を従属変数とした判別分析結果であり,類推による抑制も示された。
考察と結論
以上より, 情報量も分析も極端な上記の項目間の類推は常には項目間類似性判断を促進しない。特に生徒群の類推, 教示による視点変更と思考動機が不適正なら正反応抑制,類推による既知感と不適切な写像も促進する危惧も生じる。