日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PA(01-83)

ポスター発表 PA(01-83)

2017年10月7日(土) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PA52] デートDV加害経験と愛着スタイル及び感情価との関連

松野真 (昭和学院短期大学)

キーワード:デートDV, 加害者

目   的
 これまで親密な関係にあるパートナー間の暴力を引き起こす要因は,ジェンダーを中心に説明されてきたが,ジェンダーの視点だけからでは十分に説明できない(中村2011)。また,Dutton(2007・2011)は,親密な関係にあるパートナー間の虐待を説明できる変数として,愛着の形成過程を取り上げ,愛着スタイルが加害行為に与える影響を指摘した。
 本研究では,ジェンダー以外の要因として,パートナーに対するダメージ認知,成人愛着スタイル,デートDVに関連深い諸対象に対する感情価を取り上げ,デートDVの身体的暴力,精神的暴力,性的暴力との関連について男女別に検討した。
方   法
調査対象者:関東・北陸地方の大学生を対象に質問紙形式で実施した。「付き合い経験あり」と回答した457名(男性217名,女性240名)を分析対象とした。平均年齢は,19.31歳,SD=1.58であった。
調査手続き及び実施時期:2013年7月から9月にかけて無記名で実施し,回答は拒否できること,回答により不利な扱いは受けないことを説明した。
加害経験頻度,ダメージ認知の評価:デートDVとなり得る8行為を選出し,加害経験頻度について5段階で評定を求めた。8行為の加害経験頻度を加算した結果を「全暴力得点」とした。また,選出した8行為を,行為が示す一般的な意味を基に,身体的暴力2行為,精神的暴力4行為,性的暴力2行為に分類し,各暴力の加害経験頻度得点を加算した結果を「身体的暴力得点」「精神的暴力得点」「性的暴力得点」とした。さらに,パートナーへのダメージ認知として,「どれほどパートナーを傷つけるか」について5段階で評定を求め,8行為のダメージ認知評価を加算した結果を「ダメージ認知得点」とした。
成人愛着スタイルの評価:中尾・加藤(2004)が作成した成人愛着スタイル尺度(ECR)日本語版を用いた。「親密性の回避因子」と「見捨てられ不安因子」から,それぞれ因子負荷量が高い2項目を選出した。
デートDV感情イメージ調査票による評価:デートDVに関連する諸対象に対してポジティブなイメージを持っているか,ネガティブなイメージを持っているかについて,8感情語と10対象語の対を提示し,感情語と対象語が「どの程度ぴったりするか」について5段階で評価を求め,感情価を算出した。因子分析(主因子法,バリマックス回転)の結果,「親密さ因子」と「他者コントロール因子」の2因子を得た。各因子を構成する対象語の感情価を加算した結果をそれぞれ「「親密さ因子得点」,「他者コントロール因子得点」とした。
結果と考察
 全暴力得点の標準得点を求め,0点以上の者を「加害経験頻度高群」(男性99名,女性70名,計169名)として分析した。
 ダメージ認知,親密性の回避,見捨てられ不安,親密さ因子,他者コントロール因子と関連がある暴力を検討するため,ピアソンの積率相関係数を男女別に算出した。パートナーへのダメージ認知が低いほど,男性では身体的暴力及び精神的暴力が高く,女性では身体的暴力及び全暴力が高くなることが特徴的であった。男性では,見捨てられ不安が高いほど身体的暴力が低くなるが,逆に女性では,精神的暴力及び全暴力が高くなることが特徴的であった。また,男性では,デートや恋愛といった親密さを示す対象語にネガティブなイメージを持つほど身体的暴力及び全暴力が高いなることが特徴的であった。さらに男性では,束縛や服従といったパートナーへのコントロールを意味する対象語にポジティブなイメージを持つほど,身体的暴力,性的暴力及び全暴力が高くなることが特徴的であった。
 加害経験頻度高群では,ダメージ認知,成人愛着スタイル,デートDVに関連する諸対象の感情価と加害経験頻度は,暴力の種類ごとに関連がある可能性が示唆されるとともに,その関連性には性差があることが示された。