10:00 AM - 12:00 PM
[PA32] メタ認知方略を組み込んだタブレット端末利用による算数問題解決(2)
Keywords:メタ認知方略, 算数問題解決, タブレット端末
問題と目的
本研究は,自己説明をタブレット端末に組み込み,あわせて算数問題の解決ステップを記述した自己説明テスト用紙に自己説明させることで,小学5年生の1学期から6年生の2学期までの 2 年弱の期間にわたり,児童の算数文章題の解決を縦断的研究によって吟味した。
方 法
(1)合計で 92 名の児童が以下のすべての課題に参加した。①2回のタブレット端末による算数問題解決,②本テスト(①の学習後),及び③自己説明テスト用紙への回答,かつ予備テストと転移テストへの参加。(2)算数問題解決のテストは,予備テスト,各学期に実施する本テスト,及び転移テストの 3 種類。各本テストは,4 題の易問題と 4 題の難問題で構成。転移テストは Mayer et al.(1991)の問題を使用。また,自己説明テスト用紙の課題は,Tajika et al.(2012)を使用。(3)タブレット端末(Surface 3)は,授業の合間や昼休みに児童が利用。児童には,タブレット端末の算数文章題を 20 分程度2回にわたって解くように教示。また,児童には,ゆっくりと考えて解答するように強調した。(4)タブレット端末の問題は Tajika et al.(2012)を基本とし,学期ごとに削除・追加した。文章題の解決ステップの質問に対して,児童は正しくペン入力した。間違った場合には,エラーのフィードバックが与えられた。ペン入力された正解は,そのまま表示された。(5)タブレット端末利用の1週間後に,40 分の本テスト。6年生の2学期のみ,転移テストも 20 分間実施。また,本テスト後に 10 分の自己説明テストによる自己説明。
結果と考察
表1には,全児童の本テスト結果等を示した。5 年生 2 学期から 6 年生にかけて得点の上昇が認められない原因の1つは,5 年生 3 学期から割合文章題を含めたことによる。
次に,5年生1学期の予備テストと本テストの結果に基づいて,児童を上位群(31 名),中位群(30 名),および下位群(31 名)の3群に分けた。その結果,上位群は一貫して各学期の本テスト及び転移テストで他の2群よりも成績がよかった。ただし,最後の転移テストでは,3群の間に本テストの成績ほど大きな開きはなかった(上位群は 15.16 点,中位群 14.13 点,下位群は 12.23 点)。
これらの結果に加えて,①自己説明テスト用紙への回答結果,並びに②タブレット端末に保存されている学習履歴を照らし合わせて吟味すると,上位群は推論を使用した自己説明が他の2群に比べて多く認められること,ならびに下位群の児童も算数問題の解決を文章で表現できること,などが示された。
引用文献
Mayer et al. (1991). J. Educ. Psychol., Vol. 83.
Tajika et al. (2012). Educ. Tech. Res., Vol. 35.
(本研究は,2016 年度科研費補助金による。)
本研究は,自己説明をタブレット端末に組み込み,あわせて算数問題の解決ステップを記述した自己説明テスト用紙に自己説明させることで,小学5年生の1学期から6年生の2学期までの 2 年弱の期間にわたり,児童の算数文章題の解決を縦断的研究によって吟味した。
方 法
(1)合計で 92 名の児童が以下のすべての課題に参加した。①2回のタブレット端末による算数問題解決,②本テスト(①の学習後),及び③自己説明テスト用紙への回答,かつ予備テストと転移テストへの参加。(2)算数問題解決のテストは,予備テスト,各学期に実施する本テスト,及び転移テストの 3 種類。各本テストは,4 題の易問題と 4 題の難問題で構成。転移テストは Mayer et al.(1991)の問題を使用。また,自己説明テスト用紙の課題は,Tajika et al.(2012)を使用。(3)タブレット端末(Surface 3)は,授業の合間や昼休みに児童が利用。児童には,タブレット端末の算数文章題を 20 分程度2回にわたって解くように教示。また,児童には,ゆっくりと考えて解答するように強調した。(4)タブレット端末の問題は Tajika et al.(2012)を基本とし,学期ごとに削除・追加した。文章題の解決ステップの質問に対して,児童は正しくペン入力した。間違った場合には,エラーのフィードバックが与えられた。ペン入力された正解は,そのまま表示された。(5)タブレット端末利用の1週間後に,40 分の本テスト。6年生の2学期のみ,転移テストも 20 分間実施。また,本テスト後に 10 分の自己説明テストによる自己説明。
結果と考察
表1には,全児童の本テスト結果等を示した。5 年生 2 学期から 6 年生にかけて得点の上昇が認められない原因の1つは,5 年生 3 学期から割合文章題を含めたことによる。
次に,5年生1学期の予備テストと本テストの結果に基づいて,児童を上位群(31 名),中位群(30 名),および下位群(31 名)の3群に分けた。その結果,上位群は一貫して各学期の本テスト及び転移テストで他の2群よりも成績がよかった。ただし,最後の転移テストでは,3群の間に本テストの成績ほど大きな開きはなかった(上位群は 15.16 点,中位群 14.13 点,下位群は 12.23 点)。
これらの結果に加えて,①自己説明テスト用紙への回答結果,並びに②タブレット端末に保存されている学習履歴を照らし合わせて吟味すると,上位群は推論を使用した自己説明が他の2群に比べて多く認められること,ならびに下位群の児童も算数問題の解決を文章で表現できること,などが示された。
引用文献
Mayer et al. (1991). J. Educ. Psychol., Vol. 83.
Tajika et al. (2012). Educ. Tech. Res., Vol. 35.
(本研究は,2016 年度科研費補助金による。)