10:00 〜 12:00
[PA36] 高校初年次生の教科理解におよぼす構造方略の影響
理解不振につながる影響過程の存在
キーワード:高校初年次生, 理解不振, 構造方略
目 的
高校初年次段階の学業達成で生じる教科理解の不振メカニズムを把握し,有効な支援方法を提供することは,中高接続の観点から重要である。Johnson & Zabrucky (2011) は,高校初年次生における構造方略 (説明文の最上位構造を同定・利用する方略) の未発達の影響を指摘した。高校では教科書が授業の中心になる点を踏まえるならば,構造方略の使用傾向は,教科書の説明文理解を介して教科理解に影響すると考えられる (National Educational Goals Panel, 1999)。本研究では,このような教科理解の不振モデルに,高校生の学習適応性を組み込み,構造方略の未発達が教科理解を阻害するプロセスを検討した。
方 法
実施日:中間試験前の2016年5月18日。
参加者:SSHに指定されている公立高校1年生360人 (男168人,女192人)。
手続き:以下を実施した。
構造方略の使用傾向:「構造着目」方略の使用傾向尺度 (犬塚, 2002) を7段階で評定させた。項目は,「言葉と言葉の対応関係を考えて読む」,「接続詞に注目しながら読む」,「意味段落に分けて考える」,「次の内容を予想して読む」,「文章の組み立て(構造)を考えながら読む」,「題名を自分で考えてみる」,「文脈から全体像を予測する」であった。
説明文理解度:高校教科書の説明文 (山本・織田, 2015) の理解度を7段階で評定させた。
学習適応度:教研式「学習適応性検査」(AAI) を実施した。「学習態度」,「学習技術」,「学習環境」,「学習活動を支える三つの力」の4因子を測定する76項目を4段階で評定させた。
教科理解:各教科 (英語,数学,国語,理科,社会) の理解度を7段階で評定させた。
結果と考察
1) 構造方略が教科理解に及ぼす影響
5教科の理解度の平均値を教科理解度として,高校初年次生における構造方略の使用傾向が説明文理解と学習適応性を介して教科理解に影響するプロセスをモデル化した。AMOS 22.0を使用してパス解析を実施し,母数の推定には最尤法を用いた。適合度指標は,χ2 = 3.6, df = 1, p = .06, GFI = .993, AGFI = .935, CFI = .986, RMSEA = .086 であり,モデルは適合していると判断した。
2) 影響過程を媒介する学習適応性の因子
学習適応性は,「学習態度」,「学習技術」,「学習環境」,「学習活動を支える三つの力」で構成される。この中で,構造方略および説明文理解の影響を受ける因子を探ったところ,「学習技能」が有意に影響を受け (ps < .05),理解不振のプロセスを媒介する変数になることが示唆された。
次に,「学習技能」を構成する「本の読み方・ノートの取り方」,「覚え方・考え方」,「テストの受け方」の因子でも同様の検討を行い,「覚え方・考え方」が媒介変数となることが示された (ps < .01)。
3) 構造方略が各教科の理解に及ぼす影響過程
高校初年次生における構造方略の使用傾向が,説明文理解および「覚え方・考え方」因子を介して,5教科の理解に及ぼす影響をモデル化した (Figure 1)。適合度指標は,χ2 = 4.1, df = 6, p = .67, GFI = .997, AGFI = .981, CFI = 1.000, RMSEA = .000 であり,モデルは十分に適合していると判断した。Figure 1から,構造方略の影響のプロセスが教科毎に異なり,構造方略の未発達が理解不振を規定する側面が明らかになった。
4) 総括
高校初年次生における構造方略の使用傾向から説明文理解を媒介して各教科の理解不振につながるプロセスと,構造方略の使用傾向から「覚え方・考え方」を媒介して理解不振につながるプロセスの存在が示された。前者は国語や社会,後者は数学が該当し,英語と理科は複合的であった。
高校初年次段階の学業達成で生じる教科理解の不振メカニズムを把握し,有効な支援方法を提供することは,中高接続の観点から重要である。Johnson & Zabrucky (2011) は,高校初年次生における構造方略 (説明文の最上位構造を同定・利用する方略) の未発達の影響を指摘した。高校では教科書が授業の中心になる点を踏まえるならば,構造方略の使用傾向は,教科書の説明文理解を介して教科理解に影響すると考えられる (National Educational Goals Panel, 1999)。本研究では,このような教科理解の不振モデルに,高校生の学習適応性を組み込み,構造方略の未発達が教科理解を阻害するプロセスを検討した。
方 法
実施日:中間試験前の2016年5月18日。
参加者:SSHに指定されている公立高校1年生360人 (男168人,女192人)。
手続き:以下を実施した。
構造方略の使用傾向:「構造着目」方略の使用傾向尺度 (犬塚, 2002) を7段階で評定させた。項目は,「言葉と言葉の対応関係を考えて読む」,「接続詞に注目しながら読む」,「意味段落に分けて考える」,「次の内容を予想して読む」,「文章の組み立て(構造)を考えながら読む」,「題名を自分で考えてみる」,「文脈から全体像を予測する」であった。
説明文理解度:高校教科書の説明文 (山本・織田, 2015) の理解度を7段階で評定させた。
学習適応度:教研式「学習適応性検査」(AAI) を実施した。「学習態度」,「学習技術」,「学習環境」,「学習活動を支える三つの力」の4因子を測定する76項目を4段階で評定させた。
教科理解:各教科 (英語,数学,国語,理科,社会) の理解度を7段階で評定させた。
結果と考察
1) 構造方略が教科理解に及ぼす影響
5教科の理解度の平均値を教科理解度として,高校初年次生における構造方略の使用傾向が説明文理解と学習適応性を介して教科理解に影響するプロセスをモデル化した。AMOS 22.0を使用してパス解析を実施し,母数の推定には最尤法を用いた。適合度指標は,χ2 = 3.6, df = 1, p = .06, GFI = .993, AGFI = .935, CFI = .986, RMSEA = .086 であり,モデルは適合していると判断した。
2) 影響過程を媒介する学習適応性の因子
学習適応性は,「学習態度」,「学習技術」,「学習環境」,「学習活動を支える三つの力」で構成される。この中で,構造方略および説明文理解の影響を受ける因子を探ったところ,「学習技能」が有意に影響を受け (ps < .05),理解不振のプロセスを媒介する変数になることが示唆された。
次に,「学習技能」を構成する「本の読み方・ノートの取り方」,「覚え方・考え方」,「テストの受け方」の因子でも同様の検討を行い,「覚え方・考え方」が媒介変数となることが示された (ps < .01)。
3) 構造方略が各教科の理解に及ぼす影響過程
高校初年次生における構造方略の使用傾向が,説明文理解および「覚え方・考え方」因子を介して,5教科の理解に及ぼす影響をモデル化した (Figure 1)。適合度指標は,χ2 = 4.1, df = 6, p = .67, GFI = .997, AGFI = .981, CFI = 1.000, RMSEA = .000 であり,モデルは十分に適合していると判断した。Figure 1から,構造方略の影響のプロセスが教科毎に異なり,構造方略の未発達が理解不振を規定する側面が明らかになった。
4) 総括
高校初年次生における構造方略の使用傾向から説明文理解を媒介して各教科の理解不振につながるプロセスと,構造方略の使用傾向から「覚え方・考え方」を媒介して理解不振につながるプロセスの存在が示された。前者は国語や社会,後者は数学が該当し,英語と理科は複合的であった。