10:00 〜 12:00
[PA78] ユニバーサル学校予防教育「自己信頼心 (自信) の育成」プログラムの効果
児童用紙筆版セルフ・エスティーム潜在連合テストを用いた自律的セルフ・エスティームへの教育効果の検討
キーワード:ユニバーサル予防教育, セルフ・エスティーム, 教育効果評価
目 的
近年,セルフ・エスティーム (self-esteem) の効用に対して賛否両論の主張がみられるなか,概念と測定法の両観点から適応的側面と不適応的側面を弁別する研究が展開されている。山崎ら(2017)は,前者を自律的セルフ・エスティーム,後者を他律的セルフ・エスティームと概念提起し,自律的セルフ・エスティームを育成するための教育プログラムである自己信頼心(自信)の育成プログラムの開発を進めている。また,自律的セルフ・エスティームを測定するためには,非意識の測定法が必要であることを論じている。こうした研究の展開を受け,横嶋ら (2017) は潜在連合テストを用いた自律的セルフ・エスティームの測定法を開発している。そこで,本研究では,自律的セルフ・エスティームを育成する教育方法としての自己信頼心 (自信) の育成プログラムの効果を確認するために,児童用紙筆版セルフ・エスティーム潜在連合テスト (SE-IAT-C) を用いて教育効果の検討を行った。加えて,児童用のRosenbergセルフ・エスティーム尺度 (RSES-C) を用いた補助的な教育効果の検討も行っている。
方 法
教育対象 小学校 (2校) の4年生195名 (男児110名,女児95名) を対象に実施した。欠損値を除外し,有効回答は167名 (男児93名,女児74名) であった。
授業および教育評価の時期 2016年9月に実施された。授業は全4回 (45分/回) で行われた。教育評価は授業の前後1週間以内に実施された。
紙筆版セルフ・エスティーム潜在連合テスト 横嶋ら (2017) によって,自律的セルフ・エスティームの測定法として信頼性と妥当性が確認されているSE-IAT-Cを用いた。
セルフ・エスティーム尺度 横嶋ら (2016) によって信頼性および妥当性が確認されているRSES-Cを使用した。全10項目,4件法で回答を求めた。
なお,本調査では,他の研究で使用するために,児童用インプリシット正負感情尺度と向社会性ビニエット尺度を同時に測定した。
結果と考察
教育効果を検討するため,時期 (実施前後) と性 (男女) の2要因の分散分析を行った。結果,SE-IAT-Cは時期の主効果が有意となり (F(1/165) = 7.52, p < .01), 教育前後で得点が上昇していた(図1)。一方,RSES-Cに有意な変化はみられなかった (図2) 。SE-IAT-Cの上昇から,教育プログラムによる自律的セルフ・エスティームへの有用性が確認された。Rosenbergのセルフ・エスティーム尺度は適応的側面と不適応的側面を混在して測定していると指摘されていることから (伊藤・川崎・小玉, 2011) ,プログラムによって適応的側面が増加し,不適応的側面が減少したことによって統計的に無変化になったと推測される。
近年,セルフ・エスティーム (self-esteem) の効用に対して賛否両論の主張がみられるなか,概念と測定法の両観点から適応的側面と不適応的側面を弁別する研究が展開されている。山崎ら(2017)は,前者を自律的セルフ・エスティーム,後者を他律的セルフ・エスティームと概念提起し,自律的セルフ・エスティームを育成するための教育プログラムである自己信頼心(自信)の育成プログラムの開発を進めている。また,自律的セルフ・エスティームを測定するためには,非意識の測定法が必要であることを論じている。こうした研究の展開を受け,横嶋ら (2017) は潜在連合テストを用いた自律的セルフ・エスティームの測定法を開発している。そこで,本研究では,自律的セルフ・エスティームを育成する教育方法としての自己信頼心 (自信) の育成プログラムの効果を確認するために,児童用紙筆版セルフ・エスティーム潜在連合テスト (SE-IAT-C) を用いて教育効果の検討を行った。加えて,児童用のRosenbergセルフ・エスティーム尺度 (RSES-C) を用いた補助的な教育効果の検討も行っている。
方 法
教育対象 小学校 (2校) の4年生195名 (男児110名,女児95名) を対象に実施した。欠損値を除外し,有効回答は167名 (男児93名,女児74名) であった。
授業および教育評価の時期 2016年9月に実施された。授業は全4回 (45分/回) で行われた。教育評価は授業の前後1週間以内に実施された。
紙筆版セルフ・エスティーム潜在連合テスト 横嶋ら (2017) によって,自律的セルフ・エスティームの測定法として信頼性と妥当性が確認されているSE-IAT-Cを用いた。
セルフ・エスティーム尺度 横嶋ら (2016) によって信頼性および妥当性が確認されているRSES-Cを使用した。全10項目,4件法で回答を求めた。
なお,本調査では,他の研究で使用するために,児童用インプリシット正負感情尺度と向社会性ビニエット尺度を同時に測定した。
結果と考察
教育効果を検討するため,時期 (実施前後) と性 (男女) の2要因の分散分析を行った。結果,SE-IAT-Cは時期の主効果が有意となり (F(1/165) = 7.52, p < .01), 教育前後で得点が上昇していた(図1)。一方,RSES-Cに有意な変化はみられなかった (図2) 。SE-IAT-Cの上昇から,教育プログラムによる自律的セルフ・エスティームへの有用性が確認された。Rosenbergのセルフ・エスティーム尺度は適応的側面と不適応的側面を混在して測定していると指摘されていることから (伊藤・川崎・小玉, 2011) ,プログラムによって適応的側面が増加し,不適応的側面が減少したことによって統計的に無変化になったと推測される。