日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PA(01-83)

ポスター発表 PA(01-83)

2017年10月7日(土) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PA37] ポストモダンにおける大学生の成長モデルと時間的展望獲得に関する探索的研究(3)

心理学に対するイメージの計量テキスト分析

川上正浩1, 坂田浩之#2, 佐久田祐子#3, 奥田亮#4 (1.大阪樟蔭女子大学, 2.大阪樟蔭女子大学, 3.大阪樟蔭女子大学, 4.大阪樟蔭女子大学)

キーワード:心理学教育, イメージ変容, 学年進行

問題と目的
 大人社会の権威が失墜して,「大きな物語」を喪失し,価値観が多様化したポストモダンを生きる現在の大学生にとって,成長とは実際どのようなものであるのだろうか。現在の大学生における成長の実際を正しく把握し,現在の大学生に「大人になる」「成長する」イメージを提供することは,大学教育に携わる者にはもちろん,一般社会にとっても有益なことである。本研究は,現在の大学生が4年間の学生生活の中で実際どのように成長するのか,心理学を専攻する大学生における大学入学時と卒業前の心理学に対するイメージの差異を検討することを通じて,明らかにすることを目的とする。
方   法
調査対象者 心理学を専攻する大学生女子28名。
実施時期 1年次入学時(2011年4月),および4年次卒業前(2015年2月)。
調査内容 大学の新入生を対象に,大学生活の実際と現在の思いに関する一問一答形式のインタビューを行い,その様子をデジタルビデオで記録した。その後,同一の調査対象者に対し,半年程度過ごすごとに同様の質問項目に対するインタビューを繰り返し,卒業時まで実施した。本研究ではこれらのインタビューのうち,1年次(2011年4月)と4年次(2015年2月)における,「心理学とはどのような学問だと思いますか」という問いに対する回答をテキストに書き起こした。
分析方法 テキストデータの分析には,KH Coderを用い,文章において同時に使用されることが多い語同士をエッジで結び,図示する計量テキスト分析手法(樋口,2014)である共起ネットワーク分析を行った。
結果と考察
 1年次と4年次の回答における特徴語を抽出した上で,共起ネットワーク分析を行った(図1,図2)。1年次のコメント(図1)においては,「ストレス」「カウンセリング」「相談」といった臨床心理学的なキーワードは見られるものの,「人」「心」「人間」といった漠然としたイメージが強い。一方,4年次のコメント(図2)においては,「広い」と「分野」の共起など心理学の幅の広さに対する意識が認められる。また,「専門」と「日常」の共起や「結構」と「必要」の共起など,心理学が日常生活の中で活かされることや,心理学の必要性に対する意識が認められる。これらのことから,自分の学びが生活に幅広く活かせるという感覚を持つことが,現在の大学生にとっての成長であることが示唆される。