The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PA(01-83)

ポスター発表 PA(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PA73] 職場体験と保育系短大生

体験は進路選択に影響するが,現実は厳しかった

大久保義美 (名古屋芸術大学)

Keywords:職場体験, 保育士志望, 短大生

はじめに
平成14年ゆとり教育の始まりとともに,中学生の「職場体験」や高校生の「インターンシップ」が実施されるようになった。現在の実施率は「職場体験」が公立中学校において98.3%,「インターンシップ」は公立高校の81.8%に及ぶ(国立教育政策研究所生徒指導研究センター,2016)。中高生の感想を聞くと「楽しかった」という者が多く,中でも保育系(ここでは保育士と幼稚園教諭を合わせて保育系と呼ぶことにする)は男女を問わず人気があり,希望しても抽選に漏れて行けなかったと嘆く中高生もいる。ここでは,これらの「職業体験」や「インターンシップ」が保育系短大生にどのような影響を与えるのか考えてみたい。
目   的
第1に,保育系短大に進学した学生は,中学校時代に保育系の職場体験(今回の調査対象者ではインターシップ経験者が少なかったので職場経験のみを対象とした)をしたのかどうか,またその体験が進路選択にどのように影響したのかを考える。第2に,保育系職場体験によって「保育士さん」や「幼稚園の先生」に憧れて保育系に進学したとしたら,その夢は実現したのかを見ていく。
方   法
(1)調査対象者:A県B市C女子短大1年生保育士コース全学生26名       
(2)調査方法と調査内容:教員免許必修科目「教育心理学」の授業後に,質問紙調査を実施した。調査内容は,①小・中・高校時代に「おとなになったら就きたいたいと思っていた職業」(最大3つまで)②中学校時代の職場体験について③保育系に進学するという決断に影響のあった人(最大3名まで)。これらに,④卒業時の保育士資格と幼稚園教諭免許取得状態⑤卒業後の進路,の2データを加えて分析した。

結   果
(1) 職場体験で保育体験をした学生の比率:65.4%
(26名中17名)であった。体験しなかった学生のうち2名は「希望したが抽選やじゃんけんで漏れた」という返答であり,後の2名は高校生時代には他の職業を目指しており,保育体験に関心がなかった。
(2) 職場体験は保育系進学のきっかけになった
か:保育体験が保育系進学のきっかけとなった学生は,94,1%(17名中16名)で,大半が進路を決めるきっかけとなっていた。残り1名は他の職業を目指して専門学校進学を希望していたが,母親の反対に遭い,それ以外なら何でも同じという気持ちで短大に進学したということであったが,結果として保育体験が進学先を決めることになった。
(3) 保育系進学の決定に影響のあった人物(複数
回答可):第1位が高校教諭(61.9%),第2位が母親(52.4%),第3位が父親(23.8%)であった。
(4)保育士資格・幼稚園教諭免許の取得状況および保育士・幼稚園教諭就職者:表1.の通りであった。
考   察
(1) 保育系職場体験は中学生の進路選択に強い影
響を与えていた。「保育士さん」や「幼稚園の先生」の生の姿を見て「自分もなりたい」と考えるようになり,高校教諭や母親からも賛同を受けて保育系短大に進学したのだということが分かった。
(2) しかしその中で,短大卒業後に晴れて憧れの
「保育士さん」や「幼稚園の先生」になれたのは,10人に6人強という厳しい結果であった。残りの学生は自分の資質が不足していることを悟って進路変更をしたり,必修単位不足で留年したり,というのが現実であった。しかしこの結果を保育職場体験と関連付けて見てみると,表1.の通り保育の職場体験をした学生の方が非経験者よりも保育係の資格・免許取得率が高く,また保育系の就職率も高い。言い換えると,保育職場体験者の方が「夢の実現率」が高かったのである。職場体験にはどんな意味があるのか,さらに深めたい。